正体
「人殺し?」
俯いたまま、頷いた。紛れもなく私は殺人犯…
今目の前の2人がどんな顔をしているのか、見れる筈もなく…
『恐らくその2人は私が…』
「恐らくって事は、確証はないんだろ?」
『いえ…きっと私です。まだこの手に…残ってるんです。感触がッ…』
アデラは両手を見下ろした
未だに残っている…人の肉を裂いた感覚
「記憶が曖昧…って事かな?」
『突然意識を失って…目が覚めたら…真っ二つになった2人がッ…』
恐る恐る顔を上げると、コムイ室長とリーバ班長が互いを見合って、何とも深刻な表情をしていた
『あの…あと思い出した事が…』
「何かな?」
『あの時…何であそこにいたのかについてなんですが…その2人に連れられて…マスターという方に会いに行ったから…です』
「えッ…」
「マスター?」
リーバさんが聞き返してきたから頷いた
『何で会わせられたか分かりませんが…ただあの2人がマスターと呼んでいたので…』
「外見は?思い出せないか?マスター以外の名前とか」
『すいません…あの時2人を斬ってしまったショックで…あまりよく覚えていないんです。ただ…』
アデラは険しい表情をして、恐る恐る口を開いた
『マスターの家族かもしれないって…』
「それは確かかな?」
コムイの問いにアデラは戸惑いながらも頷いた。マスター、とアデラが口にしてから何やら険しい表情のコムイにリーバは首を傾げた
「どうしたんスか?いつになく表情険しいですよ?」
「いや……リーバ君。ちょっと…」
少し待っててね、とアデラに伝えて、コムイは表情を崩さずにリーバと一旦部屋の奥へ…
「何でわざわざアデラから離れるんですか?」
「リーバ君。もしかしたら…アデラちゃんはとんでもない子かもしれない」