知られたくなかった秘密
書類をこんのすけに渡せば、こんのすけは嬉しそうに笑いながら褒めてくれた。私は江雪達が手伝ってくれたからだよと言ったんだが、江雪によく頑張りましたね、と頭を撫でられる。…たいしたことしてないんだけどな、ただサイン書いただけだし。ちゃんと内容は読んでるけどな。余計な火種になりそうなことはちゃんと消しとかないとな。よく読まずに進めて変な風になったら困るからな。
この本丸を案内してくれると言うので、4人で歩いていれば、広間と同じくらいの部屋を見付ける。聞いてみれば、此処は大宴会場らしく、今晩は此処で宴会をするようだ。楽しみだなぁ…
「そう言えば薺はお酒とか平気なんですか?」
「まあ、嗜む程度なら呑めるけど…酔っ払ったことないなぁ」
「姉様強いんだね…喉が焼けるみたいな感じがするから僕は苦手だな…」
「お小夜はそれで良いんですよ…私も宗三もまあまあ呑めますので、一緒に呑みましょうね」
「おー、それは楽しみだ。小夜は甘いのなら平気なんじゃないか?」
「甘いお酒があるの?」
「チューハイとかカクテルって言うらしいな。私の好きな奴で良いなら作れるけど…どうする?」
「!!呑みたい!」
「そうかそうか。じゃあ作ってやろうな。材料があるか聞かないとだな…江雪兄と宗兄はどうする?」
「妹の作るお酒を呑みたくない訳がないでしょう。…私達だけですよ、他の一振りにあげたらダメですからね」
「僕も呑みたいです。…薺、料理は出来ないんじゃないんですか?」
「あー…何でだろうな。月見酒とか好きだから…たまに作ってたりしたんだ。私しか呑んでないから味の保証は出来ないぞ?味覚はおかしくないからまずくはないと思うが……酒は、色々忘れられるからな」
そう呟いた瞬間、江雪達に抱き締められた。思う所があるのだろうな、きっとーー。あまり頼らないようにはしているが、無性に酒に溺れたい時がある。その時は我慢せずに呑んでしまうな。料理は苦手だが、酒作りは好きだ。…何でだろうな。調理道具が要らないからか?酒は貢物として良く貰うから困りはしないし、アレンジと言っても果物は洗って爪で切り刻んだりするだけだからな…簡単だから出来るのかもな。そう自己完結していると、大宴会場の奥の方に板が見える。どうやら埃被っているようだな…江雪に聞いてみたら、あからさまに顔を顰める。不思議に思っていれば、ぎゅ、と服の裾を掴む手に力がこもる。小夜?と呼び掛けてみれば、小夜はぎゅーと私に抱き付いた。
「あれは内番表ですよ。薺も決める時は彼処の札を弄るんです。近くで見てみますか?」
「興味はあるが……良いのか?見せたくないみたいだが……」
「…気付かないで欲しいとは思っていましたけど、貴女は審神者ですから。どうせ知ることになります」
「…宗三、兄様…」
「…宗三、貴方は此処に居なさい。小夜、付いててくれますね?」
「…うん。分かった、江雪兄様。宗三兄様、お留守番、ね」
「…僕は平気なんですけどねぇ…」
「行きましょうか、薺。あまり掃除してないので少々汚いですが…足元に気を付けて下さいね」
「…ああ、有り難う」
入り込もうとすら思えない雰囲気。…内番で宗三が傷付いたのは聞かなくても分かる。鈍い奴じゃなければ、あんなあからさまなのに気付かない筈がない。…ごめんな、宗三。気付いてしまって。そう心の中で呟いてから、差し出してくれた江雪の手を握り、大宴会場の奥まで歩いていく。そこに掛かっていたのは馬当番、畑仕事、手合わせと書かれた札と江雪達の名前が書かれた札。変な所はなさそうだなぁ、なんて思いながら視線を下の方に向けーー私は絶句する。
「……夜伽……?」
「……はい、薺が思っている意味であっていますよ」
「…ちょっと待ってくれ。私以外、此処の本丸は審神者が女じゃないんだよな…?」
「……ええ、そうです。男の審神者が同じ男である刀剣男士とーー情事を行なうんです」
「……宗兄は美人だからな……江雪兄もか?」
「…宗三よりかは頻度が低いですがたまに相手してましたよ。他は長谷部とか切国とか歌仙とか燭台切とか三日月とかーー美人とか整ってると言われている一振りは一回は抱かれてるか抱いてると思いますよ。勿論、同意なんてしてませんが…主命ですからね」
「…そうか……もっと早く、来たかったなぁ」
私は今、笑えているんだろうか。そんな事情があるなんて知らなかった。…確かに此処に居る刀剣達は美人が多いと思う。…同性しか興味ないって奴にはぴったりだろうな。しかも抱かせるとか…主命って断われないんだな…それもそうか、顕現して貰ったんだからな。…私なら、添い寝くらいしか頼まないと思うんだがな…小さく溜息を付き、江雪にぎゅーとハグをする。江雪はびっくりしたように目を見開いた後、嬉しそうに笑ってから頭を撫でてくれた。宗三にもお願いしますね、と囁かれたので頷いてから、江雪を抱き締める腕に力を込め、その場を力強く蹴り、宗三達の方に飛び、その衝撃のまま、宗三と小夜も抱き締めた。
「わ、姉様…!?」
「…薺、どうしたんです?兄上、何かしたんですか?」
「いいえ。…薺は甘えん坊さんですから、甘えたくなったんじゃないんでしょうか」
「…ん、今はそれでも良いよ。宗兄、笑いたくないなら笑わなくて良いから、小夜も江雪兄もだぞ。無理して笑うな、頼むから」
「…貴女は、優しい子ですね」
「家族なんだろ?…私は居たことないからそんなには分からないけど、見たことはある。喧嘩とかしても、すぐに笑い合える…互いに遠慮しないのが一番なんだろ?だから、泣きたくなったら泣いてくれよ。私の時みたいに。…我慢、するな」
「…薺…っ…!はは、貴女には構いませんねぇ」
「…宗三兄様…」
「…宗兄、綺麗なんだからそんな顔してたら勿体無いよ。一回でも良いんだ、思い切り泣いてくれよ。…んで、また笑顔を見せてくれ。私、宗兄の笑顔好きだよ」
私の言葉に、宗三は何処で覚えたんですか、そんな殺し文句。なんて言いながら私の額を小突いてから、一筋の涙を流す。美人は泣いてても絵になるなぁ、と思いながらそっと涙を指の腹で拭い、以前かごめに聞いたことを思い出しながらーー頬に軽く接吻をしてみればえ、?何て驚いたように顔をする宗三に、親愛って意味があるんだってさ。と笑いながら言えば、ふるふると震えた後、ぎゅーっと抱き締めてくれた。…ああ、これで大丈夫。江雪と小夜の頬にも接吻すれば、彼等もまた笑顔で受け入れてくれた。…うん、幸せだな。
暫くぎゅーっと抱きしめ合っていた後、私は宗三の手を引いて、内番の板がある方に向かう。夜伽の文字を見た時、悲しそうに笑う宗三に見てて、と言ってから札を思い切り投げーー蒼葉で切り刻む。驚いた顔をしている宗三に、私は札の残骸を踏み潰しながら口を開く。
「これで縛られるものはなくなっただろ?」
「…薺…貴女って人は…!」
「もう宗兄はそんなこと考えなくて良いんだよ。それに、私はこの本丸を立て直したいと思ってるし、宗兄達の力が必要なんだよ。だから、これは要らない。宗兄達を傷付けるならーー本丸から排除しないとな」
「…姉様、悪い顔してる…」
「そうか?ま、美人だから絵になるだろ?」
「…薺は美人過ぎますからね…短刀達が見たら泣きますよ」
「そいつは困るな。保護者が黙ってなさそうだ。…宗兄を縛る枷はこれでなくなったか?まだあるなら言ってくれ、何でも破壊してやる。宗兄は自由になれるんだよ」
「…それは籠の中の鳥に対する意見ですか?…有り難うございます、薺。もう大丈夫ですよ」
「良かった。まあ、私が此処に居る限り守るからな。嫌なことがあれば言ってくれ。それを排除しよう。ーー家族なんだ、遠慮しないでくれ」
構わないだろ?と笑いながら言えば、小夜に姉様イケメンと言われる。イケメン?と聞き返せば、江雪にかっこいいと言う意味らしいですよと教えて貰ったので、かごめに言われた言葉を何故か思い出した。辻褄が合わないかも知れないけど…まあ、良いか。私に惚れたら火傷するよ?、可能な限りのイケボとやらで言ってみれば、宗三は顔を真っ赤にして顔を覆う。小夜と江雪の頬も赤くなっていて、どうやら効果てきめんだったらしい。可愛い反応だなぁ、なんてくすくす笑えば、むっと来たのか三振り全員に接吻された。…まさかそう来るとは思ってなかった…私の反応に満足したのか嬉しそうな三振りに、私は小さく溜息を付いた。…元気が出たみたいで良かった。
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