仲直りしましょう

俺の部屋では組の皆と他愛のない話に花を咲かせる。話題が尽きることはない。此処の話はなかなか興味深いことだらけだ。キサンタのナメクジ愛についてはなかなか共感出来ないが、何かをただひたすらに愛せるのは凄いことだよな…そこは素直に凄いと思う。俺には多分無理だ。夢中になれることもあまりないしな…趣味がないのは問題あるかも知れないが、興味がそそらないから仕方ないと思いたい。…好奇心が湧いてくれれば良いんだけどなぁ…
不意に気配を感じ、襖に目を移す。ノックの音と俺を訪ねる声。声にぴくりと反応したキリの頭を撫でてから、俺は居るから入って来いと声を掛ける。


「すまない、ちょっと相談が……は組の皆!?」
「ちょっと懐かれてな。相談って何だ?」
「…あ…いや、今はやめておこう。皆、あまりサラに迷惑を掛けないようにな」
「…ラン、ショウ。キリをちょっと頼む。ダンゾウとトラワカは少し手伝って」
「「「「はい!」」」」
「まあ待てよ、茶でも淹れるぜ?」
「ちょ、サラ!?」
「土井先生、お茶美味しいですよ!」
「お菓子も珍しいですし美味しいですよ!」
「…団蔵…虎若…」

「逃さねぇよ、観念しろ」


俺が襖を凍らしてドイを出られなくし、驚いているドイの両腕をダンゾウとトラワカの2人が掴んで離さない。見事な連携プレーだろ、打ち合わせなんかしてないけど。因みに2人を選んだのは適当。何となく肉体系かなって思っただけだけどな。俺の言葉に、ドイは困ったように笑いながらダンゾウとトラワカに引っ張られてこっちに来て……ランとショウに手を握って貰っているキリの姿を見て、表情を凍らせた。


「……きり丸……」
「…っ…土井、先生…」
「…お前の話はキリとは組のことだろう。良い機会だ、今全部ぶちまけろよ。お互いにな。遠慮なんかしてたらずっとこのままだぞ」
「…はにゃあ〜…サラさんは男前ですね〜」
「見てて歯痒いからな、可能なら口出しするさ」
「…きり丸…その…「大丈夫です。分かってますから…!」…え?」
「おれ、土井先生の邪魔ばかりしてますよね!赤点は取るしバイト押し付けるし……土井先生がおれを嫌っても仕方ないです…」

「…違う…違うぞ、きり丸!私は…お前を嫌ってなんかない!」


キリの言葉に、ドイは必死な形相で否定する。これはまあ、認めてやっても良いかな。それ以降の行動は評価しないけどな。ドイはキリの肩に手を置いたまま、視線を彷徨わせる。言葉を選んでるのは教師としては合格でも、キリの不安を拭えてないから保護者としては失格だな。はぁ、本当に頼りないな…俺は溜息を付いてから、ドイの頭を叩いた。


「痛っ…何をするんだ、サラ!」
「言葉を選んでる暇があるなら本音をぶちまけろよ、お前は教師である前にキリの保護者だろ」
「…っ…だが、私はこれ以上きり丸を傷付けたくない…っ」
「本音を言われない方が俺は嫌だけどな。傷付くか傷付かないかはキリが決めることであって、ドイにそれを決める権利なんかねぇよ」
「…サラさん…」
「ドイ。お前は顔を合わせ難いとか言っていたが、俺から言わせて貰ったらただの甘えだ。天女からドイから離れろって言われたり、ドイと仲良くなりたいが為に近付いて来た天女に傷付けられたキリとは全然違う」
「……そう、なのか……?そんなことがあったのか…?」
「……っ……」

「…後悔なんて幾らでもするのは勝手だが、時間は待ってはくれねぇよ。お前が逃げれば溝は深まるばかりだ。間違ったら次は間違えないようにしたら良いじゃねぇか。…頼むからこれ以上キリに大切な人が消える感覚を味合わせないでくれよ…」


キリはまだ幼い。そんな幼い子に何の罪があると言うんだ。前の天女達は本当に自分のことしか考えてないんだな。どうしてドイが好きなら、ドイの大切なキリを傷付けるんだ。大丈夫よ、とかお母さんだと思って良いって言われたとしても、本心じゃないってすぐに分かる。そう言うのに聡いだろうからな、キリみたいなタイプは。
俺の言葉に、ドイは悲しそうに顔を歪めた後、ぎゅうっとキリを抱き締めた。驚いたようなキリの声が聞こえたと同時に、俺は笑みを浮かべた。ーーああ、もう大丈夫。


「…ごめんな、きり丸。私はお前が一等大事だよ。赤点には胃が痛くなったり、バイトの押し付けには叱ったりするが…お前が嫌いだと思ったことは一度もないよ」
「……土井先生…ほんと…?」
「本当だとも。…私がお前に嘘を付いたことがあったか?きり丸」
「…う…っ…ないよ、土井先生…!」
「…許してくれとは言わない。だが、もう一度きり丸を守らせてくれないか…?」
「…もう、おれを独りにしないで…!」
「!…ああ、勿論だ…!」
「……良かった…これもサラさんのお陰ですね!」
「俺はただ発破かけただけだ。お互いが大事なのは分かってたしな」
「…サラさんも大切な人を失ったんですか?」

「…両親をな…つい最近、父親代わりを失ったばかりだ」


ドイとキリのやり取りを、は組の皆と一緒に傍観する。は組の皆も心配してたんだろう。笑顔が増えると良いんだが。こそっと聞いて来たキンゴに小さく答えれば、キンゴは悲しそうに顔を歪めた後、ぎゅーと俺の手を握って来た。…あー、もう。優しいな、は組の皆は。俺は寂しいとか既に感じてないが、キンゴの思いやりは有り難く貰おう。
暫くキンゴと他愛のない話を小声でしていれば、不意に名前を呼ばれる。顔を上げれば、満足そうに笑うドイとキリの姿があって、思わず口元が緩む。


「サラ、君のお陰だ。色々と有り難う」
「礼には及ばねぇよ。勇気を出したのはお前だろ。俺はキッカケを与えただけだ」
「…そうか。何か礼がしたいんだが、受け取っては貰えないかな?」
「礼、つーか心配させたお詫びには組の皆に何か奢ってやったらどうだ?どうせ皆にも冷たくしてたんだろ」
「……う……あー、こほん。…土曜日、皆でうどんでも食べに行こうか」
「「「はーいっ!」」」
「勿論サラさんも来るっすよね?」
「え?俺は行かねぇよ」
「え、一緒に行きましょうよ!私、サラさんも一緒だと嬉しいです」
「ランまで…ドイ、迷惑だよな?(迷惑だって言えよ)」

「(言いたいことは分かるが、すまない)私は迷惑じゃないから安心してくれ。是非サラにも来て欲しい。山田先生にも声を掛けるつもりだしな」


…こいつ、俺がヤマダセンセに好意を抱いてんの知ってんのか…!火縄銃のことも含めて色々聞きたいと思っていたし、ヤマダセンセには敵意を感じないから好きだ。修練場も教えてくれたしな。…は組の皆は素直に好きだし、別にドイのことも嫌いじゃねぇ。忙しいだろうヤマダセンセとの時間も取れる……まあ、暇だしな。誘ってくれてんだし、甘えても悪くはねぇかもな。
俺が頷けば、は組の皆からやったー!と言う歓声が上がる。まあ、好かれるのは悪い気はしないし、ドイもホッとしてるから良いかな。俺はそんなことを思いながら、今までの分構って貰いたいのかドイに突撃していくは組の皆と、嬉しそうなドイのやり取りを眺めていた。…微笑ましいなぁ…


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