京都からの来訪者2
五条は伊地知を脅して夜蛾の予定を偽ったあと高専の廊下をある一室に向かって歩いていた
ガラリと引き戸を開けて中に入ると一人の妙齢のご老人がソファに腰掛けており、引いた扉の近くには水色の髪を持った一人の女学生がいた
「夜蛾学長はしばらく来ないよ。嘘の予定を伝えてあるからね」
「老い先短い年寄りの時間は高くつくぞ」
ソファに腰掛けていたのは呪術高専 京都校の学長である楽巌寺嘉伸
五条は楽巌寺に対面するようにソファに腰を下ろすと足を組みニッと口角をあげた
「その節はどーも」
「はて、その節とは」
「とぼけるなよジジイ、虎杖悠仁のことだ。保守派筆頭のアンタも一枚噛んでんだろ」
五条はソファに腰掛けた楽巌寺にグッと顔を近づけて虎杖のことを楽巌寺に問いかけるも楽巌寺はため息を漏らして五条の質問をあっさりとかわす
「やれやれ、最近の若者は敬語もろくに使えんのか」
「ハナから敬う気がねーんだよ。最近の老人は主語がデカくて参るよ。ホント」
「ちょっと、これは問題行動ですよ」
楽巌寺と五条の一触即発の雰囲気に扉の横に立っていた女学生が口を挟んだ
彼女の名前は三輪霞
呪術高専 京都校の2年生である
「然るべき所に報告させてもらいますからね」
現代の最強呪術師である五条悟にも臆せず言い放つ三輪だったがそんな彼女の頭の中といえば…
…ヤッベー!生五条悟!生五条悟だ!!
と、まあこんな感じでお祭り騒ぎであった
「ご自由に。こっちも長話する気はないよ」
ヒラヒラと手を振りながら三輪に五条はそんなことどうでもいいと言わんばかりの態度で言葉を返すと顔の前で手を組んだ
「昨晩、未登録の特級呪霊2体に襲われた」
「!」
五条の言葉に楽巌寺の眉がピクリと反応を示す
「それは…災難じゃったの」
「勘違いすんなよ。僕にとっては町でアンケート取られた位のハプニングさ。襲ってきた呪霊は意思疎通が図れたし同等級の仲間もまだいるだろう。敵さんだけじゃない。秤に乙骨、そっちの東堂と生徒のレベルも近年急激に上がってる。傑が起こしたボイコットも現れた宿儺の器もそうだ」
「…何が言いたい」
要領を得ない五条に痺れを切らした楽巌寺は低い声で言い放つ
「ククッ、分かんないかなあ。アンタらがしょーもない地位や伝統のために塞き止めていた力の波がもうどうしようもなく大きくなって押し寄せてんだよ。これからの世代はね【特級】なんて物差しじゃ測れない。牙を向くのが僕だけだと思ってるなら痛い目見るよ!おじいちゃん!」
「少しお喋りが過ぎるの」
「おー怖っ!言いたいこと言ったから僕はこれで退散しよーっと」
ソファから立ち上がった五条に向けて楽巌寺はポソっと何かを呟いた。その言葉を拾い上げた五条はソファに座ったままの楽巌寺に覆いかぶさるようにして耳元に口を寄せて言い返えす
「すみれに手を出したら本気でブッ殺すからね、おじいちゃん」
そうして楽巌寺の耳元に口を寄せるために曲げていた腰を戻して五条は颯爽と楽巌寺と三輪のいる部屋から出ていった
「あ、夜蛾学長ならあと2時間もすれば来るよ〜。じゃあねぇ〜」
爆弾を1つ投下して…
楽巌寺に茶々を入れて部屋を後にした五条は此方に駆け寄ってくる小さな呪力を感じ取っていた
「すみれ?呪力が揺れてるね…泣いてる?」
五条の独り言の通り、小さな白い塊は五条の姿を見つけるとテテテっと駆け寄ってきた
「さとるっ」
「あ〜あ、どうしたの?すみれ。目が真っ赤じゃん」
ぎゅうっと五条のズボンにしがみつくすみれの目線に合わせるように五条は膝を折った
「さとる、さとる」
「はいはい、聞いてるよ」
「めぐみがね、ケガしたしたの。おっきい人がね、めぐみのことぶんってやった」
「大丈夫、大丈夫。此処には硝子がいるでしょ。それにすみれも交流会は硝子のお手伝いするんでしょ?泣いてていいの?」
グズグズと鼻を鳴らして泣くすみれの頭を五条は優しく撫でてすみれを抱き上げた
「…しょーこのお手伝いする」
「じゃあ泣かない。できる?」
「…できる」
グッとすみれは小さく握った拳で自身の涙を拭う
「えらい、えらい。あ!そうだ、すみれ」
「なぁに?」
五条に名前を呼ばれたすみれは首をくてんと傾げた
「たかたんビーム☆僕にもやって!!」
「んぇ?」
「たかたんビーム☆だよ、たかたんビーム☆悠仁にやってあげたでしょ!アレ、僕にもやって」
「やぁだ」
「なんで。傑と硝子に自慢するんだから」
ふんっと顔を背けたすみれの頬をムニッと片手で挟んだ五条にすみれの腕の中にいた呪骸が口を開いた
「なんだ、呪術師。貴様もあのデカい女が好きなのか」
五条とすみれの会話に割り込む宿儺の声に、五条は驚くこともなく平然としていた
「は?何を言ってるの。好きでも嫌いでもないよ。僕、その人のこと知らないし」
「では何故、小娘がその女の仕草をすることを求める」
「そんなの決まってるでしょ。すみれが可愛いからだよ!」
そう言うと五条は抱き上げていたすみれをその場に下ろすとどこからともなく一眼レフを取り出すとパシャリとすみれを撮った
「ほら、見てみなよ宿儺。こんなに可愛い天使が今目の前にいるんだよ。撮らないわけにはいかないだろう」
「この男が最強の呪術師…?信じられんな」
「正真正銘、最強の呪術師だから。僕」
「あのーー!すいませーん!!」
五条が宿儺にカメラで撮ったすみれの写真を次々と見せていると五条たちの背後から水色の髪をした一人の女子生徒が駆け寄って来るのが見えた
その姿を視認した宿儺はすみれの腕の中にぴょんっと飛び込むとクタリと力を抜いてぬいぐるみのフリをした
「すくな?」
「少し黙っていろ、小娘」
「ん」
「あれ?キミ…楽巌寺学長と一緒にいた」
「三輪です!京都校2年の三輪霞といいます!!」
「へぇ」
「…みわ、かすみ?」
「はぁ!!美少女っ!!!」
三輪は五条の後ろからひょこっと顔を出したすみれを見て顔を抑えてしゃがみこんだ
「さとる…」
「で?京都の学生さんが僕に何か用?」
「い…」
「い?」
「一緒に写真取ってくださいっ!」
三輪はスクっと勢いよく立ち上がると自身のスマホを五条に差し出した
「写真?いーよ」
「ありがとうございますっ!!ヨッシャー!生五条悟と写真っ!」
「で、そちらの美少女は?」
「ん?僕の娘。すみれっていうの」
「すみれちゃん!名前も可愛いっ!」
「さとる」
「まさかのお父さんを名前呼びっ」
「ほら、すみれも挨拶して」
「…すみれ。かすみちゃん?」
「( ゚∀゚)・∵. グハッ!!」
「(面白い子だなぁ…)」
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