Step.89
「と、友だちとショッピング!!」
「お前どんな幼少期送ってきたんだよ」
上鳴に苦笑気味に言われ、それはも壮絶だったよ、と冗談めかして返しておく。
林間合宿まえに買い物イベントがあるとは!!
やってきたぜ!木椰区ショッピングモール!
「なあ久地楽!一緒に回んねぇか?」
「おー!いいとも切島ぁ!」
木椰区集合でせっかく集まったのに、気づけば早速バラバラに分かれていた。
あれ、友だちとショッピング……?
まあいっか、切島でも。
「何か失礼なこと考えてねぇか?」
「百ちゃんたちと行きたかったなって」
「直球過ぎんだろ。ってか八百万たちはカバン買うつってたしどうせ暇になるぜ?ほら、お前キャリー買ったって言ってたろ」
な、と眉尻を下げて笑う切島の頭を撫でた。
酷い暴言吐かれたのに切島は何て良いやつなんだ。
それに比べて私は!
「ごめんよ!!良いやつだよきみ!一緒に回ろう!いや、回らせてください!」
「お、おう」
引き気味に頷いた切島はじゃあ行くか、とショッピングモールを指した。
切島の買いたいものは後でいいとのことなので、とりあえずキッチン用具のところへ向かった。
ちょうどうちで使っている砥石がちょっと凹凸つき始めたので面直し用の砥石が欲しかったのだ。
いや、だって消太くんが使いなれた包丁がいいなら持っていっていいって言うから。
うちの包丁はひざしくんにおねだりしていいものを買ってもらったので、一度あの感覚を覚えてしまえば他の包丁では満足できないのだ。
「なあ、あんまり詮索するつもりとかねぇんだけど……相澤先生と何かあんのか?」
「え?」
「ほら、実技テストの時。相澤先生お前のことコトハって呼んでたろ。久地楽も先生のこと下の名前で呼んでたし」
あ、と今更ながらに口を抑える。
冷静じゃなかったとはいえこれはやらかした。
そんな私を見て切島は「言いたくねぇならいいんだけど」と慌てて付け加えた。
気になるだろうに、お人よしだなぁ。
苦笑して「誰にも言わないでね」と前置きをした。
何となく、周りを見回して、雄英生徒がいないことを確認して話し始める。
私が暴走を起こしたのがきっかけで、昔よく遊んでくれていた『抹消』の個性を持つ消太くんにお世話になることになった、という真実でも嘘でもない大まかな経緯を説明すれば、そうだったのか、と納得してくれた。
「だからB組からA組に転出になったの」
「なるほどなぁ、成績優秀、万能個性のお前も苦労してんのか。『You can't judge a book by its cover.(人は見かけによらない)』ってやつだな」
「覚えたてのことわざ使おうとしてる」
「せっかく教わったからな!」
へらりと笑う切島に、なんとなく詰めていた息を吐きだした。
ちょっと緊張した私を返せ。
「ありがと。消太くんのこと、今まで誰にも言ったことなかったから……」
「礼言われるほどじゃねぇよ。ほら、次なんだ?」
自然に砥石を入れたカゴを私の手から奪った切島は控えめに言ってイケメンだった。
くっそ、カッコいい。
額に手を当てて、切島が将来変な女に引っかかりませんようにと全身全霊でお祈りした。
その時は絶対助けてあげるからね。
「キッチンペーパー……」
「林間合宿関係なくね?」
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