かっちゃんとあの子について
自主トレ後に汗を流して寮の共用スペースを通り自室のある男子棟へのエレベーターへ向かっていた時だった。トタトタトタと軽い音を立てて何かが俺の目の前を横切った。
「あ?」
俺の声に反応したのか横切った何かは俺の方にクルリと顔を向ける。その何かとは黒とピンクのファンキーなウサギのぬいぐるみでこの寮には似つかわしくない代物だ。そして一番大事なことはそのぬいぐるみが一人で勝手に動き回ってるのだ。
クラスの連中に物を遠隔操作する個性を持っているやつは俺の知る限りいねぇ。B組にたしかポルターガイストを起こすユーレイ女がいたはずだがA組の寮で起こす意味がわからねぇ。つまりB組のやつでもない。
考えられるのは1つだけ。
クソデクが連れてきた小せえガキ。話を聞けば雄英バリアを軽々と突破してみせた異端児をどうするかが決まるまでA組の寮で面倒を見ていろ押し付けられたと言っていた。…ザマァ。
「レナちゃん。この人がかっちゃんだよ」
「あ?」
「かっちゃん」
何勝手に俺の名前教えてんだ。クソデクが。
あだ名で呼ばれてガキに視線を向けた時に目に入ったのは白に近い銀色の髪で瞳の色が空色のまだ小学生の年齢にも満たねえんじゃねぇかというくらい小さいガキだった。そしてそのガキの右手があのファンキーなウサギの耳を握りしめていたのだ。
「かっちゃん」
「…かっちゃん言うな」
ふとまたあだ名を呼ばれて視線を下に向けるとガキ、レナがいた。本人を目の前にガキって言ったらレナが持っていたあのウサギが俺の頬を引っ叩いた。一切反応出来なかった…。
「スクナ知らない?」
「あ?ウサギなら…」
かっちゃんとあの子について
あ、いた。スクナ
あ、いた。スクナ