1


私は最も大切な人が最も嫌いだった。
 
そう言うと普通は首を傾けるだろう。
だけど言葉通りなのだ。
最も大切な人が最も嫌い。
 
なんだか自分でも何を言っているか分からなくなってきた。
 
私とは家族同然の様に育ってきた幼馴染み達、私含めた4人組。
生憎彼以外は外に出ることを嫌った。
だから彼は私たちを日のもとへ出そうとしてくれたのかもしれない。
何度も何度も私たちの手を引いては言った。
ボクたちが世界を変えよう、と。
 
日の当たらない生活をしてきた私たちはずっとそれを拒み続けた。
出ていったって眩しいだけじゃないか、と。
 
 
いつしか彼は一人、私たち3人を置いて姿を現さなくなった。
私たちは然程気にすることもなく、ただ日にちだけが過ぎていった。
 
 
「組織を作ろうと思ってるんだ。」
 
 
姿が見えなくなって数ヵ月、
突然帰って来ては私たちにそう告げた。
勿論私たちは気にしなかった。
だからどうした、程度にしか思わなかった。


「ボクと来てくれないかい?ミライ。」
 
 
ガルシャアとヴァンフェニーと別れて、
帰路についた私と…サリュー。
 
 
「ボクはきみがいないとまともに動けないみたいなんだ。
ここ数ヵ月で痛感した。」
 
 
私がいないとダメ、か。
いくら世間から離れた生活をしていると言えど、
その意味は分かってるつもりだ。
 
私はサリューのことを大切に思ってる。
だけど、
私とサリューは違い過ぎるんだよ。
真逆だ、と言ってもいいだろう。
 
 
全て反対の彼だから、
私は嫌いなんだよ。
 
悟ってよ、サリュー。

- 1 -

prev | next


page:
/32


back
top