Step.90
ヒーロー、警察の出動でショッピングモールが騒然となった。
その喧騒の中心に緑谷とお茶子ちゃんがいるのを見て、私たちはすぐに駆けよっていった。
警察に止められたが、何とかお茶子ちゃんと合流して事情を聞く。
「死柄木、弔」
またあいつ。
切島がとっさに私の腕をバングルごと掴んで白い心を投げ渡して来てくれたから、それほど心は波立たなかった。
ひとまず、そんな奴らと会遇してしまった二人の安否にほっとする。
緑谷も絡まれた程度で外傷という外傷は無いらしい。
「お茶子ちゃんも無事で良かった」
「うちは全然だよ。それよりデクくんが……」
心配そうに緑谷を見るお茶子ちゃんの頭を撫でて少しだけ心を渡してあげた。
本当はもっとあげたいのだけれど、これ以上渡したら、私自身が暴走しかねない。
「とりあえず今日は帰ろうぜ。緑谷は取り調べがあるらしいから警察がきっと家まで送ってくれるさ」
お茶子ちゃんを気遣うように切島が言って駅のほうに促した。
お茶子ちゃん、大丈夫かな。
何度も緑谷を振り返るお茶子ちゃんの手を握って、無神経じゃない程度に微笑む。
「送るよ」
「コトハ、ちゃん……」
「待て待て、女子二人じゃあぶねぇだろ!そこの二人は俺が送るからちょっと待ってろ!」
切島はそれだけを言うと、集合していたA組の男士たちに声をかけに走っていった。
切島ってナチュラルにイケメンだよな。
一人で誰にともなく頷いていれば、すぐに切島が帰ってきて、百ちゃんたち女子を男子で手分けして送ることになったと教えてくれた。
おお、無駄に団結力ある。
上鳴はカフェ寄ってかね?と無神経なことを言って響香ちゃんに制裁されていた。
あ、うん、自業自得かな。
******
「送ってくれてありがとね。二人とも気を付けて帰って!」
「うん。今度お泊り会しようね」
「そうやった!絶対しよう!!」
「お茶子ちゃん、忘れてたな?」
可愛いおでこにデコピンをして笑えば、お茶子ちゃんもえへへと緩く笑ってくれた。
うん、可愛い。
またね、と手を振って切島とお茶子ちゃんの家を後にする。
思ったより日が落ちてしまって、切島に送ってもらうのが申し訳なくなってきた。
「そうか、消太くんが送ってあげればいいのか」
「どういう思考回路でそうなった!?」
「いや、切島を一人で帰らせるのも心配だなぁって思って」
「大丈夫だって」
切島は苦笑して私の頭をぽん、と撫でた。
撫で撫でスキルが足りませんな。
私の今までの感じだと消太くんが1位で2位がひざしくんだ。
切島と話しながら帰路を歩いていれば、噂の消太くんから電話が来た。
「もしもし?」
『今どこだ』
「切島に送ってもらってるとこだよ。いまパン屋の交差点のとこ」
『暴走は』
「してないよ」
私の代わりに黒が答えた。
ちょっと。
『分かった。俺は出てくるから切島にしっかり送ってもらえ。いいな?』
「ん、ご飯は?」
『向こうで済ます。早く寝ろよ』
「はーい、お仕事頑張って」
『ああ。一緒にいてやれなくて悪いな』
「大丈夫だよ。じゃあね」
通話を切って切島と顔を見合わせる。
話しておいてよかった。
こんな時に、不謹慎かもしれないけれど、切島と歩く道はとても楽しかった。
何か特別面白い話をするわけでもないけれど、何となく、まるで―――。
ハッと我に返って、それは違うだろうと額に手を当てた。
「どうかしたか?」
「あ、いや、ううん、なんでもない」
消太くんみたい、だなんて。
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