ハロウィン






「れーお兄ちゃん!!!とりっくおあ、と、と・・・?」



元気よくこちらに駆けて来た最愛の妹、優。


今日はいつもと違って黒を身に纏って、トンガリ帽子を被っている。


いわゆる魔女の格好。


しっかりこのイベントを楽しんでいるようだった。




高いテンションで俺の足に飛びつき、目を輝かせて言葉を発しようにも・・・忘れてしまったらしい。


首をかしげて、むーっとうなる優の姿を可愛いと思いつつ、助け舟を出してやる。



「TRICK or TREAT、だろ?」


昨年はそんなイベントをすっかり忘れており、お菓子を所持していなかったために

愛しい優を随分落ち込ませてしまった。



機嫌を損ねるならまだしも、


お菓子を持っていると信じきってイタズラを考えてなかったことを健気に反省していたのだから、

フォローも難しかった。





「そう、それ!!」

れーお兄ちゃん、おかしちょーだい!


紅葉のような手を精一杯俺に伸ばし、きらきらと輝いた瞳でおねだりする優。

まったく、なんて可愛いんだ。



自然と口元、目尻が緩むのが分かる。

どうにかいつも通りを装ってはいるが、今の俺を風見たちが見たら驚くだろうな。




「はい、どうぞ。小さな魔女っ子さん」



膝を着き、目線を合わせた上でラッピングをした包みを渡す。



「うわぁ!!ありがとー!!」


目の前の優は期待通り、いやそれ以上の笑顔を見せてくれる。


両手で大事そうに抱きしめながら、体一杯に喜びを表現している姿に癒される。


「なぁ優、もし俺がお菓子を持ってなかったらどうするつもりだったんだ?」


ふと、そんな事を思った。

俺のように昨年の反省を活かしてきっとイタズラの方も準備してたはずなんだ。




一生懸命考えたなら、お披露目をするべきだ。

別に俺が見たいとか思っているわけではない・・・はずがない。



「えー?」
あのね、


膝を着いていて距離が近かったが、さらに俺に近づいてくるので



「ん?」


内緒話か?と思い、耳打ちしやすいように顔を近づけてやると



ちゅっ、
頬に柔らかな感触。




「きゃーうばっちゃった!」



「なっ、」



バッと離れて、照れくさそうに自分の頬に手をあてている優。

予想外のイタズラに思わず声が零れる。




それはいつぞやのCMの・・・。

なんで知ってるんだ?なんて、そんな思考に至るが重要なのはそこじゃない。




目の前のちょっとおマセで、可愛い可愛い妹の優が魔女っ子ではなく、
心を掴んで話さない小悪魔じゃないかと疑った。




いや、もしかしたら、この小さな魔女っ子の魔法にかけられたのかもしれない。

それはもうとびっきり強力で、永遠に解けそうにもない魔法。



「してやられたな、」


そういって、蕩けそうなほどに甘く可愛らしいイタズラをした優を抱き上げる。

子ども特有の温かさを感じながら、


この可愛い妹を一生手放してやるものか、と心で密かに誓いを立てた。
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