奈落の天辺

「そうだ、俺は砂の民、デイジだ」

 デイジと名乗る青年の髪は白く、瞳は赤く、褐色の肌。成程、ミタマ地方でも数人、そのような人たちに出会ったことがあるとアスナは考えた。ミタマ地方の市場開放に当たり、各地方に於けるそのような歴史や、文献をアスナは調べた。勿論、このサクハ地方のものも、だ。サクハ地方はミタマ地方とは違い、たくさんの民族が存在している。その中でも、砂の民と呼ばれる民族と特徴が一致している。
「クオン遺跡に何の用事だ」
「言っただろう? 勉強だ、私はこう見えて、考古学者をしている」
 ドンファンが威嚇してくるのに合わせて、ジェミニの目が鋭く細められた。それを宥めるようにジェミニに近づきその背を撫でてやる。
「クオン遺跡には歴史的価値がある。それを見に来ただけだったんだが……どうやら、簡単にはいかなさそうね」
 アスナはドンファンが転がってくるのに合わせて、ジェミニの背を離した。ジェミニはアスナの手に押されるようにして砂を巻き上げながら飛び立ち、再度ドンファンを受け止めてみせた。攻撃の意志は感じられない。
「アスナ様、ここは、私が」
「いいよ、大丈夫。ジェミニ、」
 その声に、ジェミニはもう一度ドンファンを跳ね飛ばし、体勢を立て直した。

「誰に手を出したのか、少し分からせてあげなさい」



 デイジと名乗った青年を相手にして、アスナは全くの容赦がなかった。
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