豆腐パーティーと仲直り

ククチの豆腐フルコースを食べさせて貰える日になり、ククチとダイサンキョウエイマルさんから許可を得たルイも参戦することになった。ククチが今日を楽しみにしてたみたいですよ、とくすくす笑いながらフワが教えてくれた。可愛い過ぎないか?まあ、自分の好物を食べて貰えるのは嬉しいよな。厨房に立つククチの後ろ姿をルイと共に眺める。どんどん量産されてくな…腹を減らした甲斐がありそうだ。ククチの横でハチヤとオハマがストップを掛けてはいるが、多分あれは聞いちゃいねぇだろうな。自分の世界に入ってるんだろうなあ…


「…サラ殿、どんどん増えていきますな…」
「そうだなあ、30品くらいはあるんじゃないか?」
「食べ甲斐がありますな!吾輩、あんなに豆腐メニューがあるとは知りませんでした」
「俺も知らなかった。まあ、豆腐は万能だからなあ…楽しみだな」
「ええ、とても」
「聞いたところによると豆腐も手作りらしいぞ。豆や水から拘ってるらしい」
「何と…!それは余計楽しみですなあ」

「喜んで貰えてるようで何よりだよ」


ニコニコの弟子が可愛い。ルイは嬉しそうに食うからなあ、いっぱいお食べってなるんだよな。きっとククチのハートを射抜くことだろう。お袋も良く作ってはルイくんに持ってて!って言ってたからなあ…料理を好んでいる奴等にとっては最高の奴だと断言出来る。美味い、って欠かさず言ってくれるし、舌が肥えてるからかちょっとしたアレンジにも気付いてくれるからなあ…料理に自信がないって奴がいたら紹介してやりたいくらいだ。きっと自信を持てるだろうからな。


「ーーお待たせしました」
「兵助ーー!!作り過ぎだって言ってるだろう!?いつもより多いじゃないか!!」
「何でこんなに作るの…?俺達も食うのに…」
「?三郎と勘ちゃんも食べるから沢山作ったのだ」
「私達のせいか!?…申し訳ありません」
「ん?別に構わねぇよ、多分イケるし。なあ?」
「ええ、とても美味しそうですな」
「…サラさんもルイさんも凄いなあ…無理はしないでね?」
「自分の食べれる量くらい把握してるさ。んじゃ、頂くぜ?」
「召し上がれ」

「「「「頂きます」」」」


俺とルイは意気揚々に、ハチヤとオハマは心なしか辛そうな声で言いながら箸を伸ばす。まずは豆腐サラダからにするかな、野菜は大事だし。…うめえなあ、何よりも豆腐が美味い。甘めの豆を使ってるのか、優しい甘さが野菜を引き立てている気がするな。豆腐ハンバーグはサラダとは違う豆腐を使ってるのか、なかなかに肉肉しく歯応えがある。…どれを食べても美味いな。


「…ククチは本当に豆腐料理が美味いんだな。美味しいよ、ククチ」
「!本当ですか!?」
「おう。豆腐も一つ一つ味が違ってて良いな、店で売ってたら毎日買いたいくらいだ」
「え、う、嬉しいです…有り難うございます、へへ」
「とても美味しいですなあ、箸が止まりません。ククチ殿の料理を食べれる方は羨ましいですな」
「ルイ、これも美味いぞ」
「有り難うございます、サラ殿。ん…これもとても美味しいですな!」
「あ、有り難うございます…!」
「…何かへーすけ、腕上げてない?いつも美味しいけど、いつもより美味しい気がする」
「私もそう思う、何か作り方を変えたのか?」
「いや…?特に何もしてないのだ」
「ーー愛情だろ」
「「「え」」」

「俺やルイは勿論、ハチヤとオハマが食べるから張り切りたいと思ったんだろうよ。料理に愛情は欠かせないからな」


愛されてるな。そう言いながら豆腐ステーキを口に放り込む。んー、これも美味いな。量が少し多いのは気にはなるが、食べ切れないって程ではない気がするが…何が問題なんだろうなあ…育ち盛りなんだし、俺やルイよりも良く食う筈だ。…考えられるとしたら、ククチの隠し味である愛情の入れ過ぎ、とかか?それはそれで不憫な気もするな…そんなことを考えながらチラッとククチ達の表情を盗み見れば、彼等は照れ臭そうに笑っていた。うん、ぎこちない雰囲気も少しはどうにかなりそうだな。


「兵助も食べなよ。俺はこの豆腐ハンバーグが好きだな」
「私はこのサラダが好きだ。…また、作ってくれるか?」
「!も、勿論なのだ!今からでも…「今は食え」んむっ!?」
「私達ばかりじゃなくてお前も食えよ。…寂しいだろ」
「食べさせてあげるよ、兵助!」
「か、勘ちゃん一口がでかいのだ…!?」
「兵助をお前と一緒にするなよ、勘右衛門」
「え〜?これくらい大丈夫だって!」
「…良かったですなあ、サラ殿。これを狙っていたのでしょう?」
「あー…フワとタケヤが気にしてたからな、どうにかしてやりたかっただけだよ」
「…そうでしたか。彼等は優しいのですね」
「皆優しいよ。…悪いのは彼奴等じゃない、天女って呼ばれている奴だ」
「サラ殿」

「…悔しいよなあ、殴ってやりたかった。…悪いことなんて、一切してないのにな」


同じ学び舎で、同じ釜の飯を食い、同室だっているこの暖かい場所で、共に切磋琢磨していただけなのに。自分を巡って争わせることの何が楽しいのか理解に困る。…まあ、したくなんかないがな。ぎこちなさは残るものの、じゃれあっているハチヤ達を遠目から安心したように見つめているフワとタケヤに付き添っているハマ。ハチヤとオハマとククチは天女と相性が非常に悪かったらしく、何度も何度も魅了されては争い合ったらしい。俺が来てからは少しは落ち着いたものの、互いに傷付けた記憶が消せなかったのだろうな。一緒に居るはずなのに、一緒に居ないみたいだと呟いていたフワとタケヤが放っておけなかったんだ。…まあ、この調子でいければ何とかなるだろうな。チラッとテーブルに並ぶ料理達を見る。…ま、3人くらいなら余裕だろう。


「ーーじゃれあってるとこ悪いが、あと3人ほど呼びたいんだが構わないか?」
「じゃれあってません!3人、ですか?別に構いませんけど…足りるかな…」
「じゃれあってないよ!!足りるんじゃない?」
「じゃれあってないです。…もしかしてその3人って…」
「おや、ハチヤ殿は察しが良いのですな」
「ま、想像の通りだと思うが…まだ、気まずいか?」
「、…許して、貰えますかね」
「…そもそも、これを依頼して来たのはお前が気にしてる2人だと言ったら、ハチヤはどうする?」
「え!?」
「…ハチと、雷蔵?」
「…そんなことって、有り得るのかな…俺達、あの2人にいっぱいいっぱい…酷いこと、したのに」
「…それを本人の意思でやった訳ではないと、彼等はちゃんと理解してますよ」
「…そっか、やっぱり2人は優しいんだなぁ…」
「ーーま、そういうことだからハマ、頼んだぞ!」
「はいはーい!さ、行きますよ先輩方!」
「うわ、ちょっと浜!?」
「押すな押すな!!」
「「「!雷蔵!ハチ!」」」

「ハマは既に買収済みだ。遠目で見るだけなんて俺が許す訳ないだろ?」


お前達は何も悪くないんだから。そう言えば、ずっと我慢して来たのであろうタケヤとフワの涙腺が緩む。それを見たククチとハチヤとオハマの涙腺も緩み…隠すように、団子みたいにくっ付いた。隠さなくても良いとは思うが…まあ、恥ずかしいのかも知れないから放っといてやろうか。そんなことを思いつつ、タケヤとフワに付き添ってくれていたハマにそっと箸を渡せば、嬉しそうに笑う。可愛いな…


「有り難うございます、サラさん!久々知先輩の豆腐料理大好きなんですよね!」
「そいつは良かった。ハマも巻き込んで悪いな」
「サラさんの為なら大丈夫ですよ!ま、何回か背中を押したくなりましたけどね…焦ったくて…我慢しましたけど」
「それはそれは大変でしたなあ。ささ、この冷奴はさっぱりしていて美味ですぞ」
「わっ、有り難うございまーす!…まあ、大変な時に学園に居なかった俺が口出しするのは憚られますからね…せめて学園には居たかったなあ…滝夜叉丸に背負わせ過ぎましたね…」
「なあに、学園外に居たお前だからこそ出来ることがあるさ。今回だってタケヤとフワに警戒されなかっただろ?」
「またまたー!それはサラさんが竹谷先輩と不破先輩に話を通してくれてたんでしょう?」
「俺は何も言ってないが?」
「え」
「タケヤ殿とフワ殿に話を持ちかけられたサラ殿は、誰かに付き添いを頼みますか、と聞いてはおりましたが人選はサラ殿ですよ」
「え、何で…俺、学園に居られなかったのに…」

「だからこそ、だよ。お前くらいしか居ないだろ?公平な目でちゃんと見てやれるのは」


仲良しだったらしい5年生を良く知る人には頼みたくなかったんだ。こいつらのペースを無視してぶっ込んで来そうだったし。これは最初に天女に惑わされ傷付けあったククチとハチヤとオハマの仲を修繕するのが最優先なのに、そこにタケヤとフワを投入するのは話が拗れる原因にもなりかねん。だからこそ、一歩引いた所から背中を押せるハマの存在がかなり大切だったんだ。天女の影響が全くないハマだからこそ、俺はこの策を使った。


「ハマ、お前がいなければ俺の策は成り立たなかったんだ。感謝するよ、巻き込まれてくれて有り難うな」
「っ〜〜、サラさんって本当に狡いですね…!」
「ガキは我慢せずに甘えとけってことだな。…少しは気が晴れそうか?」
「そりゃもう…!晴天なみに晴れましたよ!」
「それは僥倖」
「はっはっは、サラ殿は相変わらず罪深き存在ですなあ。…いつからハマ殿が悩んでいると気付いたのですかな?」
「罪深い…?んあ?そんなの初対面の時からに決まってんだろ」
「え…?」
「相変わらず聡いですなあ…」

「誰だって大切な学舎が大変だった時に居れなかったのは引きずるだろ」


側に居たかったに決まってる。そう言ってから豆乳スープを一口飲む。んー、これも美味い。調味料の分量が最高だな…このレシピ教えて貰うか…いや、でもまた作って貰うのもありかもな。ククチは披露するの好きみたいだし、また頼むか。行儀は悪いがスプーンを加えながらそう思案しつつ、ポムポムとハマの頭を撫でる。ルイに行儀が悪いと目で叱られてはいるが、まあ見逃してくれ。


「側に居ることすら許されなかったのは歯痒かったろ。…良く我慢したな」
「ふ〜〜…サラさん、本当狡いですね…」
「…俺も同じ経験があるからな。その場に立ち会うことすら出来ないのは辛いよなあ…戦力外通告されるよりよっぽど堪える。何が悪かったのかって恨んじゃうよな」
「…サラ殿…」
「だからといって誰かに話す訳にもいかねぇし、自分で消化するしかない。苦しかったよなあ…でも、当事者じゃねぇから泣き言は言えなかったよな」
「、や、やめて下さいよ…俺まで泣きそうだ…」
「泣かせようとしてんだよ、大人しく泣け」
「酷い大人ですね…!」
「そうだろうな。…ま、俺やルイじゃ泣き付けないだろうし……2回目は予想してなかったろ?」
「は?何い…「守一郎くん、気付けなくてごめんねー!」わっ、タカ丸さん!?」
「水臭いじゃないか!バカ守一郎!」
「…滝ちゃんもだけど、言葉が足りないよ。言ってくれれば良かったのに…」
「五月蝿いぞ喜八郎。…すまなかった、守一郎。お前が苦しくない訳ないのに気付けなくてすまなかった…」
「三木ヱ門に喜八郎に滝夜叉丸まで…!サラさん…!」
「言っただろ、経験があるって。俺の場合はルイが来てくれたから助かったんだ。荷を降ろしても良いんだぜ?」
「…あの頃のサラ殿は見てられませんでしたからなあ…」

「それを思い出すなよ、ルイ。今は平気なんだから」


まあ、完全に吹っ切れた訳ではないけどな。それでも、あの頃よりかは落ち着いてる筈だ。こういう時、人間は1人じゃ生けてないって実感するよな。戻せない過去を永遠と後悔するんだから。もう何も出来ないのに、な。まあ、これでハマも少しは気が晴れるだろう。揉みくちゃにもなるだろうしな。わちゃわちゃとしている団子2つを見ながら、俺とルイはそっと微笑み合う。


「良かったですな、サラ殿」
「ああ…本当に、な」


失う前で、良かった。ーー親父、セリム。今回は俺…間に合ったよ。良くやった、って褒めてくれるかな…ってガキっぽいか。でもまあ、これで気まずさがなくなる筈だし、少しはプラスになったよな、きっと。ただちょっと道を間違えただけなんだ、修正なんていくらでも出来る。本格的に殺り合う前で本当に良かった。

…これ以上は、こいつらに関わらないでくれよな、カミサマ?
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