「セッコ、話がしたいの!」

俺の持つカメの中からアメリアが出てきた。
作戦ではどちらも殺すということで決着はついたはずだったが、アメリアはまだ諦めていなかったらしい。
俺はため息を押し殺してそれ以上近づくなと手で制す。
地面が不自然に揺蕩い、その波紋の中心からセッコが現れた。

「お前、アメリア、バレッティ、だな……チョコラータ、の資料、に、あったぞ……」
「ねえ、セッコ、少し聞いて。私は経済力でも、戦力でも、チョコラータを上回ってるわ。時期に私の部下がチョコラータを殺すけれど、セッコ、あなたが彼を裏切るというのならあなたの命だけは助けてあげる。だってあなた、打算だけでチョコラータに従っているんでしょう?」

ぽちゃりと一度地中に消えると、セッコはアメリアの足元に現れた。

「お前、嫌いだ。自分、が一番、つよ、いと、思ってる。一番、よわい、くせに……上から、目線で、よォ……助けて、やる、なんて……むか、つくぜ!!」

鼻から下を地中に埋めていたから、予備動作に気づかなかった。
殺気だけに反応し、咄嗟にアメリアを後方へ押し除ける。
一瞬遅く拳が宙を切り、そのタイミングでアメリアの前に出た。
メタリカで相手の鉄分をカミソリに変えて血が吹き出すのを確認したが、血飛沫に紛れて高速で飛来する礫を見落とし防ぎきることができなかった。
辛うじて意識だけで追った。
メタリカを発動して的確にアメリアの脳幹を狙うそれをずらす。
アメリアの目を礫がえぐり、後頭部へと頭蓋骨を割って抜けた。
一瞬の出来事だったのに、永遠のような長さだった。

「ジョルノ!」

カメの中から出てきた手はすぐにアメリアに触れ、傷を塞いだ。
即死していないことは分かっている。
脳幹からずらしたし、脳も決して傷つけていない。
礫の入射角を変えて斜め下に抜けるようにした。
だから、死んでいない。
ジョルノが治せば、まるでひどい悪夢から醒めたように、何事もなく、起き上がる。
アメリアの目から血が吹き出す瞬間がフラッシュバックした。
俺の中にある、暗殺者としての根本。
復讐の炎が、身を焦がすように全身へと燃え広がった。
血が熱いのは、きっと錯覚ではない。

「り、ぞ……」

亀から出てきたブチャラティとジョルノは、傷ひとつない綺麗な目を見開くアメリアを庇うように俺を見上げた。
ナイフで指を一つ切り落とし、アメリアに握らせる。

「え、い、いや……!」
「メタリカを置いていく。少し、離れる」

青ざめたアメリアを残して姿を消す。
ギアッチョはもう追っているな。
高台へと走り、街を見下ろす。
ギアッチョの氷の痕跡を目で追いながらその行先に先回りする。
頭上には無数の鉄の刃を浮かせ、張り詰めた弓にかかる矢の如くその射出を待たせた。
地中から炙り出してやる。
ギアッチョの少し先にメスを突き刺し、足を止めさせる。
そして宙に浮くそれらを解き放った。
勢いのついた鉄の刃は等間隔で地面に突き刺さり、地中の鉄分を吸収して鋭く長く肥大化する。
地中で鉄格子のように連結していくそれに、居場所を奪われたのか男が這い出てきた。
歩いて近寄り、アメリアが一時的に失った右目の代わりにセッコの右目をメタリカで潰した。

「ひっぃいいぎぎ!!」
「アメリアは、お前を助けるつもりだったようだが、もういいだろう」

カミソリをじゃらじゃらと吐き出す様子を眺め、酸素欠乏で水面に顔を出す鯉のように口を開いては閉じるセッコがやがて動かなくなるのを見届けた。
あまりにあっけない幕切れに、沸き立った血が収まらない。

「リゾット!」

必死な顔で走り寄ってきたアメリアは、近くまで来ると窺うように踏鞴を踏んで立ち止まった。

「……アメリア、故郷の記憶をくれるか」
「ええ……」

美しい青い花が咲いた。
海を映したような半透明の青を砕き、感じるはずのない風に目を閉じた。
始まりの場所は荒波のように身を滅ぼす怒りの衝動を抑え、寄せては返す無限の静けさを取り戻した。
目を開けば、五体満足で怪我の痕跡もないアメリアがいる。

「すまない、冷静ではなかった」

アメリアに渡した薬指を回収してメタリカで結合させる。
問題ない。
また勝手に出てきたのかプロシュートがアメリアを怒鳴って亀の中へと押し込んだ。
今更のように作戦を思い出し、頭の中で次の動きを考えた。
想定より、少し遅れている。

「リゾット、大丈夫か?」
「ああ。すまなかった、ブチャラティ。コロッセオに急ぐぞ」