▽ 六話
「どう、かな?」
「おいひぃ、れふ……」
ふにゃりと顔が溶けたのではないかと思うほど緩んだ笑顔でうどんを頬張る秋田くんに、私とまんばさんは思わず無言で強めのハイタッチを交わした。
素早く行われたそれに秋田くんはびくりと箸を止め、私は意外と衝撃のあったそれに手を抑えた。
刀剣男士、侮れない。
じんじんと熱を帯びる手を叱咤して箸を持った。
まんばさんもなぜか手を抑えながら箸を持つ。
いや、私のほうが衝撃大きかったからね。
男の君より絶対ダメージでかいからね。
「僕、幸せです」
秋田くんは箸をおいてうつむいた。
幸せと口にした表情では無い。
何かを堪えるようにぐっと奥歯をかみしめ、言葉を絞り出す。
「でも、僕なんかが、幸せになっていいのでしょうか……」
「秋田くん?」
「どうした」
私とまんばさんが同時に声をかけた。
「僕にはたくさんの兄弟がいます……みんな、僕より強くていい刀です……それに――」
秋田くんは涙を堪えながら私を見た。
「主君は、お幸せですか……?」
席を立った私は、秋田くんを抱き上げてへたり込んだ。
ああ、不安になっちゃったんだね。
私がさっき泣いたりしたから。
私の不安が伝染しちゃったんだ。
ごめんね。
「幸せ」
薄桃色の髪を撫で、秋田くんの柔らかな体を抱きしめた。
こんなに小さいのに、戦う男の子なんだね。
「幸せだよ、秋田くん」
大丈夫。
幸せになることを恐れないで。
きっと君の兄弟も、そう望んでいるから、安心して。
「強くていい刀、か」
まんばさんも席を立つと、私の傍に座って、秋田くんを撫でた。
「残念だが、こいつには刀の良し悪しなんて分からない。そんなこと気にしないだろう。写しである俺が初期刀であるのがいい証拠だな」
「ご飯食べて泣いたまんばさんに何を言われても私は怒ったりしないよ。刀の目利きが出来ないのは事実だから」
「お前な……」
「ふふっ」
秋田くんが私の腕の中で笑いをこぼした。
ぎゅっと、確かめるように一度だけ私に抱き付いて、顔を上げた秋田くんは、とてもいい笑顔だった。
「僕は、幸せ者です……!」
前へ|
次へ戻る