「私は篭手切江。郷義弘の打った脇差です。これからよろしくお願いします」
楽器集めの為に向かった秘宝の里で遂に仲間に迎えることが出来た篭手切江。付喪神として現れた彼の姿は黒髪に眼鏡をかけ右頬にほくろが二つ。見るからに真面目そうな青年だ。南北朝時代の刀工・郷義弘作の脇差らしいのだが、私はあまり彼のことを知らない。
「あなたが主ですか、これからお世話になります。ここが私の新たなすていじなんですね。」
彼はキラキラとした目で本丸を見回している。人の身体を得て初めてみるものばかりなのだ。きっと胸をときめかせているに違いない。彼の言った"すていじ"がなんなのかはよく分からないが。
とりあえず何か聞いてみよう。えっと、何を聞けばいいかな。名前、はさっき聞いたから、そうだ特技を聞いてみよう。出会って早々あれこれ質問ぜめにするのも申し訳ない気もするが、彼を知らないことには主として彼を扱える自信がない。
「篭手切江は何か得意なことはある?好きなことでもいいんだけど」
「特技ですか?実は、着付けが得意なんです。普段着から晴れ着、戦闘用のすていじ衣装まで何でもお任せください」
へえ、着付け。さすが日本男子。着物の着付けはなかなか手間取ることが多く、彼がいてくれると助かる。戦闘ですていじ衣装が必要かどうかは置いといて、本丸での着付け役は彼に任せていいかもしれない。
「これからは着付けを貴方にお願いするよ」
「はい!より華やかにしてみせます!すていじ衣装は大事ですからね!」
篭手切江を着付け役に任命すると、彼は嬉しそうに胸を張ってみせた。
「ところで、さっきから"すていじ"って言ってるけど、何のこと?」
ふと疑問に思ったことを聞いてみる。彼以外の刀剣達もそれぞれ、雅とかすいーつとか主命とか繰り返し口にする言葉がある。彼もその"すていじ"に何かこだわりがあるのだろう。
「私は歌って踊れる付喪神を目指してるんです。戦いはすていじです。まだ見習いですが、すていじで輝けるよう精進あるのみです」
……歌って踊れる付喪神。さながらアイドルのようだ。刀剣は本来戦の道具なのだが、彼のキラキラした純粋な瞳を見ているともうなんだかアイドルにしか見えなくなってくるから不思議だ。
付喪神は刀に込められた想いが人の姿を宿して現れた存在だ。篭手切江という刀には刀剣でありながらも人々からアイドル的な存在としての想いが込められたのかもしれない。詳しいことはよくわからないが。
心配なのはアイドル路線に走っていて実際に戦えるのかということだ。日々強敵が現れている中、やられてしまわないといいのだけど。
「主、もちろん私は刀剣ですから、任務もちゃんとこなしてみせますよ」
ふと、篭手切江が言う。私の考えを見抜いたかのように急に真面目な顔をして言うものだから少し驚いてしまった。ただのアイドル刀剣ではないと言いたいらしい。
「主の刀剣として、全力で魅せましょう」
自信に満ちた言葉。真面目な好青年という印象が強かった彼がなんだか頼もしくみえる。彼はこんな顔もするのか。
「主、そろそろ私はすていじに向けてれっすんにいきますね!」
日々の戦いも刀剣達が輝くステージとして考えれば明るく過ごせるのかもしれないな。彼はまたキラキラと輝く笑顔を見せながら、鍛錬へ向かっていった。
彼はどんな戦いを私にみせてくれるのだろうか。
戦うアイドル
18/03/28
篭手切江入手記念。本丸ではアイドル路線な彼ですが戦闘でカッコよくなるところ結構好きです。