朦朧とするほどの快感の中で、私に覆いかぶさるこの男も僅かに震えるのを感じた。
生物の本能を蔑ろにする薄い隔たりの向こうで射精する。
彼も私の体で満足しているのだろうか、それとも、男という生物的に反応してしまうだけなのだろうか。
前者であればいいと思うけれど、問いかける勇気のない私はただ今起きている事実だけを咀嚼して飲み込む。
ずるりと硬さを失ったそれが抜かれて、自分の体液で内股を濡らした。
不快だ。
この感覚が嫌いだ。
まるで自慰でもしているかのような孤独で、救いようのない感覚。
リゾットから顔を背けてベッドサイドのティッシュで秘部を拭う。
最悪、最悪、最悪だ。

「……海岸沿いの『コバルト』っていうリストランテの花瓶に置いてあるわ」
「分かった」

何の未練もなくシャワールームへと向かうリゾットにお門違いな悪態を心の中で吐いて脱ぎ散らかした上着を引き寄せる。
私には前世の記憶がある。
だからリゾットが何者で、どうしてギャングになったのか、どう死ぬのか、知っている。
スタープラチナのような剛腕も、ゴールドエクスペリエンスのような並外れた能力も持たない私のスタンドでは彼の死を変えることなど到底不可能だ。
記憶のおかげでスタンドだということは分かるのに、私のそれは姿かたちが見えず、ただ記憶の欠片で花を作ることしかできない。
一番欲しかった戦闘力は皆無なものの、ギャングではないがそれなりのズルをして大金を得た私にとっては、秘密の共有という点で随分と役に立っている。
長いため息をついて、動こうとしない体に鞭を打つ。
掃いて捨てるほどの巨万の富を得た私がしたことといえば、ギャングに上納金を払って私の会社の市場占有を後押しさせるだとか、小賢しいアリどもの露払いをさせるだとか、リゾットを金で傅かせるだとか、碌なことをしていない。
この分じゃ私は彼の死を只々眺めることになりそうだ。
もう一つため息をつくと、リゾットがシャワーを終えて出てきた。
髪から流れ落ちる雫をタオルで拭いながら、服を身にまとっていく。

「洗ってやろうか?」

ベッドから動かずにいた私をみてかリゾットが言った。
服を着る手を止めておそらく本気で言っているリゾットに笑いのこみ上げた私は枕に顔を埋めてしっしと手を振った。

「早く行きなさい」

随分と飼われることに慣れたものだ。
いかに私が無力な女でくだらないスタンド使いだろうと、バスルームに誘う暗殺者がいるものだろうか。
もっと警戒心を持って欲しい。
音もなく出て行ったリゾットを思いながら、のっそりとベッドから立ち上がった。
ソルベとジェラートが死ぬまで、あと一年。