入学初日の朝





「起きて、さくら!起ーきーてー」



ピピピピピ……と目覚まし時計のアラームが鳴り響く中、ふわりふわりと意識が浮上し始めた。大きな欠伸をひとつして薄掛け布団を被り直せば、ベリッとそれを剥がされる。春といえど朝はまだ少し空気が冷たくて、体が思わず震えた。


「……あー、おはよ、みっちゃん……」


寝起きのふにゃっとした顔でそう声を掛ければ、布団と私を引き離したその大男_長男の光忠だ_は呆れたようにもう、とタメ息を吐いた。


「まったく……おはよう、さくら。今日は入学式でしょ、ちゃんと起きなきゃ可愛く準備する時間が無くなっちゃうよ」


まだベッドでゴロゴロとしていた私は、ハッとして飛び起きた。そうだ、今日は高校の入学式じゃないか!そんな私の様子を見た光忠は、じゃあ居間で待ってるよ、と言ってリビングへと階段を降りていった。


私は急いで服を真新しい制服に着替えて、パチンとリボンを付ける。着替え終わったらそのまま必要なものを昨日のうちに入れておいたリュック(私は腰を痛めやすいから、スクールバッグではなくこっちの使用を許可された)を引っ掴んで洗面所に駆け込んだ。

髪をシンプルだけど可愛い簪でひと纏めにして、前髪はちょっとブローして寝癖を直しながら形を整える。三面鏡で前後左右全ての方向から確認して、よし、とリビングへ向かった。








「おはよー」
「おや、おはようさくら」
「おお、さくら、おきたか」
「おはよう。今日も一番最後だな」
「さくら、おはよう!」
「ああ、さくら、もう一回おはよう。うん、可愛く出来てるよ」


上から小竜、小豆、長光、謙信、そして言わずもがな、光忠。どういうわけかいつも、私が起きる頃には皆既に朝の準備も終えてリビングに集まっているのだ。解せぬ。


私が長光にうるさいなぁ、と返すと、それを見ていた小豆がははっ、と笑った。


「きょうもさくらがいちばんのねぼすけだな」
「さくら、ぼくよりおきるのがおそいぞ!」
「シャラップ!」