改めて宜しく

朝餉も食べ終わり、皆でお茶を飲んでのんびりする。鳴狐の作ったデザートは美味しかった。黄色だったから油揚げをイメージしたんだろう。小狐丸とこんのすけが嬉しそうに食べていたのが見ていて癒された。宗三はずっとあーんをしてくれていた。宗三もちゃんと食べているか?と聞いたら、あーんして下さいと頼まれたので小夜と交代しながらやったら卒倒した。…やり過ぎたらしい。まあ、私も小夜にあーんされたら倒れない自信はない。小夜は本当に可愛い。さっきから私の尻尾が気になるらしく、目線だけ追い掛けて来る。可愛いなぁ、本当。江雪も表情がゆるゆるだ。まあ、分からなくもないけどな。私は美しさと可愛いさを兼ね備えているし…なんてな。恐らくは小夜パワーだろうな、うん。
ふと匂いを感じ、顔を上げればするりと髪を撫でられ、梳かれた。…相変わらず心配性だな。


「…すっかり塞がっているな」
「だから言っただろう?あれくらい平気だと」
「うむ…まあ、それでも俺が怪我させたのは事実だからなぁ…よし、俺も罰を受けよう。ジジイは何をしたら良い?」
「…何で皆は罰を受けたがるんだ?いじられるの好きなのか?私はいじるの好きじゃないんだがな…」
「決まっているだろう、女神だからだ。俺達を救ってくれた恩人に刃を向けた…それは許されないことだからなぁ…俺は傷付けてしまったから余計にな。さあ、俺は何をしたら良い?」
「んー……1日だけ絶対にモフっちゃいけないとか?」
「あなや……それは……辛いなぁ……」
「そんなに泣きそうな顔をするなよ、冗談だから。…小夜、何が良いと思う?」
「僕…?…昼餉のおかず二品取る、とか」
「ほー。それならどうだ?」
「今日の昼餉の当番は国広達だったな……なかなかに惜しいが、モフモフを禁止されるよりかはマシだなぁ。それで構わないぞ。そら、岩融も罰を受けたらどうだ?」
「ん!?俺は既に石切丸と小狐丸から説教を食らってるからなぁ…そんな俺に更なる罰を与えるのか、女神よ」
「岩融は私を抱き上げるの禁止で。出来たら一週間くらい」
「長いな!?」
「…許可なく姉様に触るのはセクハラですよ…」
「ほう、そんなことをしていたのか?どれ…ジジイもしてみるかな」
「は?三日月、何言っ…「はっはっは、これは軽いなぁ」っ、お前もか!!降ろせっ!」
「三日月!?めがみさまになにをしてるんですか!!おろしてください!!」

「ーー…何でこんなに抱き上げるのが好きなんだろうなぁ、この本丸は」


小さく溜息を付き、一瞬ーーほんの一瞬だけ妖気を放ち、三日月に隙が出来たのを見逃さずに、たんっと三日月の腕を軽く蹴り、宙を飛んで江雪の膝の上にすっぽり収まる。どうしましたか?と髪を撫でられながら聞かれた言葉に、ジジイ達が抱き上げて来るから逃げて来たと告げれば、貴女は構われやすいのですね、とくすくす笑われた。…何で構われやすいんだろうな、からかいやすいのか?
ふと、何人か自室に戻ろうとしてるのに気付き、私はちょっと良いか、話があるんだが。と声を掛ければ、先陣を切っていた伽羅が不思議そうな表情を浮かべる。ーー大丈夫、言える。


「どうした女神、特別事項か?」
「あー……まあ、特別だな。…審神者の話についての話なんだが」
「おや、…決めたのかな?」
「ん、石切丸には世話になったな」
「いいや、私は何もしてないよ。…全てを話すのかい?」
「ん。……結構アレな話だし、聞きたくないなら聞かなくても構わない。ただし、もう2度は言わないつもりだ。…いい話でもないしな」
「…アンタがそこまで覚悟してるんだ。聞かない訳がないだろ。……ゆっくりで良い」
「…有り難うな、伽羅。…江雪兄、手を握って貰っても良いか?」
「勿論ですよ…頑張って下さいね」
「そこまで気にする必要ないと思うんですけどねぇ、あ、右手は僕が握りますね」
「え、じゃあ僕はどうしよう……膝の上に座ろうかな」

「宗兄も有り難うな。小夜、おいで。……あー、何処から話すかな……」


江雪に左手を、宗三に右手を握って貰い、小夜の体温を感じながら私は口を開く。石切丸と蜻蛉切に話した内容と変わりはあまりない。…まあ、私が鬼蜘蛛に惹かれてるってのは省いたけどな。自覚ないし…これを省いても別に遜色はないだろう。…多分。石切丸と蜻蛉切も異論はないようだし、このままでいこう。


「ーーと言う感じだ。…そんな私に審神者になる資格がないと思ってた。まあ、今も思ってはいるが……そんな私に、君が審神者になってくれたら助かると言ってくれた刀剣が居たんだ。…嬉しいことに忠誠を誓われた。私にそんな資格はない。…だが、君達が私を信じてくれるなら、許して貰えるならーー審神者に、君達の主となり君達を守らせて貰いたい。…無理、だろうか」
「めがみさまっ!もちろんだいかんげいですよ!!めがみさまがあるじさまになるなんてすばらしいです!」
「ぼ、僕も賛成です…!!女神様は初対面にも関わらず僕の傷を癒してくれたり、皆を助けたりしてくれました……嫌な訳ありません!」
「今剣も五虎退も有り難う…あー、私は生活能力がない。料理なんて壊滅的に出来ない。掃除もあまり得意ではないし…迷惑しか掛けないと思う。それでも、構わないだろうか…?」
「料理なら僕に任せて。他にも料理上手は居るし、問題ないよ」
「有り難うな、光忠。先程も話したがアルビノは特別でな、高く売れる。一生遊んで暮らせるそうだ。それから逃げ回っていたからなぁ…食事も掃除も二の次だったから、な」
「女神様の部屋の掃除ならこの俺が致しましょう…!貴女を売らせるなど、させる訳がありません。…圧し切りますよ」
「寧ろ指一本触れさせませんよ。僕達の可愛い妹なんですから」
「だから女神様あんなに軽いんだなー、短刀達でも抱えられるんじゃないか?厚とか!」
「貞坊も短刀だからな。まあ、きみが主になるのに反対する奴なんざ居ないと思うぞ?きみは皆を助けてくれたからな!そんな事情を知らない人間が審神者になるよりかはマシだ!」
「女神様ーっ!私は嬉しいです!!直ちに政府と連絡を取りますね!!」
「間に合いそうか?」
「はい?」

「既に手配されてるんだろ?長谷部と蜂須賀が必死になってたのもそれがあるから…だよな?」


私の言葉に、こんのすけと長谷部と蜂須賀は互いに見遣る。お前が話したのか、みたいな顔をしているが、その反応で私の言葉が真実だと伝わってしまうぞ?互いが話してないのを理解した二振りと1匹は私を不思議そうに見つめてくる。色々思う所はあったが、決定打は浦島だな。蜂須賀は普段こんなことをしないーーつまり、何かしら事情があるということ。それと、こんのすけが話していた審神者の派遣ーーこれらを繋ぎ合わせただけだが、正解だったみたいだな?と笑いながら言えば、蜂須賀は浦島に飛び付かれていて、長谷部は宗三にビンタされていた。話せよ、ってことなんだよな…?因みに私の空いた右手は小夜が握っていた。…ちゃっかりしてるなぁ…


「…女神様はそれを分かっていたから審神者になるのを決心したのかい?」
「違う、かな。…まあ、どんな人の子が審神者になるか分からないってのは不安ではあったが…実は歌仙達のこと大好きみたいなんでな。自分でも驚いたが…何処の誰とも分からん奴に歌仙達を任せるのは気に入らない。ただの我侭だよ、こんな我侭は嫌か?」
「んんっ…!!嫌な訳ないじゃないか!!雅な主なんて大歓迎だよ!!衣服も僕が繕ってあげよう、文系だからね!!」
「意味分からん。…まあ、有り難うな歌仙。期待してる」
「っ…!!任せて!!」
「それで?間に合いそうか?」
「勿論でございます!!すぐに手配しますのでーー宜しくお願いしますね、主様!」

「ーーこちらこそ宜しく、こんのすけ。皆もーー宜しく。守らせてくれ、君達の笑顔が好きだからな」


こんのすけを撫でてから笑みを浮かべながら言えば、小夜と五虎退と今剣に突撃された。後ろに倒れそうになれば、江雪と宗三に抱き止められる。…宗三、いつ戻って来たんだ…?長谷部の方を見れば、ほっぺは真っ赤になっていて、薬研に治療されていた。…やり過ぎだろ、宗三…思わず苦笑いを零せば、頭を乱暴に撫でられたので、尻尾でビンタする。匂いで分かるぞ、岩融め。不服そうな岩融を素晴らしい笑顔を浮かべている小狐丸が連れ出し、蜻蛉切に再び忠誠を誓われる。…律儀だなぁ。
本当にすぐ連絡したらしく、こんのすけが許可が出ました!と叫べば、皆が皆嬉しそうに笑う。私もホッと安堵の溜息を付きーー小夜達を抱き締める。少しでも癒してあげられるようにーーそう願いながら、私は目を閉じた。


(この本丸で女性審神者は初めてらしい)
(妖怪も初めてだろうし、初めてだらけだな)
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