▽ 07
彼がまたリセットされたらしい。
「ラードゥガ。ウィンターソルジャーを準備させろ」
「……はい」
大佐は私の微妙な間も気にせず去っていってしまった。
世話係ではないと思っていたのは私だけなのだろうか。
それとも多少面識のある私を行かせることで世話係の消費を抑える算段なのだろうか。
虹を観察するドクターは私に異常なしと伝えてカルテをしまった。
「レーナ、気をつけろよ」
「はい」
思えば、私の名を呼ぶのはドクターと今は亡きスポッターの男、それと彼だけだった。
私を人として見てくれる人。
まあ、人間扱いしてくれるかと言えばノーだけど。
検査室を出たわたしは食堂で彼のための食事を貰った。
ブロック栄養食に肩をすくめる。
美味しいものではない。
ノックをして慎重にドアを開く。
「ウィンターソルジャー、はいりますよ」
反応はない。
いきなり殺されたりしないだろうな。
そっと部屋に入り、様子を伺う。
ぼんやりしてる。
大丈夫かな、主に私。
「私が分かりますか?」
服の裾を捲り、虹を見せれば、彼は少しだけ反応した。
「レーナ」
「はい、そうです。近づきますよ」
大丈夫そうだ。
近づいた私を目で追いながら、食事を受け取る。
「虹」
「はいはい、ラードゥガですよ。シャワー浴びて来てください」
「ラードゥガ」
食事をサイドテーブルに置いたかと思うと、彼は私に擦り寄って来た。
まずい。
抵抗してもいいものか悩み、彼の手に捕まった。
私を抱き上げ、腹部の虹に顔をつける。
猫吸いみたいなものだろうか。
「ウィンターソルジャー、すぐ任務があります。シャワーを浴びましょう」
じっと私を見た彼は落ち着いたのか私を離してシャワールームに向かった。
よかった。
一発始まってしまうかと思った。
服を用意して部屋を掃除しておく。
少し長い。
彼は早風呂だと思ったけど。
シャワールームをノックして声を掛ければハッとしたように影が動いて水の音が止まった。
少しおかしい。
リセットがうまくいっていないのではないだろうか。
全裸で出てきた彼にタオルを押し渡す。
「服を着て下さい」
「ああ」
これから任務だというのにのんびり服を着る彼にため息をついてその口に一口大にしたブロック栄養食を入れる。
黙々と食べる彼を少しだけ眺め、服を着終わった彼の前に装備を展開する。
「シグとグロックはここに、マガジンはここです。いつもと変わりないはずですがご要望は?」
「お前は来るのか?」
「はい、遠方から狙撃支援します」
「スポッターは」
「聞かされていません。おそらく単独かと」
そうか、と彼は頷いた。
私の構成が気になるのだろうか。
「装備はR93、使用弾は.338ラプアマグナムです」
彼は聞いているのかいないのか、あまり興味なさそうに頷く。
違った。
残りの食事を終えて水を流し込んだ彼は立ち上がって一度ざっと装備を点検した。
「行くか」
「私は別動になりますので車庫に向かって下さい。詳しい任務内容はその場で」
彼は私を見てまた裾をまくり、虹を見た。
「ウィンターソルジャー、行動開始です。ほら、早く行って下さい」
彼のサイバネティックアームを叩けば、ようやくやる気が出たのか私を離して独房を出た。
全く。
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