書類整理と願い

政府から許可も降り、無事に審神者になった。今日の夕餉は宴会になるらしい。祭り事が好きな愛染と酒が好きな次郎に感謝されたのは記憶に新しい。特に次郎に引っ付かれたのはそうそう忘れそうにないな…太郎が引っ張ってくれなかったら今も私に引っ付いていたんだろうな…思わず渇いた笑みを零してしまう。こんのすけから早速お仕事しましょう!まずは近侍を決めて下さいと言われ、近侍って何だ?って聞く前に、私は左文字に連れ去られた。長谷部にはちゃんと休むように言ったし、光忠が見ていてくれるみたいだから大丈夫だろう。
今、使わせて貰ってる部屋が仕事部屋兼寝室なんだそうだ。どうやら2部屋が繋がっているそうだ。審神者ってかなり優遇されてるんだな…


「薺、近侍は決めなくて良いですからね」
「江雪兄、私は近侍の意味を知らないんだが…決めなくて良いのか?」
「知らなくても決めなくても良いんです。僕達が全部教えますから」
「宗兄まで…小夜も同意見か?」
「…姉様が他の一振り達と仲良くしたいなら止めないけど、出来れば僕達が教えたいかな……姉様は嫌?」
「…嫌な訳ないだろ。私も多分、一番信頼してるのは左文字だろうからな…一緒に居て楽、と言うか、落ち着くと言うか…」
「「薺…!!」」
「姉様…!」

「桜舞わせるな!掃除が大変だろ!?私は苦手なんだ!」


少し照れつつも本心を伝えれば、彼等は桜を舞わせる。先に舞わせるって一言言ってくれよ、びっくりするから…!謝罪しつつ掃除しだす左文字に溜息を付きながら、壁に寄り掛かかる。手伝いとかはしない、…寧ろ邪魔してしまうからな…楓に叱られた記憶が思い出される…少しくらい自分のこと何とか出来ないだろうか…因みに五虎退は信頼よりかは愛でたいって気持ちが強い。何だかんだ言って、私を裏切らないのは五虎退だろうからな…左文字もだけど。
掃除も終わらし、部屋に向かう。そう言えば書類がどうこう言ってたなぁ、とか思いながら襖を開けーー絶句した。


「……沢山、だなぁ……」
「……まあ、以前の主は洗脳されてから仕事してませんでしたから…」
「書類整理は長谷部がやってたんですけどねぇ、主しか書けない書類とかが積み重なった結果ですね」
「こんのすけが政府に叱られてたのを何回か見たことあるよ……可哀想だった」
「こんのすけが?……まあ、一応私も審神者なんだし、審神者限定の書類を片付けるかな…期日が近いのを優先させるか。何処を見れば良いんだ?」
「書類の此処を見れば大体分かりますが……まずは仕分けした方が良いかも知れませんね…」
「過ぎてるのが大半ですからねぇ、骨が折れそうです」
「…復讐しなければならないものはあるかな…」

「(復習…?小夜は偉いな)…まずは仕分けからか。先が思いやられるな…」


苦笑しつつ、4人で仕分け作業を開始する。書類整理ぐらいなら出来ると思っていたが……まあ、整理整頓が出来ない人が出来る筈ないよな。結果的に宗三から禁止令を出された。江雪も小夜も優しい言葉を(勿論宗三も)掛けてくれたが、内心穏やかじゃないのは分かっていたし、大人しく引き下がる。仕分けが出来た奴からサインしてくれと頼まれたので、そうすることにする。よく見ておかないとな…
結果的に期限切れの書類が多くを占めていた様で、書類整理は簡単に終わってしまった。
審神者活動について詳しく聞いてみる。ふぅん、刀装作るのも仕事なのか。消耗品らしいな…


「資源は何処を見れば良いんだ?」
「…画面の上に書いてあるこれですね。無駄に溜め込んでいたみたいですし、暫くは遠慮なく使えますね…」
「ほー、沢山あるな。この鍛刀ってのは何だ?」
「ああ、それは薺には関係ない話ですよ。これは無視しましょうね。内番についての説明は大丈夫ですか?」
「ああ、それは大丈夫だ。こんのすけの説明が詳しかったしな…また何かあれば聞くよ。小夜が前に言っては出陣は何処なんだ?」
「…覚えてたの?」
「?弟の言葉を忘れる訳ないだろ?そんなに前でもないしな」
「…姉様、大好き…」
「ん?私も大好きだよ、小夜」
「……これが、和睦です……」
「…妹と弟が可愛いくて僕は満足です…出陣は此処ですよ」
「あ、此処か。…遠征は何となく分かるが演練って何だ?」
「他の本丸の我々と戦うことが出来ます。争いは嫌いですが…薺が言うなら斬って来ましょう」
「遠征は資材集めに効果的ですけど…今は必要ないですからねぇ…」
「沢山あるもんな、少なくなって来たら考えるか……ん?この出陣の端っこにあるモヤモヤしたのは何だ?」
「ーーああ、検非違使だね。強いよ、負けないけどね…」

「検非違使って過去への干渉・遡及自体を許さない連中だよな?……全部の合戦場に居る気がするのは気のせいか?」


私の言葉に、左文字は一斉に視線を逸らす。…誰か嘘だと言ってくれよ、マジで…検非違使は一度出現してしまうと消すことが出来ないらしい。前の主は何を考えてたんだ…?検非違使討伐すると経験値が多く貰えるらしい。…その為だけに、全ステージ検非違使だらけにするとか有り得ないだろ…だからあんなに傷だらけだったんだな、五虎退…後で思いきり撫でてやろう。そう決心していた私は気付かなかった。江雪と宗三が意味深に目配せをし、小夜が申し訳なさそうな顔をしていたのをーー。
他のメニューも見てみようと言うことになり、他にもクリックしてみる。…使い難いな、このパソコンとやらは。人の子は凄いな……かごめに聞いてみるか。


「任務って色々あるんだな……ん?鍛刀はさっき見たが、刀解って…不要な刀…?そんなのある訳ないだろ、する訳ない」
「んんっ。…はあ、薺が可愛い過ぎます……出陣すると稀に仲間を見付けることが出来るんですよ」
「仲間を?へぇ……あ、それで江雪兄と宗三が来たんだな!」
「うん、そうだよ。一期さんもそうだったかな…江雪兄様は滅多に来ないから…大変だった」
「その節は迷惑を掛けましたね、小夜…親玉を倒せば確実に仲間を見付けることが出来ますが、既にいる仲間だとややこしいので、刀解するんですよ」
「へぇ……左文字だったら刀解したくないなぁ……」
「「(薺が可愛い過ぎて辛い…)」」
「…僕も?」
「当たり前だろ。大事な弟……んー、でも小夜は小夜だけで良いかな…私の弟は此処に居るし」
「姉様…!…僕も、僕以外の僕が姉様に可愛いがられるのは嫌…」
「…じゃあ、違う小夜には悪いけど刀解だな」
「…和睦はやっぱり素晴らしいです…」
「はぁー…何なんですか、薺も小夜も僕達を殺したいんですか。可愛い過ぎます」
「え?」
「刀解はしないぞ!?」

「違いますよ…おバカさん」


呆れたように笑った宗三に額を小突かれた後、私の膝に乗っていた小夜ごと抱き締められる。小夜と顔を見合わせ、くすりと笑い合っていると、仲間に入れて欲しかったのか江雪に宗三ごと抱き締められた。途端に顔が真っ赤になる宗三を愛らしいなぁと思っていれば、小夜が小さく幸せだと呟くので、私は小夜の顎を軽く持ち上げ目線を合わし、私も幸せだよ、姉にしてくれて有り難うな、小夜。と頭を撫でた後、顔を上げてから江雪兄も宗兄も妹にしてくれて有り難うな、と笑えばーー桜が満開になったのは言うまでもないよな。


(こんなの…まだまだ言い足りないくらいなのにな)


出会ってからまだ1日しか経っていないのに、本当の妹のように愛してくれる江雪と宗三、本当の姉のように慕ってくれる小夜…どうして感謝しないと思う?赤の他人なのに、此処まで受け入れてくれるんだ。大切にしない訳にはいかないだろう。私は幸せ者だな……この場所を、温もりを…誰にも譲りたくないと思う。これは我侭かな……でも、誰にも渡したくないんだ。大事な兄弟だからな。…左文字が居なくなったら、私は私で居られなくなる気がする。どっぷり依存してるのに気付き、私は小さく苦笑いを零す。もう少し、出来れば少しでも長くーー兄弟で居られると良いな。



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