妹が悩みを打ち明けました。






「は、はじめまして」


「優おねーさん、博士だよ!」


少年探偵団につれられなんだか、豪邸に来てしまいました。
目の前には、ひげを生やし眼鏡をかけた白衣のおじいさん。


「わしは、阿笠博士。子どもたちには博士<ひろし>をもじって博士と呼ばれとる。」

「わ、私は、黒羽優と申します。この度は急にお尋ねしてしまってすみません・・・」


優しそうな阿笠さんの自己紹介に、少しほっとしつつも、
自身も挨拶をする。

「あだ名が博士なのは、研究をしていて、発明品を作っているからなんですよ!」

おっほん!
光彦君のあだ名の由来を聞いて、なるほど、とおもいつつ
どこか胸を張っている阿笠さんが可愛らしく見えた。


少年探偵団の子達が、あって間もない私でも分かるくらいに、
とても阿笠さんに懐いているのはきっと彼の人柄の良さが理由なんだろうな、と考える。



すると元太君が

「不良品、失敗作、作ってる途中に爆発っていうのもしょっちゅうだけどなぁー」

と、さらっと酷いことをいって阿笠さんを凹ませていた。


あははは・・・、と子どもは純粋ゆえに時に残酷であることを再認識しながら
その場を笑って誤魔化した。








―――――――――――



「なるほどのぅ、マジシャンになりたいという夢は素敵じゃが・・・」


公園で話していた悩みを阿笠さんにも打ち明け、

ソファーに座りながら五人でテーブルを囲んでいた。



「なんとかしろよ、博士!」

「な、なんとかって言われてものぅ」



「不器用でもマジックができる発明品は無いんですか!?」

「優おねーさんのためなのっ!」


「そ、そんな急に無茶な・・・」



私もどこかで小さな望みを抱いてしまっていたが、

子どもたちに詰め寄られている阿笠さんを見て罪悪感が募った。


無理なことをいって困らせてしまっては駄目だ。
私は高校生だし、もう現実と理想の分別はつけなくてはいけないのだ。



「すみません、無茶なことをいって・・・。」

阿笠さんに向かって騒いでいた子どもたちがいっせいにこちらを見る。



「もう、いいんです。いつかは受け入れなきゃいけないって気付いていたんです。
私がマジシャンに向いていないこと。お兄ちゃんのようにはなれないってこと・・・。」

阿笠さんに言っているようで、
なんだか自分に言い聞かせるようになり、勝手にまた落ち込んでしまった。



「優さんや、少し時間をくれんかのぅ・・・」


「え?」


返ってきた意外な言葉に優は驚いた。



「わしはさっき元太君が言ってた通り、失敗も多い。じゃからすぐにとはいかんが・・・」

そういって阿笠さんは笑ってくれた。



「あ、ありがとうございますっ、阿笠さん!!」

ずっと思い悩んでいたことに、解決の糸口が見えたような気がして、
胸が少し軽くなった。

それと同時に視界がじんわり滲んでしまった。



「これこれ、泣くでない。わしが泣かしたみたいじゃないか・・・」

と、ティッシュを差し出しながら続けていった。

「それにわしのことは子どもたちのように博士と呼んでくれてかまわんよ、」



「はいっ、阿笠博士!」

私はティッシュを受け取りながら、返事を返した。



「よかったね、優おねーさん!」

「博士!男性が優さんのようなか弱い女性をを泣かせちゃ駄目じゃないですか!」

「悩みは解決だな!なんかいっぱい考えたから腹減っちまった〜」


探偵団の反応は三者三様だが、今日は彼らにあえて本当によかった。

彼らに会って悩みを打ち明けられたこと、阿笠博士に出会えたこと、

希望の光を得られたこと…。



私、お兄ちゃんの役に立てるかな。

行きとは違い軽やかな足取りで阿笠邸を去る優なのであった。

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