06







優は二人のリクエストだった東都水族館、東都タワーなどを周り、午後三時ごろ

「さ、ついたよ。」

米花美術館に到着した。




「えーっと、常設展示と企画展示に分かれてて、」

まずは常設展示からですかね、と康一がリーフレットを開く



「そういえば、露伴さんはどうして美術館に来なかったのかしら。芸術関連なら食いつきがいいと思ったけれど。」

優はふと、前から思っていた疑問を口にする。



「あぁ、それは『以前にも行った美術館に何度も足を運ぶほど僕は暇じゃあない。』って・・・。」


おかげで僕は由花子さんと今日ここに来られたんで良いですけど、と康一が答える。




なるほど・・・。確かに何度も同じ場所に足を運ぶ性分じゃなさそうだ。

優はもう三年会って居らず連絡もたいしてとっていないが彼も相変わらずなのが分かり、顔に苦笑いを浮かべる。



――――――――――――――


程なくして常設展示に一通り目を通したので企画展示に移動した。


「あれ・・・?」

優はお手洗いを利用し戻ってきたが、康一と由花子が居ないことに気が付いた。

由花子に撒かれたと優は理解した。



言ってくれればちゃんと邪魔しないのに素直じゃないなぁ、などと言つ。

独り言だから言うのだ。
もし優が由花子に面と向かって言ったら殺されてもおかしくない。

しかも動機が照れ隠しなんてしゃれにならない・・・。





二人きりの空間を邪魔したいわけでもないので、大人しく邪魔者は待っていよう、と優は中央に配置されたキューブチェアに腰掛ける。

なんとなしに優が「天空の間」にある天使の石膏を眺めていると、誰かがやってきた。




「わぁーー!素敵な絵や像がいっぱい!」


え、なんでここに?

「ら、蘭ちゃん・・・?」

「え?・・・優さん!奇遇ですね!」

やはり彼女だった。調査で知った彼女の父親、それにコナンもいるようだ。


できれば、本当は会いたくなかった。

いま頭を悩ませている対象に出会うことは優のリフレッシュ計画を見事に破壊するからだ。



優と会った事を素直にうれしそうに笑ってくれる蘭に心の片隅で罪悪感を抱きながら応じる。




「ほんと!コナン君も、こんにちは。」

「こんにちは、優おねえさん!」



可愛らしい笑みを優に向けて、挨拶をしてくれるコナン。

どこか疲れたような顔をしているから、彼女につき合わされているのかな、と優は推測した。


「えっと、こちらの方は・・・?」

「私の父、毛利「毛利小五郎ですっ!お見知りおきを!!」


疲れた顔を一変させて息巻いて手を握ってきたのはちょび髭。

いや、蘭の父親。


優は思わずのけぞる。

「あはは・・・ど、どうも、」


優は小五郎のテンションと、その大げさな表情に億安の影を重ねた。


というか・・・知っていて、知らないふりも楽じゃない。優はちらりとコナンを盗み見る。


くりくりとした愛らしい瞳はやはりこちらをじっと見つめていた。

演技を得意としているわけでもないので優は少々不安を抱く。




「ちょっとお父さんっ!・・・すみません優さん。」

「気にしないで、」


苦笑いはちょっと隠せそうに無かったが、

父親の顔を押して優から引き離して代わりに謝る蘭にそう返す。

そんなこんなで、彼らと話をしていると

優は最近この美術館で「夜、中世の甲冑が勝手に動き出す」という噂が近所に流れている事を知る。


正直、ホラーものは無理だ。

スタンドは超常現象扱いされるが、生まれつきスタンド使いの優にとっては居て当然の存在でありお化けなどとはまた別枠なのであった。


スタンドといえど、足もあるし
出現させるのも、消すのも優の自由であるからだ。


そもそも
夜の美術館なんて想像するだけで不気味なのだ、と情けないことを優は考えていた。

「じゃあ、蘭ちゃんは怖いもの平気なの?」


「い、いえ・・・ただ気になって・・・」



「ふふふっ…怖いもの見たさってやつね、」

さすが女子高生、好奇心があるけど一人はごめんだから後ろの二人を巻添えにしたのね…。
優にも心当たりのある経験であったからこそ微笑ましさに笑みがこぼれる。


優に笑わないでください、と少しすねた表情を向ける蘭ががかわいくて、優は笑みを抑えられないままにごめんね、と謝った。


「コナン君は怖くないの?」

またもやじっと優と蘭のやり取りを見ていた少年に問いかける。


「平気だよ!そんな噂子供だましだよ!」


あなた、子どもでしょう、優は内心で呟く。


優はコナンを観察していて

愛らしい男の子ではあることだけでなく

賢いこと、子どもらしさが欠けている点などを感じていた。

最近の子どもはこんな感じだ、と言うには少々無理があると優は思う。



「で、その甲冑はもう見たの?」

「まだだよ、「うぁぁあああああああ!!!!!!!!!」



優がコナンに再び話を振った直後、けたたましい叫び声が聞こえた。


「何だっ!?」



「この声、康一君の声っ!?」

聞き覚えのある声に、優も困惑する。



「えっ、優さんのお知り合いですか!?」


「えぇ!宮城から来た知り合いに都内を案内してたの!」

「とにかく行くぞっ!」




小五郎の声に一同叫び声の聞こえた方へ走り出す。



スタンド使いでも現れたのか?と優はすぐさまそちらに意識をまわすが、
いや、康一なら由花子もいるしうまく立ち回るだろうと考えを改める。


優はまとまらない考えを繰り返しながら、二人のもとへと急いだ。





――――――地獄の間――――――


鬱蒼とした雰囲気の空間の奥に、悲鳴の主はいた。


「康一君っ!!」


「どうしたっ!?」


尻餅ついて一点を見つめたままでいる康一と、彼に寄り添うようにしゃがんでいる由花子がいた。

優たちが彼の目線の先を見遣るとそこには、

「ひっ!」


のど元を剣によって一突きされ、壁に張り付けられている男性の悲惨な遺体だった。
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