キングクリムゾンとメタリカの相性は最高にいい。
たとえ時を消し飛ばそうが、常時発動出来るメタリカの前では無意味だ。
だからこそ、リスクはあったけれど、今ここで、もしかしたらボスをやれるかもしれないと彼に言ったのだ。
ボスにとってリゾットや暗殺チームの出現は想定外のこと。
ならば必ず隙ができると。
浅はかだった。
ソルベの影に隠れて近づいたが、それでも気付かれてしまった。
私の見通しが甘かった。
射程なんて、時を飛ばせばすぐに詰められるもの。

「そんな顔をするな。俺は生きている」
「死にかけたわ!ジョルノがいなければ、死んでいた……」
「しつこいぞアメリア。いない未来はなかった!だから、俺はお前のいう通り礼拝堂に鏡を置いた。ちゃんとお前の想定通りになってるぜ」
「イルーゾォ、あなたが慰めてくれるなんて、驚きだわ」
「かわいくねー女!!そこはありがとうでいいだろうが!」
「そうね……ありがとう……」

イルーゾォは大きな舌打ちで応えるとリトル・フィートで小さくなるためホルマジオに手を差し出した。
私とそのボディーガードで残るリゾット以外はホルマジオによって小さくなり、犬に擬態したジェラートの背にソルベの影で鞍を乗せている。
ブチャラティのいう裏切りのボートにフーゴを残して私たちも乗り込み、途中でナランチャを拾った。

「まず、助けてくれたことに礼を言いたい。ありがとう、君たちがいなければ、きっと俺はトリッシュを連れて無事に逃げ果せることは出来なかっただろう」

いいえ、貴方は私たちがいなくてもトリッシュを連れて逃げ果せていた。
貴方は、無事では、ないけれど。
口に出すことはできず、ただ黙したまま隣にいるリゾットの手を握った。

「ひとつだけ、確認させて欲しいことがあるの」

私はリゾットにナイフを借りてブチャラティの手を取った。
ナランチャとミスタが騒ぎ立つのを手で制し、ブチャラティは頷いた。
一言だけ謝って、彼の指先に至極慎重に刃を突き立てた。
ぷつりと、血が滲んだ。
生きて、いる。
緊張で感じなかった彼の鼓動も、やっと手を伝わって聞こえてきた。

「生きて……る……痛みは、感じる?」
「ほんの少しだけな」

リゾットが私の手からナイフを取り上げ、そのついでにブチャラティの血も止めた。
安堵で気が抜ける。
生きてる。
くらりと、目眩がした。
力の抜けた体をリゾットが受け止めてくれる。

「アメリア、少し眠れ。昨日も満足に寝ていないはずだ」
「い、いや、大丈夫よ、リゾット。本当に大丈夫。ありがとう、ブチャラティ。これからの話をしましょう。まずはヴェネツィアのマルコ・ポーロ国際空港に……」
「待て。お前らは何であの島にいた?ボスとボスから命令を受けた俺らしかあの島の情報は持っていないはずだろ」

慎重なアバッキオに、私がスタンドで彼の死を見たからよ。
とは、言えなかった。
本当は、ここで話すことはあらかじめ決めていた。
私がスタンドを用いて彼の死を知り、しかしボスを倒すためには彼が死んではならないから助けた、と、そう説明するつもりだった。
でも……どうしても言えなかった。
彼が、ブチャラティが死んだ未来は、死ななかった過去になったのだから、口に出してあったはずの未来にしたくなかった。
隣にいるリゾットは気づいていたけれど、何も言わず、ジェラートの背にいる彼らも何も言わなかった。

「私たちは、独自のルートでボスを追っていたの。あらかじめ、ボスがあの場所を使うことも知っていたわ。だから、あわよくばあの場で暗殺できるように潜んでいた」
「答えになってねぇだろうが。俺たちが裏切り者である以上、てめぇらが本当に信頼できる人間なのかを見定める必要がある」

アバッキオの言葉に、確かに、と頷く。

「言いたく、ない」
「アバッキオ、彼らは命を懸けてトリッシュとブチャラティを助けてくれました。僕が治さなければ、確実に彼は死んでいました。それだけの覚悟をして、助けてくれたということです」

ジョルノが助け舟を出してくれるとは思わなかった。
驚いて彼を見つめると、ジョルノは私を振り向いてほほ笑んだ。
黄金の風。
優しい風が彼の金髪を揺らした。
その身に流れるディオとジョースターの運命の血が色濃く見えた気がしたが、それでもなおジョルノとしての魂を陰らせてはいない。
美しい人。

「聞かせてください。これから僕らがどこへ向かうべきなのか」