知らない温かさ
◇
黒髪の軍人さんは、私を銃を持つ軍人さんから離し、軍人さんの休憩地点だというテントに連れてきた。
テントの中に誰もいないことを確認してから出入口を閉じる。
背中を向けていた軍人さんが振り向き、私の背に合わせて片膝をつき私に言う。
「お嬢さん、どうしてこんな所に?」
「……分から、ないです。気付いたら、ここに……」
突然銃を向けられた恐怖と、知らない場所にただ1人置かれていた恐怖が今更湧き上がってきて、私は泣き出してしまった。
軍人さんは、ひっくひっくと泣く私の頭を柔らかく撫でて落ち着かせてくれた。
「……名前は?」
「……マム、」
「そうか、マム。私はロイ・マスタングだ」
「マスタング、さん」
「そうだ」
ひと目見た時に頭に浮かんだ通りの名前の軍人さんは、もう大丈夫だ、と私を優しく抱きしめてくれた。
その温かさに、私はまた泣いてしまった。
***
暫くして、テントの中に入ってきた軍人さんがいた。
マスタングさんと知り合いのようで、仲睦まじく話をしていた。
銀縁の四角い眼鏡をかけている軍人さん。
私は、この人のことも知っていた。
……マース・ヒューズ。
私の視線に気付いたのか、目が合った。
「……この子は?」
「向こうの細い路地にいた所を私が助けた」
「イシュヴァール……の子供じゃないな。一体どこから……」
「それが覚えていないようでな……困っていたところだ」
「そうか……、お嬢ちゃん」
マスタングさんの横を通り過ぎ、私の目の前に来て片膝をついてそう言った。
「俺はマース・ヒューズ。こいつの友人だ」
「わた、しは……マム、です」
「マムちゃんか。お家はわかる?」
ふるふる、と首を横に振った。
じゃあ今いくつ?という問いにも横に振った。
ヒューズさんは、あー確かに困ったな……と後頭部をポリポリとかいた。
でもここなら安全だから、しばらくここに隠れているといい。と言い、ヒューズさんはマスタングさんを連れてテントの外へ出た。
テントの外で、マスタングさんとヒューズさんが話をしているのが聞こえた。
「あの子、孤児っていうには少し身なりが綺麗すぎると思わないか?」
「ああ……身体に傷一つ無かったな。それに、自分が何故
「記憶喪失とか……?ここで親に捨てられてショックで……とか」
「その線もあるかもしれんな……調べるには、まずはこの殲滅戦を終わらせる必要がある」
「……そうだな」
//2022.05.06
//2022.05.06 加筆修正