女扱い










「頑張れぇッ!クロム隊長!」
「スクアード船長、頑張って下さい!」

ある日の甲板。いつもより賑やかにクルー達が騒いでいる中心には、ある2人の男女が向かい合っていた



『手加減してくれよな、スクアード』
「お前に手加減したら腕が折れちまいそうだ」

そう苦笑する男はスクアード海賊団船長、スクアード

逆に笑みを浮かべている女は元ユースティティア海賊団船長。現在、白ひげ海賊団零番隊隊長、ハーツ・クロム




「クロム隊長!頑張って下さいよーッ!」
『おぉ、任せとけ!』

隊員の声援に、片手を上げて応えるクロム。見合わせていた2人は、間に置かれた樽に右手を付き、互いの手を握り締めた




「よーい…」

隊員の合図の声が上がった途端、スクアードとクロムの顔は真剣な顔になり、お互いの握る手に力が入った





「どんッ!」
『ふぬッ!』
「おらぁッ!」

開始の声が響いたと同時に、2人は腕を自らの左側に力一杯傾けた



「ふらぁあッ!」
『Σうぉッ…!?』

スクアードは腕に血管を浮き上がらせながら、更にクロムの右手を左側に傾けた。その反動で樽に罅が入り、中に入っている酒が漏れ出し始めた



「おぉッ!スクアード船長、頑張って下さい!」
「あとひと押しだ!」

毎回このクロムとスクアードの暇つぶし腕相撲対決での熱狂ぶりはかなりなもので、クルー達の声援も更に大きさを増した。そんな中でのスクアードの圧しで、スクアード海賊団のクルー達の声援が特に大きくなった




「隊長頑張れぇッ!」
「隊長のホントの力!見せてやって下さいよぉ!」

スクアード海賊団の声援に負けじと更に大きく声を張り上げて、零番隊の隊員達はクロムに声援を送った



『ハッ、毎度毎度ッ…すげぇ力だなッ…!』
「よくッ…言ったもんだぁッ…!そんな細ぇ腕の何処にこんな力あんだぁ…?」

『可愛い部下に応援されてる限りはッ…負け、られねぇからなッ…!こっちにもプライドくらいは…あんだよッ!』
「Σうおッ!?」
『なめんなゴラァアアッ!』

スクアードが先手を打った筈が、どこにそんな力を残していたのか状況が一転し、一気にクロムがスクアードの右手を勢い良く左側に傾けた

スクアードの右手が大きな音を響かせ、樽に叩き付けられた。その衝撃に耐えられなかったのか、樽は無残に粉々になり、中身の酒が辺りに飛び散った




「おぉおッ!流石俺達の隊長だぁ!」
「これでクロム隊長が5勝3敗だなぁ!」
「今回はクロムもちぃと危なかったんじゃねぇか?」
「どんまいだな、スクアード船長!」


「ま〜た負けちまったなぁ〜」
『あー、楽しいかった。やっぱりお前とは良い勝負になるな!』

ニッと無邪気な子供の様にクロムが笑うと、スクアードも愉快そうに笑い、クロムの小さい頭を雑にだが撫でた


/Tamachan/novel/6/?index=1