再会


「こちら、どちら様?」
「こちら、こちら。」

一回殴っていいだろうか。この人がアイドルじゃなかったら考える間もなく一発みぞおちにやっていたと思う。

「……答える気ないよねぇ、天祥院?」
「噂の転科生か!美人だな!」
「あっれ〜?朔間さんの彼女ちゃんじゃん〜!?会長さんに浮気中〜?今度俺とも遊ぼうね〜?」
「どちら様でしょうか。」

英智に連れてこられた3年A組の教室で、私は何故か敬人の席に座らされている。次々に現れる3Aの先輩方に対して基本的に無反応を貫いていたが、見覚えのある人が現れて思わず口を動かしてしまった。

「さっきまでの営業スマイルが突然真顔になってるじゃん。何したの羽風。」
「おい凛華、英智の気紛れに構ってないで転校生を手伝え。」
「は〜い。」

廊下から顔を覗かせた敬人に嬉々として飛びかかる。天の助けだ。

「(…凛華?どっかで聞いた気がするけど、どこだっけ。)」


*


「あ。」
「あ……。3Aの、瀬名先輩。」

廊下を歩いていたら、目が合った人物が目の前で立ち止まった。先日3Aの教室で見た人だと、なんとか記憶から名前を思い出した。

「ゆうちゃん。」
「は?」
「結城凛華だから、ゆうちゃん。」
「……へぇ。」

ゆうちゃん、と、呼ばれたことがないわけではない。しかし、違和感が付きまとう。

「授業始まるから行くね〜。」
「あ、はい。」

やたら上機嫌に見える瀬名先輩は、ひらひらと手を振っている。

「またね、ゆうちゃん。」


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