西の戦場
◇
列車がキキキ……と音を立てて目的地に着いた事を知らせる。
「イリア、着いたみたいだよ、起きて」
到着まで寝かせてもらうわ、と一瞬で睡眠体制に入っていたイリアを起こし、列車を降りる。
お兄はといえばスパーダくんが何か言ってくれたようで泣き止んでいた。
少し進んだところに、ここの1番偉い人だろうか。
これからすることの説明を始めてくれた。
でも私は、周りの状況の方に目がいってしまい、話を聞く余裕などなかった。
そこは新聞などで見るよりも遥かに凄惨で、それだけでも身震いがしてきている。
私達も、今からこの戦争の道具になる。
一歩間違えば、あの今手当を受けている負傷兵のようになるかもしれない。
「……怖いか?」
スパーダくんに呼びかけられ、気付くとあの偉い人の話は終わっていたようで、居なくなっていた。
「ずっと怯えた顔して震えてたぞ」
気付かないうちにそんな顔もしていたのか。
少し、恥ずかしい。
「うん……正直、怖い。 お兄には怖いけど皆が居るから大丈夫だなんて言ったけど、やっぱりダメみたい。 えへへ……かっこ悪いなあ」
じわ、と目頭が熱くなって、自分が泣きそうになっているのが分かった。
「無理すんな。……まぁ、いざとなったら俺が守ってやるよ」
そう言ってスパーダくんは、安心させるように私の頭にポンと優しく手を置いて撫でてくれた。
――何だか、不思議な感じ。
「……ありがとう、スパーダくん」
//2021.10.27
//2021.10.30 加筆修正