「リゾット、今日の夜空いてるか?」
「先約がある。重要な用事か?」
「いや、ならいいんだ」
ジェラートは素直に首を振ってソルベの方へと足取り軽く戻っていく。
一体何だったのだろうか。
リゾットは疑問に思いつつも深く追求せずアジトを出た。
今日は暫くぶりにアメリアに呼ばれた。
定期的にあったわけではないが、主にリゾット自身の都合で延期されることが多かったため、こんなにもに呼ばれないことは珍しかった。
彼女も表では秘書をしているというから、おそらくその関係で忙しかったのだろう。
指定されたホテルに着き、部屋に入ると濃い酒の匂いと共に空き瓶がそこらに転がっていた。
随分な様子だ。
ベッドには青い顔で横たわるアメリアがいる。
眠っているのかと思ったが、薄っすらと目を開いてリゾットを見たためベッドに座って声をかけた。
「アメリア、大丈夫か?」
聞こえているのかいないのか、アメリアは問いかけには答えずリゾットに手を伸ばした。
ガラスのような花びらが舞って記憶が抜かれる。
半透明な美しく脆い花がリゾットの手から伸びて咲いた。
記憶は何が抜かれるのか分かるし花が砕けるまで記憶は見えないため、もしも余計な記憶が抜かれたらアメリアの手から奪って砕くつもりだったが、アジトで騒ぐチームの様子だけが抜かれたため花を手折るアメリアのしたいようにさせた。
アメリアが花に口付けると花は自死するように砕けて花びらの代わりに美しい結晶を散らした。
「あぁ……」
呻くような小さい声を漏らしたアメリアはリゾットに両腕を広げて見せた。
「だいて」
「相当飲んだだろう、今日はやめておけ」
「だきなさい」
リゾットの体から無数の記憶の花を生やすアメリアに、分かったからやめろとキスをした。
アメリアはようやくホッとしたように全身から力を抜いて愛のない行為を享受する。
アメリアとリゾットが身じろぎするたび、色とりどりの花は次から次へと砕けて記憶を二人に見せた。
チームのものばかりだ。
リゾットは意識してその記憶を咲かせているのだろうかと勘ぐるが、酒のせいか涙を流して静かに善がるアメリアを撫でて余計な記憶を見ないようにしているのだろうと納得する。
辛そうなアメリアに行為の最中何度もやめるかと問いかけたがその度に大丈夫だからと首を振った。
「ねえ」
「なんだ?」
「ボスのこと、探っちゃダメよ」
「そんなつもりはない」
「あなたは、そう、でも、ソルベとジェラートは、きっと先走るわ」
失いたくないなら、しっかりと見ておきなさい。
意識があるのかないのか、焦点の合わない目でリゾットに視線を投げたアメリアの言葉にリゾットはプロシュートに言われた言葉を思い出していた。
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