世話焼きな一面

心地良い風を感じながら目を覚ます。2日目は…あまり変わらねぇな。部屋の感じに思わず溜息が出る。…夢だったら良いのに、とは思わねぇけど、元の部屋に帰れたら良いって言う淡い期待はどうしても抱いてしまう。きっと心配してるだろう。誰か来客も来てたみたいだし、今頃騒ぎになってるんだろうな…せめて無事だって伝えられたら良いんだが…伝える手段がねぇよなぁ……誰かこんなことに詳しい人とか居ねぇかな。
そんなことを考えていれば、気配を感じる。来たのは良いが、寝てたらどうしようって感じなのかも知れないな。一向に声を掛けて来ないことに俺は溜息を付いてから、襖を開けた。


「ーーおはよ、カワニシ」
「わあ!?お、おはようございます…起きてたんですね…」
「朝は早いんでな。お、トキトモとイケダとノセも一緒か、おはよ」
「おはようございますー!」
「「…おはようございます…」」
「三郎次!久作!!すみません、サラさん」
「別に良いって。信用出来ないのは当然だしな。皆揃ってどうしたんだ?」
「朝餉の準備を一緒にしたいから来たんですー、迷惑でしたか…?」
「朝餉…朝飯か。迷惑な訳ねぇよ、有り難うなトキトモ。…またお前達なのか?」

「…しょうがないんです。今は人が居ないですから」


悲しそうな表情のまま笑うカワニシの頭を撫で、何処となく寂しそうなトキトモの頭も撫でてやってから、警戒してるイケダとノセの頭も軽く撫でる。びくってなるからやっぱり撫でない方が良いんだろうけど、やっぱり寂しそうなのはほっとけないしな。まあ、嫌がられないから少しは信頼されてんのかな…?


「サラさん、付かぬ事を聞いても良いですか?」
「ん?構わねぇよ」
「…窓を開けたまま寝てませんよね?」
「窓?いや、風が気持ち良いから開けたまま寝てたけど」
「やっぱり!!これからの時期は虫がいっぱいなんですよ!?もうこんなに咬まれてるじゃないですか!」
「あ?あー、だから痒かったのか。こんなもん、ほっといても平気だろ」
「貴女は女性ですよね?!もう少しは気にして下さい!!せっかく綺麗な肌してるんですから…!!」
「わ、悪かったよ…トキトモ、カワニシが怖い」
「サラさんが悪いんだなぁ…寝癖も直さなきゃいけないですねー」
「えー、面倒…「直しますよね?」…はーい」
「……あの、俺で良かったら直します。タカ丸さんには敵わないですけど」

「お、良いの?悪いな、頼むよ」


何かのスイッチが入ったのか、急に口煩く言ってくるカワニシに少し圧倒される。トキトモに助けを求めれば、カワニシの味方をされた上、寝癖を指摘された。面倒だなー、と思っていれば、おずおずとイケダが提案して来た。かなり驚いたが、イケダが歩み寄ってくれてんだし、断わる理由もないので言葉に甘えさせて貰おう。カワニシはびっくりしながらも甘やかすなとか言ってたけど、顔が破顔してんのは気付いてないんだろうな…可愛い奴だ。
部屋に4人を招き入れ、イケダに髪を櫛で梳かして貰う。なかなか手付きが良いな、眠くなりそうだ…


「上手いな、イケダ。凄く気持ち良い」
「…あ、有り難うございます…サラさん、の髪は綺麗ですね。サラサラしてます。タカ丸さんが気に入ると思います」
「はは、有り難うな。タカマルって誰だ?」
「4年の斉藤タカ丸先輩です。髪結いをやってるんですよー、くノ一の人達に人気なんです!」
「へぇー…」
「ただ、髪にはかなり五月蝿いんで気を付けて下さいね。毛先とかバラバラじゃないですか。あまり酷いと毟られますよ」
「…毟る?」

「男女関係ないですからね、気を付けて下さい」


今はドイとタケヤが主なターゲットなんだそうだ。タケヤは確かにボサボサだったが、ドイの髪も傷んでたか…?思わず呟けば、カワニシ達は苦笑いを浮かべる。ああ、暗黙の了解って奴だな、把握した。此処には色んな奴も居るんだなぁ……髪結いってあれか、美容師的な奴だよな?…少しは気を遣うか、毟られたら困るしな。


「あの、この本はどうされたんですか?」
「ん?ああ、それはヨシノセンセが貸してくれたんだよ。分かりやすいからってな」
「へえ…この系統ならいくつか他にもあるんですが、良かったら持って来ましょうか?」
「え、良いのか?助かる。ノセは本に詳しいのか?」
「一応図書委員ですから。他にも何かあれば探しますよ」
「あ、ならヒナワジュウとかの本はないか?火器、だっけか。それを少し調べたくてな」
「火器ですね、分かりました。調べときます」

「ーー田村三木ヱ門先輩が居てくれたら、楽だったんですけどね」


ポツリと影を落としながら呟いたイケダに、笑顔だった2年生達の表情が曇る。聞けば4年生でタキとライバルみたいな関係で、火器にかなり詳しいらしい。へぇ、そいつはかなり惜しいな。接触してみるか。詳しいことを聞きたくて色々聞いてみれば、トキトモ以外の表情が段々苛々してきている。こっそりトキトモに聞けば、カワニシ達は結構やきもちを妬くタイプらしい。可愛いなぁ…


「そういや、おばちゃんの手伝いの時間はまだ平気か?」
「あ!?い、いけない!早く行かないと…サラさんがいけないんですからね!」
「本当に女性なんですか?」
「おい、三郎次!すみません、サラさん」
「気にしてねぇよ、ノセ。悪いなー、これでも女なんだよ、イケダ。見えなくて悪いな」
「サラさんは女性ですよー?柔らかいですもん」
「「「ぶっ…四郎兵衛!?」」」
「きゃー、とか言った方が良いか?」
「サラさんには似合わないですよー」

「はは、そりゃそうだ」


なかなか失礼なことを言われたが、トキトモに悪意がないのは分かってるし、真実だから小突く程度で許してやろう。カワニシとイケダとノセは顔を真っ赤にしながら明後日の方を向いている。純情だなー、この時代は結婚早いみたいなのにこんなんで大丈夫なのか?まあ、可愛いらしいから良いかな。逆にこの歳から性に敏感でも困るし。
俺はくすりと笑みを零してから、カワニシ達の背中を叩き、正気に戻させてからおばちゃんの手伝いをする為に食堂に向かう。おばちゃん、怒ってないと良いけどなぁ…

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