妹が出会いました。
「私も、お兄ちゃんみたいにマジック上手になりたいな・・・」
米花公園のブランコに腰かけ、誰に向けてでもなく一人言葉を漏らす。
「お前、マジシャンなのか!?」
「えっ?」
返ってきた言葉にうつむいていた顔を上げると、目の前には小学生三人組がいた。
――――――――
「なるほど、人前が苦手で本番に弱いタイプなんですね・・・」
光彦君が口元に手を当てて考え込む。
「むいてないんじゃねーの?」
とげのある言葉を何気なしにむけてくる元太君。
「そんな事いっちゃ駄目だよ、元太君!優おねーさんだって悩んでるんだから!」
そういってフォローしてくれる優しい女の子が歩美ちゃん。
元太君が私に声をかけたことを契機に、
三人の話にあれよあれよと流され、いつのまにか少年探偵団と名乗る彼らに
高校生の私は悩みを打ち明けているのだった。
「やっぱり、一番の近道は練習あるのみですかね、」
「そうだね!歩美たちが観客になってあげる!そしたら本番も緊張しなくなるかも!」
「で、でも・・・」
彼らなりに私のちっぽけな悩みに向き合ってくれているが、
それで解決できていたら、いまだにこんな風に悩んでいないのだ…。
「私、不器用で・・・。もともと成功率も低くて・・・」
一番の欠点が不器用。これを聞くと誰もが私の悩み相談の匙を投げた。
だって、もう救いようないでしょ。私も本当は分かってる。
でも、
でも・・・
お兄ちゃんがいつも一人で危険な目にあいながら宝石を盗んでいる様を知れば、
私だって何か役に立ちたいと思うもの。
大好きなお兄ちゃんだから。
自慢のお兄ちゃんだから。
今回の悩み相談もこれで終わりだろうな、と再びうつむきかけた私に
「ならさ、博士に相談してみよーぜ!」
「その手がありましたね!」
「そーよ、博士ならきっと優おねーさんにマジシャン道具を作ってくれるわ!!」
といって三人が声をかけ、私の手やスカートのすそを引っ張った。
『そうと決まれば、博士の家へレッツゴー!』
という三人の息ぴったりな掛け声に
「え、え?ちょ、ちょっと?」とわたわたしながら着いてゆくのだった。
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