初めて







西の戦場行きの列車に半ば強制的に乗せられ(しかも荷台)、向かうことになった。
お兄はと言うと、戦場は嫌だ嫌だの一点張りで、泣きべそまでかく始末。


「お兄、せっかくイリアとスパーダくんが元気付けてくれたっていうのに……」
「うっうっ……だってぇ…………、じゃあ、ヨハンナは怖くないの……?」
「そりゃあ怖いよ。 ……でも、1人じゃないから、大丈夫」


そう、イリアやスパーダくん、もちろんお兄、それにコーダもいる。


「1人じゃ、ない……」
「うん。 ……だからほら、泣かないで?」
「……ん。 ありがと、ヨハンナ」


まだずびずびと鼻を鳴らして泣きべそをかいていたけれど、イリアがちょいちょい、と私を手招きしているのが向こうから見えたので、イリアのとこに行ってくるね、とお兄にハンカチを渡しつつ傍を離れた。
それと入れ替わりに、スパーダくんがお兄の元へ行っていた。


「ねね、ヨハンナのさぁ」
「うん?」
「そのうさぎって何で大鎌に変わるの?」


確かに……最初に戦った時はエイルが自分から変身してくれていたけれど……何で大鎌なんだっけ……?


「……あ、」


思い出した。


「エイルが……生まれて初めて見たのが大鎌だったの」


あの時、お父様――バルカンに拾われた時だ。
あの地に生まれ、あてもなく彷徨っていた頃、たまたま外に出ていたバルカンがわたしを見つけてくれた。
行くところが無いのなら着いてきなさいと言われ、着いたのが鍛冶場だった。


《何を……作っていますの?》
《ああ、これは……大鎌だ》


「ふぅん。 それってさ、他の武器になったりしないの? 例えばあたしの使ってる銃なんかにさ!」
「確かに……!着いたら、やってみようかな……」
「ま、武器の得意不得意はあるし、これからの戦闘で怪我でもされちゃ困るわよ?でも、いざとなったらあたしが守ったげる!」
「アハハ、頼もしいなぁ……うん、無理のない程度にやってみるね」


//2021.10.27
//2021.10.30 加筆修正
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