1年は組
あれから他愛のない話をしながらキリと一緒に長い廊下を歩く。食堂に顔を出したんだが、カワニシではなくサンタンダが居て、驚いて聞いたら昼と夜で違う学年が手伝うんだそうだ。3年は人数が多い上に少し特殊だから今は手伝いは大丈夫だと言われた。…癖が強いんだな。俺は気にしないが、微妙な立場だからピリピリしてるんだろう。此処は素直に身を引いておこう。
仕事がなくなった俺に、キリは俺の話を聞きたいと強請るので、仕方ないから俺に与えられた部屋に向かう。天女達が使ってた部屋だと言うと、キリは露骨に嫌そうな顔をした。
「キリ、ニンジャは顔に感情を出したらいけないんじゃねぇのか?」
「おれはまだ1年だから良いんですー!…あの部屋、気持ち悪いんすもん」
「あの部屋で寝泊まりしてる俺はどうなるんだよ」
「あー……サラさん、おれ達の部屋に来ません?乱太郎としんべヱも居るから少し狭いかも知れないけど、天女様の部屋よりはマシです!」
「気持ちは嬉しいけど、嫌がられるんじゃねぇか?」
「乱太郎は優しいですし、しんべヱは能天気なんでごり押しでいけますよ!」
「物騒だなぁ…」
ニコニコと笑いながら紡がれる言葉に、思わず失笑が零れる。ごり押しってなんだよ、仮にも級友じゃねぇのかよ。そんな感じで聞けばキリ達はいつもこんな感じらしい。…仲良いのかな、そう考えれば納得出来る気もしなくもないが……うん、納得しておこう。キリ達なりの友情なんだろう、理解は出来ないけどな。
…それにしても、後ろの集団は何がしたいんだろうな?気配を隠していないし、カキュウセイだとは思うが……
「サラさん、どうしたんすか?」
「…キリ、知り合い?」
「へ?……あ!?サラさん逃げて!!」
「はあ?」
「あ、この場合おれか!?とにかく逃げましょう!!」
「はあ?ちょっと待てよ、話が分から…「「「せーの!」」」せーのって何だ、よ……え?」
「「「きり丸から離れろー!!」」」
背後に居る集団についてキリに聞けば、キリは顔をさっと青ざめ、俺の腕を引っ張って逃げようと言ってくる。同じ水色なのに何で逃げたがるのかが分からないから戸惑っていれば、せーのと言う可愛いらしい声が聞こえ、思わず振り向けば沢山の石が飛んで来た。……は、石!?だからキリは逃げようって言ったのか……!!俺はキリを抱え込み、後ろに飛んでから氷の結界を発動する。キンッと言う高い音と、結界に邪魔をされ勢いを無くした石達が落ちる。…こっわ…
…何んかキリの方目掛けて飛んで来てたのは気のせいか?
「キリ、大丈夫か?」
「…結界…?」
「ん?ああ、詳しくは後で説明してやるけど、俺の得意分野だよ」
「……へー……じゃなくて!!サラさんに何すんだよ、皆!しかも、おれに向かって来てたじゃんか!!」
「…天女様がきり丸を攫おうとしてるって聞いたんだけど、違うの?」
「違うから!誰だよ、そんなこと言ったの!!」
「…え、違うの!?」
「お前かよ、虎若〜〜!!良いか!サラさんはな、竹谷先輩と不破先輩と善法寺先輩と食満先輩に色々言ってくれたんだぞ!?」
「「「「え?!」」」」
「サラさん!大丈夫ですか!?」
「イナデラ?ちょ、お前どうした!?」
「私、皆を止めようとしたんですけど、傷んでたのか床が急に抜けちゃって……お怪我はありませんか?!」
「俺じゃなくて自分の心配をしろよ…こんなにドロドロになっちゃって……」
俺は溜息を付き、こっちに駆け寄って来るイナデラを落ち着かせ、泥や埃を叩いてから、手を翳し、擦り傷やヨレた制服を元に戻す。傷を治せるのは知っていても、制服まで直せるなんて言ってなかったからな、イナデラはかなり驚き、魔法使いさんですか?!とか聞かれたが、俺は笑いながら錬金術師だよと答える。…魔法使いとか可愛いな、発想が。しかもさん付けとか…良い子だなぁ…
「…乱太郎ときり丸、その天女様は大丈夫なのかい?」
「大丈夫だって私言ったよね?!サラさんは優しいし、媚びたりしないから天女様じゃないよ!」
「それに、サラさんは土井先生のお嫁さんになるんだ!!」
「「「えーっ!?」」」
「え、本当ですか?!」
「ならねぇから、嘘だから。キリは笑顔でそんな嘘を付くんじゃねぇ」
「おれがサラさんにお母さんになって貰いたいんです!諦めませんから!」
「諦めろよ……ドイに迷惑だろ。イナデラ、何んとかしてくれ。同室だろ」
「…サラさん、随分きりちゃんと仲良くなったんですね。保健委員が最初だったのに…」
拗ねたような声色に、思わず顔を向ければ、悲しそうな寂しそうな表情を浮かべているイナデラと目が合う。…可愛い過ぎかよ…!ああもう、ニンジャがこんなに絆されて良いのか!?確か名前はランタロウだったな、だったらーー……
「そう拗ねんなよ、ラン。お前の先輩、きっともうすぐ帰って来るから」
「……え……?」
「笑顔で受け入れてやってくれるよな?お前は部外者の俺にも最初から優しかったもんな、ラン」
「…っ……!はい、勿論です!」
「よしよし、良い子良い子。良い子は好きだからな、頭撫でてやろう」
「ふふっ…冷たくて気持ち良いです」
「…乱太郎ばかりずるい…」
「キリは嫌がるだろー」
「嫌がりませんて!」
「…本当に天女様じゃないんですか…?」
俺がランにばかり構ってるのが気に入らないのか、拗ねたキリに突撃を食らう。まあ、痛くはないけど。両手に花だなー、なんて思いながら2人の頭を撫でていれば、キリッとした顔立ちの子が、震える声で小さく呟く。俺はランとキリに一言言ってから、ゆっくりと近付く。俺が近付いて来たことに驚いたのか肩をぴくりと跳ねさせた子の頭をそっと撫でる。
「違うよ。無理に信じろとは言わねぇけど、俺は君達の先輩に興味はないし奪ったりしないから」
「…天女様…」
「うん?」
「…ぼくは黒木庄左ヱ門です。ショウと呼んで下さい、その方が呼びやすいですよね?…さっきはごめんなさい」
「ん、素直に謝れるのは良いことだが、俺は気にしてねぇよ。不審者なのは俺だからな。それと、俺は天女様って名前じゃねぇんだ。サラって呼んでくれ、ショウ」
「!はいっ、有り難うございます!」
「おー、よしよし。素直だな」
ぱあっと明るくするショウの頭を撫でていれば、ぞろぞろと小さい水色が俺達を囲む。皆が皆、一斉に自己紹介を始めるので、ショウが皆を纏めてから、代表で皆を紹介してくれた。イスケは掃除好き。キンゴは剣道が大好きで、トベセンセに憧れてる。キサンタはナメクジが好き。トラワカは火縄銃が得意。ダンゾウはバシャクで字が下手。ヘイダユウとサンとカラクリが大好き。シンは食べることが大好き……なかなか個性豊かだな。まあ、全員が良い子なのは分かるが。ランとキリは俺が受け入れていることに安堵しているみたいだ。…俺もホッとしてるけど。信じて貰えるほど、嬉しいことはない。
俺はキリと色んな話をするけどラン達はどうする?と聞けば、全員が2つ返事を返してくれた。嬉しい反面、此処まで懐かれてると惑わしてるって疑われそうだなぁ、なんて考えながら、沢山の質問に答えつつ、俺達は部屋へと向かって行った。
(小さな小さな味方達)
(その笑顔に救われた)
10/10
prev next 戻る