審神者会議の存在を知る
神楽達とのあの出来事から数週間が経った。神楽達から譲り受けた刀剣達も上手くやっているようだし安心した。まあ、同じ目的の為に降りて来てくれたのだから当然かも知れんな。たまに元の時代に帰ってはりん達と他愛のない話をしてまた本丸に戻って来る。私が居た世界に興味がない、訳ではないようだが、私に遠慮してるのかは定かではないが、絶対に着いて来ようとしない。あの長谷部ですらも、だ。…まだ人の子が信じられないのかも知れんな。
今日の近侍は薬研。私のことだけではなく、長谷部の行動にも目を光らせてくれるから非常に有り難い。無理はさせたくないからな。薬研が淹れてくれた茶を啜っていれば、ボフンという音と共にこんのすけが現れる。こんのすけは辺りを見渡し、私の姿を見ると嬉しそうに破顔しながら近寄って来た。可愛い奴だな。
「審神者様!!ご無沙汰しております!」
「そうだな、本当に久し振りだ。ん?何かを咥えているようだな、政府からの文か?」
「左様でございます!…あまり言いたくはないのですが…審神者会議に出て頂きたく、手紙を持って来ました」
「審神者会議?」
「あー…遂に来ちまったか。大将、審神者には同じ国の審神者達が情報交換する審神者会議ってのがあってな、それに参加するのはほぼ義務なんだそうだ」
「…それは上辺だけの話だ。主、審神者会議と言うのは名だけの存在です。ようはレア自慢ですよ、浅はかな審神者による、ね…それに、卑しい連中が居ないとも限りませんし、主のような美しい方は参加されない方が宜しいのでは?」
「だな。俺っちも長谷部の旦那に賛成だ。こんなの参加する方がどうかしてる。こんのすけ、何とかするって言ってなかったか?」
「それがですね…政府も痺れを切らしてるらしく、新しい審神者を連れてこないと監査が入ると言っておりまして…」
「ふむ、監査が入るのはあまり好ましくないな…」
少し窶れてしまってるように思えるこんのすけを抱え、やんわりと撫でていれば、こんのすけは嬉しそうに目を細める。可愛いな、本当に。監査の言葉に、長谷部と薬研も表情を歪める。やはりそうだよなあ、面倒くさくなるのは分かっている。今の雰囲気が良いからこそ、この雰囲気を壊すような問題になり得そうなことは避けたい。だとしたら、…あまり気は進まないが、参加するしかないのだろうな。
「…こんのすけ、その会議に参加する際に軽い変装というか、お面みたいなのを被っても構わないのか?」
「え?は、はい。勿論大丈夫ですよ!審神者は元々あまり顔を出すことを推奨していないので、布やお面を被ったりもそんなに珍しいことではないですよ」
「ほう…ふむ、髪は染めるべきか…?」
「え。…染めちまうのかい?それは勿体ねぇなあ。どんな姿でも大将は美しいが、今の大将ほど美しいのはないだろうな。雅なことは一切分からんがーー…大将が美しいってのは、分かる」
「主の美しいお髪を染めるのも、美しい瞳に何かを入れるのも推奨致しかねます…あんな連中の為に主が犠牲になる必要はありません。監査にでも来れば良いんですよ。石切丸なら主の姿を別人に見せることも可能でしょうし。…アルビノだと知られると不利なのでしょう?」
「不利というか、何というか……まあ、大半は金に目が眩むだろうな。歴史を守ってみせる、と立派な志を持つ人の子であれば揺らがないだろうが…高い給料目当てで審神者をやってるような人の子であればーー…お察し、というやつだ」
「…審神者様…申し訳ありません、こんのすけが至らないばかりに…審神者様には頭が上がらないくらい、色々して貰っておりますのに…」
「うん?こんのすけが気にすることはないよ。君は何も悪くない。…政府の考えも理解は出来る。相手を知らないと出来ることは限られてしまうからな」
…まあ、やり方は得策ではないがな。私のように、急に現れた存在は上としても見過ごす訳にはいかないだろう。審神者になる為の研修すら受けていない訳だし、この本丸はブラック本丸だと言われていたくらいだからな。そんな本丸を研修を受けていないど素人が引き継いでいる…気にならない筈がない。政府としては、どんな手を使ってでも審神者を引っ張り出そうとするだろうな。私が役人ならそうする。
「…大将、無理はしなくて良いんだぜ?大将だって、あまり人間が好きじゃないんだろう?」
「…悪い奴等ばかりではないと分かっているよ。ただ、色々ありすぎたからなあ…この容姿は人の子の本性を暴いてしまう…どんなに隠そうとしても、一生働かなくても遊んで暮らせる生活が手に入るんだ。目が眩まない方がおかしいかも知れんな」
「…主。貴女は物でも道具でもありません。俺達は今は人の身なりをしていますが、元々は刀ーー…即ち、道具です。でも、貴女は違う。貴女は人間です。売られるなんて、あってはいけないことです。…慣れてはいけませんよ」
「そうですよ、審神者様ぁ!!審神者様はもう少しご自分のことを大切にして下さい!!こんのすけは気が気でないのですよ!」
「…俺っちからも言わせてくれや。大将、俺達の大将はアンタだけなんだ。俺達のことを考えてくれるのは嬉しいけど、自分のことを蔑ろにするのは違うだろ。…もっと一緒に居たいんだ。だから、…あまり無理しないでくれ」
「ーー…すまない、努力しよう」
まるで自分のことのように顔を歪めながら進言する彼等に、思わず胸が締め付けられる。…自分を大切に、か。そうだな、私ももっと一緒に居たいから少しでも長く居られるように自分を大切にしなければならないな。難しい話ではあるが、な…今まで自分を大切に、なんて滅多に言われなかったからな…純粋な好意で言われるのはかごめ以来だろう。…記憶に間違いがなければ、な。
「ふむ。まあ、会議には参加しよう。今の本丸に役人を招くのはどうも嫌なことしか起こりそうにないからな。護衛とかは連れて行けるのか?」
「勿論でございます!二振り連れて行けますよ!…まあ、他の審神者様が連れて行くのは誰かは大体見当が付きますけどね…全く、刀剣男士様はアクセサリーではないのですよぅ…」
「レア自慢か、実にくだらん。…そんなのにこだわるのも人の子らしいと言えばらしいが。そうだな…一振りは長谷部、お前に任せても良いか?」
「ーー…は?…俺で、宜しいのですか?左文字は…」
「左文字は連れて行くつもりはない。私を想うが故に色々と口出して来そうだからな。それに、長谷部。お前は私の世話役だろう?」
「…ええ、拝命致します…!必ずやお守り致します…!」
「ああ、期待してる。あと一振りは…そうだな。お前がこの場に居たのも何かの縁であろう、薬研。一緒に来てくれないか?」
「…おいおい、レア自慢だって言ってんのに、俺を連れて行って良いのかい?俺は自分で言うのも何だが、序盤で入手出来るようなやつだぜ?短刀に絞るなら平野とか厚とか、貞宗みたいな奴を連れて行くのが一番良いんじゃないか?長谷部に合わせるなら博多とか行光とか小夜、はダメなんだったな。厚だって黒田繋がりだぞ?」
「他所は他所、うちはうちだ。レア自慢なんぞするつもりは毛頭にない。…言い方を変えようか。薬研藤四郎。私はーー…お前に、一緒に来て欲しいんだ。納得いかないか?」
「ーー…ひでぇお人だな、大将。そこまで言われていかないなんて言えないだろう。…分かった、拝命しよう」
「うむ。そう言って貰えて何よりだ」
薬研の反応に頷いてから茶を再び啜れば、そんな私の表情に、薬研は敵わねぇな…と肩を竦めながら困ったように笑う。薬研か。まあ、連携は取りやすいな。と、何故か戦うことを前提にしている長谷部のことは…置いておこう。気にしてはダメだと、警告されている気がする。…うん、気にしてはいけない。
「こんのすけ、お面とかは何だったか…さにぞん、とやらで入手出来るのか?」
「はい!勿論可能でございます!…あの、宜しければ私めに選ばせては頂けないでしょうか…?」
「うん?別に構わないよ。こんのすけのセンスなら期待出来そうだ」
「あ、あ、有り難うございます!!素晴らしいお面を見付けますからね!」
「ああ、期待してる」
くすり、と笑みを零しながら告げれば、こんのすけは嬉しそうにパタパタと尻尾を振りながらはにかむ。…モフる毛並みも素晴らしいのに、こんなに可愛い反応をしてくれるとはなあ、可愛い奴め。どんなお面を見付けて私に贈って来るか…楽しみだな。
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