早朝の出来事
明日は久しぶりの休みだ。
普段俺は朝、時間に余裕をもって起きる。一緒に寝ている娘を起こす前に自身の身支度をある程度終わらせてから娘を起こす。
まだ幼い娘はすんなり起きる時の方が多いのだが、起きない時はとことん起きないし、愚図る。
ここ最近は色々なものに興味を惹かれてしまいなかなか夜、寝付かない。そうなると睡眠時間が不足しているのか朝、起こすと機嫌が悪い。
そんな娘を抱きあげて、ぱっぱと準備をするも予定していた時間ギリギリに慌ただしく家を出る。
はーっとため息を一つ漏らして時間を気にすることなくゆっくりとした朝が迎えられるのは本当に久しぶりだなと思いながら、目覚まし時計のアラームを切りベッドに入り眠りについた。
カーテンの隙間からわずかに差し込む光に眩しさを感じて脳が覚醒を始める。もう少しだけ、もう少しだけ寝かせてくれ…久しぶりの休みなんだと思いながら光を遮るように自身に掛けられているタオルケットを被り直した時、耳がある音を捉えた。
タタタタタと重さを感じさせない子供が走り回っている様なそんな音。その音はだんだんと近づいてきて俺が寝転がっている部屋の前でピタリと止まった。
音の持ち主は部屋の扉をコツコツと叩く。これでも気配にはなにかと敏い方なんだが、隣で寝ているはずの娘が先に起きていたことに気づかなかった。カーテンの隙間から差す光に眩しさを感じ、こちらに近づいてくる足音で目は完全に覚めた。
だがあえて起きることはせずに、その小さなノック音に気付かないフリをした。
扉をノックしても俺が反応しなかったためか音の持ち主はそっと扉を開けて部屋の中の様子を窺うように小さな頭を突っ込むとキョロキョロと辺りを見回してからそっと部屋の中に入ってきた。
「パパ?、まだねんねしてるの?あさだよー」
小さな声を発しながらそっと俺が寝ているベッドに近づいてくるとベッドの端に手をかけてグイッと自分の身体を押し上げるようにしてベッドによじ登ってくる。
そして俺の顔をジーっと見ているのがわかる。視線がグサグサ刺さるからな…。目を閉じている俺を見てまだ眠っていると判断したのか小さなもみじのようなぷっくりとした手で俺の頭をそっとなでて来た。
「パパ、いつもおしごとがんばってえらい、えらいね。あおいはね、おしごとをいっぱいがんばっているパパのことがだーいすきだよ」
拙い言葉でゆっくりと言葉を紡いだ愛娘はそのあとえへっと笑いながら俺の頬にちゅっと口をつけた。
「(…なんだ、可愛すぎじゃねぇか?…ん、ちょっと待て。寝込みを襲うなんて誰が教えたんだ)」
あまりの可愛さにスルーしそうになったがサッと血の気が引いて閉じていた目をパチリと開けた。ちらりと口づけしてきたやつに視線を移せば満足したのか俺に背を向けてベッドから降りようとしている。
俺はその小さな身体を一気に抱きよせてベッドの中に引きずり込んだ。面白いくらいにビクンと娘の身体が跳ね上がった。
「っ!!!!」
バっと振り向いた娘はぷぅっと風船のように頬を膨らませて俺を睨みつける。
「もー!パパおきてたのだまってちゃダメ!ビックリしたでしょ!おっきのじかんですよ」
部屋の侵入者は俺の娘。名前はあおい。あいつの忘れ形見。目に入れても痛くない。俺の命に代えても守らなくてはいけないやつだ。
俺があおいを抱きしめたままでいると、俺の体温とタオルケットに挟まれた中が暖かくて気持ちいいのか次第にあおいの目がトロンとしてきた。
あ、こいつ寝るわと思った頃には仰向けに寝ていた俺の胸に頭を預けてすーっと眠りに落ちていた。
「(寝たか…ほんと誰に似たんだか知らねえが早起きが過ぎるんだよ。)」
先に眠りに落ちた娘の頭をなでながらデジタル時計に手を伸ばし時刻を確認する。俺がいつも起きる時間に自然と起きてしまったのであろうと推察する。
今日は休みだって伝えたんだがどうやら娘にはうまくは伝わらなかったらしい。
【AM6:13】
あと2時間は寝られるなと思いながら俺は目を閉じた。
「…ねむっ、子ども体温やべぇな…」
次に目が覚めたのは昼前だった
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