「きょうはどうしようか?」
本丸に来てからお決まりのようにすいーつ、すいーつと口にしているのは小豆長光。上杉謙信の愛刀とされていた刀だ。
彼のお気に入りらしいえぷろんが似合わないのは毎度のことで、今日も身につけているものだからてっきりすいーつをつくるものだと思っていた。
「きょうはあまくないあずきりょうりをつくってみようとおもうんだが」
彼が口にした予想外の提案に驚く。あまいものはすきかい?と聞くほどすいーつ推しをしている彼があまくないものを作ろうというのだ。
「あずきのきーまかれーというのはどうだろうか。くっくぱっどにのっていてな」
クックパッド……どこで覚えたんだろう。武田信玄の軍配を切ったとされる名刀が現代の料理サイトを見ている状況に頭がついていけない。
「どうしたんだ?かれーはきらいか?」
深く考えても仕方ない。ここはそういう世界なのだ。とりあえず彼とカレーを作ることにした。小豆さんから渡されたお揃いのエプロンを身につける。
「うん。にあっているぞ、主」
エプロンが似合わない彼に言われると喜んでいいのか分からず複雑な気持ちになるが、深く考えてもしかたない。気にせず料理に取り掛かる。
「はっはっは、かれーをつくればこどもたちもよろこぶだろうなあ」
小豆長光は楽しそうだ。慣れた手つきでカレー作りをすすめていく。彼の脳内にはよろこぶ皆の顔が浮かんでいることだろう。手際が良すぎて正直こちらはやることがない。
小豆のキーマカレーで使うのはどうやら予め煮ておいた甘くない小豆を使用するようだ。随分と準備がいい。あまいもの好きのイメージが強い彼が甘くない小豆を扱っていることに違和感を感じるが、深く考えて仕方ない。
その後もテキパキと料理をすすめあっというまに小豆のキーマカレーは完成してしまった。なるほど、なかなか美味しそうだ。
「たまにはあまくないすいーつもいいものだな」
カレーはすいーつではないと思うのだが。
「主、かれーのあじみをしてもらえないだろうか?」
出来上がりが気になるのかカレーを一口分すくったスプーンを此方に差し出してくる。彼が作った料理ならば味は問題ないだろうが、一応確認してみようか。そっと口を開ければ彼はスプーンを運んで食べさせてくれた。
「どうだい?」
伺うようにこちらを見つめてくる彼。とても端正な顔なのだが絶妙なセンスのエプロンとのギャップが激しく笑ってしまう。
「ん?まぁわるくはなかったのかな?」
というよりかなり美味い。小豆を使っても美味しいカレーが出来るのか。さすがクックパッド。美味しいよと告げると彼は納得したように頷いた。
「あるじのくちにあうならばよさそうだね。こんやのゆうはんはこれにきまりだ」
「わたしとあるじのきょうどうさくひんだ。みんなにたべてもらわなくてはな」
彼は出来上がったカレーを嬉しそうにみんなの元へ運んでいく。共同作品か、こちらはほとんど何もしてないけれど。まあいいか。深く考えて仕方ない。
小豆のカレー
18/03/15