▽ 06


お咎めが頰を1発殴られるだけで済んだのは僥倖だ。
シットウェルというヒドラ職員が攫われたらしく、その回収に駆り出された。
ウィンターソルジャーを屋根上に乗せ、対象の車両に接近する。
ダン、という強い音で彼が対象車両に乗った事を確認し、巻き込まれないために少し離れる。
直後、彼は車の中から攫われたと思しき男を引き摺り出して放り投げた。
まったく!
あまりに雑な救出に悪態をこらえて車を回す。
後続部隊が対象車両に突っ込み、破片が飛び散る。
銃弾と車両の破片から車を盾に身を守りながらシットウェルに近づいた。

「生きてますか?回収に来ました」
「は、ハイルヒドラ……」

元気そうだ。
一応防弾車なので後部座席に彼を乗せてウィンターソルジャーたちの方へと向かった。

「急襲班、シットウェルを確保。回収を要請します。……すぐに回収班が来ます。車の中にいて下さい」
「わ、分かった!」

私は車から降りてM249を持ち出す。
今回は狙撃ではなく前線支援なのでスナイパーライフルではない。
グレネードランチャーを撃ちまくる彼に肩をすくめ、高速道路から下の市街地へと飛び降りた敵を狙う。
その時、彼の左手が眼前に出て私の頭を後ろに押し下げた。
直後、銃弾が彼のメタルアームに弾かれる。
危ない、また、死ぬところだった。

「車で回収班を待て」
「は、はい、ありがとうございます」

私からM249を奪うと彼はチームと下に降りた。
私はシットウェルの乗る車に戻り、拳銃を取る。

『ラードゥガ、状況を報告しろ』
「ウィンターソルジャーチームが高速から市街地に降り交戦中。私は高速道路上でシットウェルの回収班を待っています」
『了解。そのまま待機』
「了解」

やまない銃声を聞きながら待っていれば、あらかじめ近くで待機していた回収班が現れた。
シットウェルの引き渡しを行い、急襲班の回収を命じられる。
私は車を回し、狭くなりそうだとそれほど広くない後部座席をチラリと見た。
市街地に降りて火の手の上がる方へと向かえば急襲部隊が壊滅しているのが見えた。
敵は強いようだ。
死体を数え、あとはウィンターソルジャーしか残っていないことに気づく。
まさか、死んでないよね。
私は遠くに肉弾戦をしている彼を見つけ、ほっと息をつく。
戦っている相手はキャプテン・アメリカだ。
ウィンターソルジャーが投げ飛ばされてフェイスガードが落ちる。
後部座席の窓を開けて彼の真後ろに車を停めた。

「バッキーとは誰だ?」
「ウィンターソルジャー、撤収です」

彼はゆっくりと私を見た。

「ウィンターソルジャー?」
「いや……」

後部座席の窓からするりと車に乗り込んだ。
車を出して、後続がいない事を確認し、本部に連絡を取る。

「ウィンターソルジャーを回収。他急襲班は死亡を確認。基地に戻ります」
『了解』

車内ミラーで彼を見て、どこかいつもより上の空の様子に首を傾げた。
いつもぼんやりしているが、今日はそれ以上だ。

「どうかしましたか?」
「バッキーという名を知っているか?」
「いえ……私はあまり知り合いが多くないので」

彼はそうか、と頷いてシートに沈み込み、ゆっくりと瞼を閉じた。


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