説明してくれ
突然だが、助けて欲しい。割りとマジで。何が何だか全く分からない。……ああ、まず自己紹介と覚えてる限りの記憶でも話して冷静になろう。取り乱すな、戦場だと思え。……ふう。
まず、俺はサラ・クローズという。ロイ……まあ、俺の上司なんだが。そいつにそいつの仕事を押し付けられ、文句を言おうと向かっていたはずなんだが……
「……此処は何処だ?」
鼻に意識を集中してみれば、森、と言うか自然の匂いが充満している。……俺はいつ、森に移動したんだ?俺がさっきまで居た場所は確かに中央司令部だった筈だ。仮眠室で寝ていたし、間違いはない。部下に起こされて、ロイに仕事を押し付けられたと聞かされ、文句を言おうと部下を従えて、ロイの部屋の扉を開けた、筈、だよな……?
「……古いな、辺りが木材だらけだ。ロイの火力があればすぐに真っ赤に染まるな」
ドッキリ、と言う訳ではなさそうだ。俺をハメる理由がねぇし。ドッキリだったら、仕掛けたやつに死なない程度の毒でも盛ってやるか。それをカメラに収めて、一生コキ使ってやる。……まあ、今の中央にこんな手の込んだドッキリを仕掛けられるほどの余裕がある奴は居ない筈だから、ドッキリではないだろう。だとしたら、これはなんだ?夢オチか?それともーー……
「……神隠し、か」
多分、いや、絶対に夢ではない。俺としては夢であることを願いたいが、何より夢でないことを思い知らされる存在が此処にある。左手を動かそうとすれば、聞こえるのは金属音。どうやら捕まっているようだ。チラリと目線を移せば、柱に巻き付いている手錠。その手錠は俺の左手と右足の自由を奪っていた。まあ、この程度なら簡単に引きちぎれるが、今は情報が欲しい。銃も奪われたみたいだし、今は変に動かねえ方が利口だろう。……見張られてるし。
バレてないつもりなんだろうか、だとしたらお粗末過ぎる。まだガキ、だな。見張るつもりなら、殺気くらい隠せ。
「……なあ、此処は何処だ?」
「無視すんなよ。てめぇに言ってんだ、天井に居んだろ、殺気が駄々漏れなんだよ。下手くそ」
「……っ!!」
ビンゴ。ガキだし、適当に煽れば出てくるだろうと思って、わざと煽ればカチンと来たのか、目の前に人が降って来る。整っている顔を思い切り歪め、俺を睨み付けるそいつは、紫色の服を身に纏っていた。やっぱりガキだな、顔が幼い。それに、無駄にプライドが高そうだ。そんな分析をしていると、俺の目の前に居る男(だよな?)が口を開いた。
「…………何故…………」
「あん?」
「何故、現れるのですか……!」
「……はあ?」
「これ以上、学園を乱すな!私の……私達の先輩と級友を返せ!!」
……単なる逆恨みだな、これは。キッと睨まれつつ、俺は小さく溜め息を付く。面倒だな、これ。手錠は引きちぎれる。このまま黙っていても良いが、多分こいつは黙っていれば一発喰らわして来るだろう。痛くはないだろうが、逆恨みで殴られるのは釈然としない。寧ろ、此方としては目が覚めたらいきなり監禁されてるんだ。……黙っている必要、ないよな?
「俺が何したってんだ?」
「な……っ!」
「俺個人は何もしてねぇよな?単なる逆恨みだろ、それ。そういうのは当事者に言えよ。第三者を巻き込むんじゃねえ」
「何を偉そうに……!!確かに貴方は何もしていない……が!!元はと言えば貴方も含めた"天女"のせいではないか!!」
「……天女?」
「行く場所がない?頼れる人もいない?だからと言ってそんな奴に先輩を奪い、友を堕落させ、後輩を傷付ける権利がある訳ないだろう!!」
「ーーー……それくらいにしろ、滝夜叉丸」
ヒュッ、と言う音と共に、黒い服の男が俺に掴み掛かっていた男を俺から引き離す。止めると言うよりは、関わらせたくない、みたいな気持ちが強いようだ。宥めるように背中を撫でながらも、俺を見る目は冷たい。隠しているみたいだが、殺気には敏感なんでね。
ーまあ、漸く状況が分かりそうだ。俺はそんなことを思いながら、気付かれないように笑みを零した。
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