隠れん坊と花






隠れん坊と花

いつもの様に書類を片付けて一段落がついた。
ふと気付くと外からは楽しげな笑い声が複数聞こえる。

どうやら短刀たちをはじめとするみなが遊んでいるようだ。
気晴らしに様子でも見ようと縁側へ腰をかけた。

どうやら粟田口派の子たちと小夜や蛍丸、

愛染などおり大所帯だ。

率先して面倒を見ているのは一期一振だ。

青空と同じ色の髪は太陽の光を通しより美しく輝いている。

一期の周りには弟たちが集まり、

遊びの続きをねだっているようだった。

そのように眺めていると今剣がこちらに気付き、手を振っている。

手を振り返すと私のところへ彼らはやって来た。


「あるじさまもいっしょにやりましょう」


「何をするの?」


「次は隠れん坊をするんです」


私の問いかけに答えた五虎退は期待した眼差しを向ける。

「こら、主の邪魔をしてはならないよ」

「大丈夫だよ一期、

仕事はもう終わったから

私も隠れん坊に参加していいかな?」


やったーと喜びの声たちが下からあがる。

その様子に花がほころんだ笑みをうかべた一期は

「弟たちを気遣って頂きありがとうございます。」

と律儀に礼儀正しく頭を下げる。


一期一振という刀は優しく礼儀正しい刀だ。

いつも私に対して礼儀を欠いたことはない。

彼の弟たちも皆優しく、礼儀正しいと思う。

時々もう少し態度を崩してもいいのにと思わなくもない。


早速鬼を決めようとジャンケンする

鬼は、薬研になった。

薬研が数を数えると皆散り散りに隠れ場所を探していく。

隠れん坊のルールは1つ、この庭以外で隠れないこと。

本丸は広い為こうしたルールができたが、

私は短刀たちより大きい為、

隠れ場所が限られる。

どこにしようかと悩んでいると同じように悩んでいる一期がいた。


「一期も悩んでるの?」


「はい、私が隠れるには大きすぎるようで」

困った顔して一期は笑う。

私も同じだと告げるとまた笑った。


「主は、まるで陽だまりのようです。」

一期が目を細め眩しそうにしかし花が綻んだ笑みで

そのようなことをいうものだから、息が止まった。


「一期はきれいな花だよね」


「私が、花ですか?」


「嫌かな?」


「いいえ、主が仰る花はどのような花なのでしょうか?」


一期に言われ庭を見渡すし足元にある小さな花を見つける。

奥ゆかしいしかし上品さがある、その花は一期のようだ。

私は花をており、一期に手渡す。


「主様、、、?」


「一期はこの花みたいだよね。」


一期は驚きながらも花を受けとるとありがとうございますと、はにかむ。

その姿に嬉しさがこみ上げ笑顔にになる。


「二人とも隠れてくれねーと隠れん坊にならないだろ。」


後ろから呆れたように声をかけてきたのは薬研であった。


「ごめんね、」


しかたねーなと言われつつ元の場所へ行く。



主は私に小さな花を手渡されると温かく微笑まれた。

その美しさに魅いられ、胸が高鳴る。
胸の鼓動が大きく脈うつのを感じる。

しかし直ぐに、薬研が声をかけて主は先を行かれてしまわれた。
薬研が私の手にある花を見ながら声をかける


「一兄?菫をなんで持ってるんだ?」


「主から頂いたものなんだ。」


「へぇ、菫か。」

「何かあるのか?」


「いや、一兄花言葉って知ってるか?」

「ああ、確か菫の花言葉は誠実だったような?」


「一兄の持ってる菫は紫だろ、紫の菫は愛だよ。」

薬研からの言葉にまた胸が高鳴り鼓動が全身を波うつ。
顔が赤いと薬研から言われてもどうにも収まりそうにはなかった。


You occupy my thoughts(あなたのことで頭がいっぱい)
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