決意










「やっぱり明日はさすがに早いかなぁ…」
「そうだよ、絶対」
「トラウマを下手に悪化させたら、エクソシスト自体嫌になり兼ねないさ」
「もう少し時間を置いても良いと思いますよ」

室長室では未だにアデラの明日の任務について話し合われていた。やはり意見を交わす中で早すぎるのではないかという考えが1番に浮かんでいる





「確かに早すぎるかもしれないね。とりあえず明日の任務はッ…」
「失礼します」

話し合いの中、突然扉が開き、入ってきたのはリンク。その後ろからアデラが恐る恐る顔を出した


「あれ、リンク…ってアデラも」
「安心しろさ、アデラ。明日の任務は一先ず行かなくて済みそうさ」

ラビさんが優しく言ってくれたけれど、黙って俯いていた。そんな私の様子に気付いたのか、リナリーさんが心配気に顔を覗き込んできた。本当は未だに手が震えて、不安で今にも崩れ落ちそうだった……けど…




『あのッ…』

さっき決めたんだ。私は変わる
もう後ろばかり見ない
産まれてきた理由は…私が決めるんだって



『明日の任務……私も行かせて下さい!』

部屋に私の振り絞った声が響いた。目の前のリナリーさんやアレンさん、ラビさんとコムイさんも目を丸くしている




『私はッ…ずっと怯えているのは嫌なんです!こんな私に居場所をくれた皆さんのお役に立ちたいッ……仲間だと…家族だと言ってくれた皆さんの力になりたいんです!お願いします!』

深々と頭を下げると、部屋は静まり返った。頭を上げられない。皆がどんな顔をしているのか…怖いッ…

言いたい事を初めて言葉にしたせいで、自分でも何を言っているのか整理がつかないでいた。すると、頭に重みを感じた。咄嗟に顔を上げると、コムイさんが微笑みながら頭を撫でてくれた


「アデラの僕達への想いは伝わったよ。でも、君は一度AKUMAに殺され掛けた…そのトラウマを乗り越えられるかぃ?」

『殺され掛けた事はたくさんあります…でも、今変わらなければきっと一生変われないと思うんです。だから…皆さんと一緒に戦いたいです』

その発言にコムイは目を見開いた
この短期間で彼女の心には何があったのか
初対面の時とは驚く程に変わっていた

あの不安げな瞳は何処にもなく、その時確かに決意が固まった者の瞳をしていた









「ちょっとリンク、アデラに何かしたんですか?」
「人聞き悪い事を言わないで下さい」

「何かさっきの怯えてた表情とは丸っきり違うさ」

コソコソとリンクに尋ねるアレンとラビ。一方のリナリーは、アデラに心配気な表情を崩せないまま、尋ねた




「アデラ…無理してない?」

『ありがとうございます、リナリーさん。リナリーさんがあの時、私を家族だと言ってくれた事、とても嬉しかったんです』

「アデラ…」
『もう私は行き方に迷いません。皆さんの為に生きるって決めたんです』

「…絶対無茶はしない事。約束だよ?」
『はい、約束します』

リナリーはアデラの両手を優しく握って、微笑みながら約束を告げた。無茶はしない…

この先きっと無茶をしなければならない時が来るだろうけれど、決して自分を犠牲にしないで…とリナリーは強く思った。アデラはそんな想いを込められている事に気付く筈もなく、表情を強張らせて、頷いた


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