寝すぎたわ…
隣で寝ていた娘がいつの間にか先に起きていて、なかなか起きてこない俺を起こしに来たのは覚えている。
寝たふりをした俺を見て本当にまだ寝ていると思ったのか俺の頭を小さな手で撫でたあと頬にちゅっとされた。
その行為に驚いた俺はベッドを降りようとしていた娘を後ろから抱きしめて、今日は休みだったこともありもう一眠りしようとベッドの中に引きずり込んだ。
ベッドの中の温度と早起きのせいで本当は眠かったのだろう。数分もしないうちに俺の上で寝始めたすみれを見て俺も二度寝した。
「…今何時だ…?」
気配に敏いと自負していた俺が、一緒に寝ていたはずの娘が先に起きたことに2回とも気づかずに爆睡をかましていたようだ。
未だに重い瞼を持ち上げて壁にかかっている時計に目を向けるが今一つピントが合わずにぼやけている。
そのため右腕を伸ばして目覚まし時計掴む。デジタル時計が表示している現在の時刻を見てハッとした。
【AM10:23】
本来起きようとしていた時間よりもだいぶ過ぎている。
「うそだろ…」
体に乗っていたタオルケットをどけてベッドから床に足をつける。
部屋のカーテンを勢いよく開け、部屋を換気するためにカラカラと音を立てながら扉を開けると風が部屋を駆け抜けた。
寝すぎて凝り固まった身体をほぐすように肩や首、腰をグッと伸ばす。ポキポキパキッと軽快な音が鳴るがいちいち気にする必要はない。
自分が寝こけている間、娘はどうしていたのだろうか。朝食を食べさせることもせずに寝こけていたら父親失格だよなあと思いながら漏れ出る欠伸すら我慢せずに頭をガシガシとかきながらリビングに繋がるドアを開けた。
扉が開いた音に反応して娘がこちらを向いた。ソファの上に行儀よく座り、お気に入りのクマのぬいぐるみをその腕に抱えてテレビを見ていたようだ。
「パパはあおいよりおねぼうさんですねー」
クスクスと笑いながらぬいぐるみの短い腕を動かして俺を指しながらじゃえている姿がかわいい。
「わりぃな。腹、減っただろう?」
「んーん。だいじょうぶ!それよりもパパ、おはよ!」
「ああ、おはようさん」
ぬいぐるみをソファの上に置いて駆け寄ってきたあおいの頭を優しくなでる。
グリグリと頭を押し付けてくる娘の両脇に手を入れてその小さな体を抱き上げた。
「朝、つーかもう昼だな。あおい何食べたい?」
「んとね、おいしいやつがいいなぁ」
キッチンに向かいながら腕の中にいるあおいに問いかけると美味しいものというなんとも漠然とした答えが返ってきた。
抱き上げていた娘を一度下ろして冷蔵庫を開けて俺は固まった。
「……(なんもねぇな)」
「パパ?」
冷蔵庫の中身が文字通り空だったのだ。ドレッシングやソースなどの調味料は入っていたのだが、肝心の食料と呼べるものが入っていない。
最近は連続ドラマの撮影で忙しく、まとまった買い物もできずにその場その場で当日分を買ったり仕事現場で貰ったものなどで食事は済ませていたことが原因だった。
「(…せっかくの休みだし、買い出しにでも行くかな)」
そんなことを考えながら今日の予定を組み立てる。
一通り考えがまとまったところで冷蔵庫の扉を閉めた。
ご飯を作ってくれると思っていたのに俺が何も手にせず冷蔵庫を閉めたためキョトンして俺を見上げる娘の頭に手を乗せてポンポンとしたあとニッと笑って親指で玄関を指さした。
「うまいもん、食いに行くか」
「うん!」
冷蔵庫が空なら行く場所は決まっている
「パパ、まだー??」
「おぅ、ちょっと待ってな。…もしもし?あー、俺だ俺。は?詐欺なら間に合ってるだと?」