未来の話のつもりだった
※ネタバレ要素含みます
ーー何がどうしてこうなった?
ぴちぴちと小鳥の囀りと優しい日差しを浴びてゆっくりと意識を覚醒させていく。結構お日様上がってるな??寝過ぎたな??そんなことを考えながら起き上がろうとしーー…腰に物凄い痛みが走り、堪らず私は布団に戻ることになる。
「いっっっった??!えっ、何こ………ぁ」
あまりの痛さに涙目になりつつ、何となくに腰を摩れば、その撫で方に何故か身体が疼きーー…夜の営みが、私の脳裏を一気に駆け巡る。とんでもない痴態を見せたのでは…??バッと凌統様が居るであろう場所に目を向ければ、そこには惜しみもなく色気を曝け出しながら寝息を立てている凌統様が居て、思わずひゅ、と変な声が漏れる。身体は腰が怠い以外何の問題もないし、びしょびしょにしてしまった布団もふかふかでお日様の匂いもする。色々やらせてしまった…?え、土下座しなきゃ…
「…ん、卯琅?起きたのか」
「あああああの!えっと!!…ご迷惑を、お掛けしました…!」
「何で土下座すんの、俺も止まらなかったし気にすんなって。ほーら、腰に響くから寝てなさいって」
「うう…凌統様が優しすぎる…」
「卯琅限定だけどな」
「…あう…嬉しい、です」
「…なあ、卯琅。シてる時は敬語じゃないんだし、そろそろ外してくれないか?」
「えっ、あ、でも、あの…」
「出来たら様付けもやめてくれたら嬉しい。凌統♡って呼んでくれて良いんだぜ?」
「…情事を思い出しちゃう、かも」
「濡れちゃう?」
「っ〜〜!!皆まで言わないで!!」
「はは、顔真っ赤」
くすくすと笑いながら私の頭をポンポンと優しく撫でて来る。凌統、様、…だけが余裕なのが少しばかり悔しくてちょっぴり拗ねていれば、それを察したのか凌統様に優しく抱き締められ「俺の鼓動、聞こえる?卯琅と話してる時、いつもこうなんだよな」、なんて言われてしまった。…そんなに、嬉しいこと、ある?そっと顔を上げれば優しく微笑んでいる凌統様と目が合い、その目にも私に対する愛情が滲み出ていてーーああ、私は本当に幸せ者だなあ、なんて改めて思い知らされた。こんなに一途に、それも大好きな人に想って貰えるなんてこんな戦いばかりの世界で味わって良いのかな…?手放すつもりなんて、更々ないけどね。
「卯琅、腰は平気か?喉は少し掠れてるな、喋るの辛くないか?」
「腰は少し痛いけど、喉は大丈夫。お水でも飲めばすぐ良くなるよ」
「そっか。…今日はゆっくりしてような。身体を休める日も必要だからな」
「…手は出さないってこと?」
「我慢出来るかは断言出来ないけど一応、な。頼むから煽らないでくれよ?」
「…煽ったことあった?」
「無自覚か?こいつは恐ろしいな…俺で良かったな…俺以外の男が相手なら今頃卯琅喋れてないぞ」
「え」
「俺は何とか耐えれたけど、抱き潰したくて仕方なかったからな。何度も噛み付いたし…痕付いてないか?」
「だ、だきつぶ…!!えっあ、えーっと、言われてみれば首筋がヒリヒリするような…?」
「見せて。……あー、歯形がくっきり…ごめんな、薬塗るからな」
凌統様は私の首を見てまるで自分のことのように顔を歪め、私の頭を撫でてから鞄の方に手を伸ばす。薬まであるのか、凄いなあ…なんて思いながら後ろ姿を眺めていれば、浴衣から一筋の線が見えた。…あんな所に傷があったっけ?はて、と思案して数秒後、私凌統様の背中引っ掻いたよね…??と思い出す。恐る恐る自分の指を見て…少しだけ伸びている爪に血の気が引くような感情に襲われた。
「っ、凌統様!お背中が…!!」
「だから様付けやめろって。背中?ああ、そういえば引っ掻かれたっけ」
「わ、わわわ私!!爪が!!」
「落ち着けって。まあ、確かに少しだけ痛かったけど、引っ掻いて良いって言ったからな。気にすんなって」
「ご、ごめんなさいぃ〜〜っ!!」
「良いって言ってるんだけどなあ…俺に縋ってる卯琅可愛いかったし、ヨがってんのも可愛いかったからな」
「、わ、忘れて…!」
「無理。堕ちた卯琅ほどエロくてやばかったのはなかったな…いつもより出たし気持ち良かった。卯琅も気持ち良かっただろ?」
「っ〜〜!!…えっと、強要して、ごめん…」
「あー…やっぱり覚えてんの。気にしなくても良いよ、掻き出したつもりだし…まあ、仮に孕んでたら降ろさないで産んでくれよ」
「、いいの?」
「当たり前だろ?俺を父親にさせてよ。俺の子供産んで、卯琅」
「ーー…はい、喜んで」
足枷になるんじゃないかって、そう思い込んでいた。凌統、との子供は欲しくて堪らなかったけれど、今が楽しそうな凌統の邪魔になるんじゃないかって、不安だった。でも、私が身籠ることを凌統は望んでくれている。それがこんなにも嬉しいことだなんて…!!凌統に似て凛々しくも可愛い美人さんになるのかな、私みたいな性格にならないと良いな、なんて想像していた私は、私の返答と嬉しさに満ち溢れた笑顔によって顔を真っ赤にしていた凌統に気付いてすらいなかった。煽ってないからね!?
「(可愛い過ぎやしないか??喜んでって…絶対孕まそ)卯琅、絶対幸せになろうな」
「私、凌統と一緒に居れるだけで幸せだよ?」
「ん゛っ!!!…子供、二人くらい欲しいな」
「え、き、気が早過ぎない…?」
「そんなことないだろ。早めに子供産んで、老後は卯琅とゆっくり田舎で過ごすんだ」
「人生計画まで…!!田舎かあ、良いね。霞月さんに畑作り教わろうかな」
「魯粛さんで良いじゃないか、彼奴に借り作りたくない」
「…凌統って本当に霞月さんと相容れないよね?師匠とか翠青さんとは仲良いのに」
「何か気に入らないんだよな。…普段ぽやっとしてんのに、いざって時の振る舞いには目を見張るものがあるし…才能が羨ましいのかもな」
「…才能、かあー…」
「卯琅の頭の回転だって俺にはないものだからな。…何処にいても心酔してる相手の危険に駆け付けるあの行動力があれば、…親父を助けられたのかなって思うよ」
「…凌統……成程、それを自分の強みだと理解しない霞月さんが嫌なんだ?」
「あー…そうかもな。何で自分を卑下するんだろうなあ、彼奴。だから何も分からない奴等に馬鹿にされるんだよ…」
「こればっかりは私達には何も出来ないねえ…自分で気付いて貰わないとね」
「そうだな……はー、ムカムカする」
「わっ。…凌統は優しいからねえ」
気付いたら布団の中に入り込んでいてぎゅっと抱き締められ、うりうりと肩に頭を押し付けてくる凌統の頭をよしよしと撫で付ける。さりげなく本人に進言するのは分かって貰えなかった場合が悲しいから、師匠に言ってみようかな?まあ、あの人なら既に気付いてそうだけど。師匠も師匠で不穏だし、今のところ平和そうなのは翠青さんだけなんだよなあ…郭嘉殿が行く場所行く場所で出会うから少し怖い、なんて言ってたことくらいかな?あれ、平和じゃないな…?私の周り、不穏な人しか居ないな…?
「卯琅?百面相してどうした?何か気掛かりなことがあったか?」
「…んと、師匠と翠青さんも少し不安だなって」
「…珠華についてはきな臭い噂は聞くけど、翠青は初耳だな。とうとう郭嘉の想いに気付いたか?」
「え、確かに翠青さんが誰にも言ってないのに出掛ける先々で郭嘉さんと遭遇して怖がってるのは知ってたけど、想いって……惚れてるの?」
「…斜め上過ぎる行動してんな……たまに飲み屋で一緒になるんだが、翠青が可愛いくて仕方ないって荀ケに零してるとこ良く見るぜ。ただ、多分近々拗れるだろうな」
「凌統が最近一緒に飲みに行く相手って陸遜さんだよね…?修羅場っぽい…」
「それも勿論あるが、荀ケも気がありそうなんだよな。たまに一緒に来てる満寵も翠青のこと好きみたいだし、結構バチバチだぞ」
「ひぇ…何それこわ…翠青さん本人は気付いてないんでしょ…?」
「気付いてないな。あれほど分かりやすいのに逆に凄いよな。彼女から鍛錬仲間として慕われてる楽進が可哀想になるよ」
「李典さんも風当たり強いみたいなこと嘆いてたかも……その、師匠についてのきな臭い噂って…?」
「…ただの噂だからな?福島とアレスが最近珠華を引き抜こうとしてるんだと」
「ーー…え?」
翠青さんのモテモテっぷりにも驚いたけれど、師匠に忍び寄る二人に思わず思考が真っ白になる。確かに福島さんと師匠は仲が良いけど、別世界から来た人だし…!…アレスとは相性が良くないみたいで顔合わせる度に口喧嘩してたけど、互いに背中を預けられる相手として認識はしてるみたいだし…今考えたら可能性ある話ばかりだな??アレスなんて神様じゃん…!!望めばなんでも叶えちゃいそうな気がしてならない……けれども、このまま蜀に居るよりは、幸せになりそうな気がしなくもなくて…もどかしい。
「…凌統は、その噂どう思う?」
「ん?…あー、少なくとも福島に関してはほぼほぼ真実だとは思ってる。かぐやに聞いてたの見たからな」
「…かぐやさんに?」
「そ。相手の許可さえ得られれば世界を跨ぐことは可能かって。かぐやは難しいけれど不可能ではないって言ってたな」
「…そう。私ね、師匠は蜀から離れた方が良いと思うんだ」
「…へえ、そいつはまた…」
「師匠はさ、劉備様のこと慕ってるじゃない?…でもね、たまーに…本当にたまにだけど、嫉妬してるような目をしてる時があるんだ」
「…嫉妬?あの珠華が劉備に?」
「うん。私も良くは分からない、けど…その目をした後に遠くの方で仲良さげな馬岱さんと馬超さんに手を伸ばそうとして引っ込める、みたいな行動を一回だけ、見たことがあるの。その時の師匠の顔が、…寂しそうで」
「…成程な。じゃあ、さりげなく呂蒙さんに相談してみっか。何とかして珠華を孫呉に引き抜けないかって」
「…信じて、くれるの?」
「可愛い彼女を疑う訳がないだろ?それに、たまに温度差があるのには気付いてたからな」
本当に一瞬だけど、な。そう付け足してからポンポンと私の頭を撫でてぎゅーっと抱き締めてくれた。…師匠は、今何を考えてるんだろう。「ーー卯琅は、幸せになってね」その言葉だけが、もやもやと浮き上がる。私の幸せに、師匠の幸せも含まれているのだと知ったらあの人は、どんな顔をするのかな。…多分、驚いたように目を見開いた後、困ったように笑うんだろうな。想像に容易いな…あまり嬉しくはないけど。
「…もし、子供が産まれたら」
「…うん?」
「…師匠に、名前を付けて貰いたいな」
「それはアリだな。俺も珠華のことは嫌いじゃないし、彼奴が背負ってるの降ろして欲しいしな」
「…協力、してくれる?」
「当たり前だろ?…そう考えたら向こうに戻ったら、とか少し悠長かもな。時間がどれだけあるかなんて分からないんだし」
「そう、だね。師匠が何を危惧してるのか分からないし…すぐには教えてくれないよね…」
「無理だろうな、酒で口が滑るのを狙うのもアリだが……俺が潰れるのが先だな。ま、孫呉に引き抜くのは難しくても、一つだけ今出来ることがあるぜ?それには卯琅の協力が必要不可欠なんだけど…協力してくれるか?」
「わ、私に出来ることなら何でもするよ!」
「…そうか、何でもか。嬉しいな」
「それで、私は何をしたら良いの?師匠に何をしたら良い?」
あの人が危惧している出来事から目を逸らしてくれる可能性が少しでもあるのなら、私はそれに賭けたいと思う。だって私はあの人の一番弟子なんだから!そう決意している私は、凌統の顔を見ながら次の言葉を促す。口走った自分の言葉をもう覚えていなかった私に対し凌統は優しく微笑んだ後、自分の胸元に手を突っ込んで見覚えのある箱を掴んだ後、備え付けのゴミ箱に投げ捨てる。…使い切った、訳じゃ、ない、よね…?少しばかり嫌な予感を覚えつつ見送っていれば、私を抱き締めたままゴロリと寝返りを打ち、私が下になるとーー…凌統はぺろ、と舌を出してから口を開く。
「卯琅は何もしなくて良い、俺が頑張るからな」
「え、と…?」
「子供、欲しいんだもんな?それじゃあスキンなんて要らないよな」
「ーーえ、?」
「いやあ、卯琅から言ってくれて助かったよ。ナカに出した気持ち良さが忘れられなくてスキン使うの少し嫌だったからな。それでもまだ早いよなって思ってたんだが…卯琅から子供欲しいって言われたし、張り切ろうかと思って」
「り、凌統…?す、少し落ち着こ…?今日はシない「あと、4日」…え?」
「今日入れないならあと3日か。3日もあれば仕込むには十分だろ?逃がさないからな」
「ひっ、ま、待って…!」
「たっぷり愛し合おうな、卯琅♡」
あ、詰んだ。
私の上でギラギラと目を輝かせている凌統を見て、私は選択肢を間違えたのだと理解する。私の腰は持つかな…多分持たないだろうな…1週間くらい使い物にならなくなりそう…文官で良かった…そんなことを考えながら頭上から降ってくる口付けの雨に応えつつ、嫌じゃないと思っている私と、ずくん、と疼いてしまった下半身にはしたない、と思いながらそっと目を閉じるのだったーー……
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