slumber
「……くん、…シュウくん、」
声がした。
とても聞き覚えのある声
「もう、なにボーっとしてるの?」
俺の顔を覗き込んだのは
「……っ、」
もう二度と見ることのできない筈の笑顔。
なぜ彼女が目の前にいるのか
なぜ彼女が俺の本当の名を呼んでいるのか、
思うことは多々あれど
彼女を前にして溢れる想いはもっともっと別の、どうにもならないもの
俺は手を伸ばして掻き込むように彼女を抱きしめる
逃がさないように、
失わないように、ぐっと力を込めて。
「い、いたいよシュウくん」
そう言いつつも素直にそのままでいる彼女はいじらしい程献身的で、汚してしまいたくなるほどに純粋な輝きを放っている。
あぁ、狂おしいほどに求めたものがいま、自分の腕の中にいる。
この俺の、腕の中に。
黙り込んでいる俺に彼女は再び名前を呼ぶ。
「シュウくん…?」
「もう一度、」
もう一度呼んでくれ。教えることも、呼ばれることもなかった俺の名前をその声で。
すがるように口から零れた言葉だった。
「シュウくん」
「…もう一度、」
「シュウくん、」
彼女と普通の人間として普通の出会いをしていたら。ただの男と女でいられたら。
名前ごときで痺れるような甘い酔いも、突き刺し抉り取られるような痛みも知らなくてすんだのに。
目が、覚めた。
「はっ、」
嘲笑せずにはいられなかった。
今更どうにもならないというのに、彼女にすがりつく夢を見て俺は一体どうしたいというのだ
無様でしかない。
もう、あの時掻き抱いた彼女の感触も、甘く響いた声も薄れて影もない。
しかし胸の痛みだけは、いつまでも消えない。
------寝ても覚めてもキミを想う。
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- 3 -
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Timeless