西の戦場







列車がキキキ……と音を立てて目的地に着いた事を知らせる。


「イリア、着いたみたいだよ、起きて」


到着まで寝かせてもらうわ、と一瞬で睡眠体制に入っていたイリアを起こし、列車を降りる。
お兄はといえばスパーダくんが何か言ってくれたようで泣き止んでいた。

少し進んだところに、ここの1番偉い人だろうか。
これからすることの説明を始めてくれた。
でも私は、周りの状況の方に目がいってしまい、話を聞く余裕などなかった。
そこは新聞などで見るよりも遥かに凄惨で、それだけでも身震いがしてきている。
私達も、今からこの戦争の道具になる。
一歩間違えば、あの今手当を受けている負傷兵のようになるかもしれない。


「……怖いか?」


スパーダくんに呼びかけられ、気付くとあの偉い人の話は終わっていたようで、居なくなっていた。


「ずっと怯えた顔して震えてたぞ」


気付かないうちにそんな顔もしていたのか。
少し、恥ずかしい。


「うん……正直、怖い。 お兄には怖いけど皆が居るから大丈夫だなんて言ったけど、やっぱりダメみたい。 えへへ……かっこ悪いなあ」


じわ、と目頭が熱くなって、自分が泣きそうになっているのが分かった。


「無理すんな。……まぁ、いざとなったら俺が守ってやるよ」


そう言ってスパーダくんは、安心させるように私の頭にポンと優しく手を置いて撫でてくれた。
――何だか、不思議な感じ。


「……ありがとう、スパーダくん」


//2021.10.27
//2021.10.30 加筆修正
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