日課
3月下旬。宮城県私立青葉城西高校卒業式
『先輩ッ…卒業…おめでとうございますッ…』
「ほらほら、泣かないのぉ」
「せっかくの卒業式なんだから、もっと明るくいこうよ、唯織ちゃん」
「そうよ?はいはい、可愛い顔が台無しだよぉ」
卒業証書を持ったバレー部3年の先輩方、3人。涙ぐむ私の目元を、1人の先輩がハンカチで優しく拭ってくれた
私の手には元“エース”だった先輩から渡された背番号【4】のユニフォーム。思わず握る手に力が入ってしまった。歯を食い縛って先輩方に頭を下げた
『すいませんッ……本当に…すいませんでしたッ…』
「まだ気にしてるの?唯織はよく頑張ったよ。練習だって誰よりもしてたし」
「相手が相手だっただけ。私達は誰も唯織ちゃんを恨んでないよ」
『でも……ッ!』
突然胸に拳を当てられた。恐る恐る見上げると、元主将が歯を見せて笑っている
「…あとは頼んだわよ。エース」
エース…
今の私にはずっしりと重くのし掛かった。先輩達を敗北へ追いやったのは、紛れもなく私。最後の…先輩達のこれまでの3年間の集大成を試される春高だったのにッ…
「ほらほら、写真撮るわよぉ」
「唯織ちゃんは真ん中ね」
手を引かれて真ん中へ。先輩達はきっと後悔でいっぱいな筈。なのに…こんなに優しくしてくれた。責めないでくれた…
この人達の為にも…
こんな私に“エース”としての背番号【4】を背負わせてくれた先輩方の為にも…私は変わらなければ…
もうみんなの努力を無駄にしたくないッ…