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かちかち。
海賊だからといって、豪快なわけじゃないし。
おおらかなわけでもないし。
喧嘩っ早いわけでもないし。
つまりは結局、人それぞれなわけなんだけど。
「でも怯えてんのは、どうかと思うぜ」
飯を口にかきこみながら、呟く。目の前でそわそわしてたジョズが苦い顔をして、水を飲み干した。
「…怯えてるわけじゃ、ねぇけど」
「いやいや、俺らから見てもわかりやすいっての」
「わ、わかりやすいか!?」
「なー」
「そんなにか…!」
サッチが追い討ちかけて、おれがそれに頷く。
ジョズはまた渋い顔をしながら、コップに水を継ぎ足した。
「…自分でも情けねぇとは思う…けど」
「まぁなー。おれ達海賊。あの子はただの一般人。しかも偉大なる航路に来たこともねぇ平和的な子供。関わりたくても不安要素はあるよな」
「そりゃあ…やっぱりな…」
「サッチが言っても説得力ねぇじゃん」
「うっせぇな、おれだって色々考えて接してるわ」
へー、初耳だ。素直にそう溢せば、お前とは違うんだよ、と返された。あぁそっか、サッチはおっさんだもんな。若くねぇもんな。それにはげんこつが返ってきた。
「いってぇ!!」
「お前は少し、黙ってろ!」
どん!と目の前に足された皿に、思わず意識が持ってかれる。
まぁいっか。しばらく食ってよう。
楽に考えて、またおれは聞き手側に戻る。
けど、そこで。
「…なぁ、サッチ」
「食ってから話せ」
「……わかった」
もぎゅ、と右手に持っていたパンを口に詰めてから、机の下で左手を動かす。
手招き、見えっかな。
多分見えてるだろう。机の下で首を傾げていたフロートが、ゆっくりとおれの帽子から顔を出していった。
またおれの帽子から出てきたってことは、またどっかの帽子に入ってきたんだろうか。誰だろう。クルーのやつかな。それとも予備でもあんのかな。
ぼやっと考えながら、おれの左足あたりに座り込んだフロートの髪を、ぐしゃっと撫でた。ちょっと、窮屈だろうがしばらくそこにいてくれ。
「でもよー、ジョズなんて能力者じゃねぇか。それ見せりゃ子供って喜ぶんじゃねぇか?」
「自分も能力者なのに、喜ぶか?」
「いやいや、海賊ならしょっちゅう能力者に会うけどよ、普段生活してたら会わねぇだろ?あとお前の能力は見てわかりやすい」
「そ、そうか…?興味持つか…?」
「持つ持つ!おれがガキだったら喜んじゃうね!!」
「おぉ…!」
え、マジで?じゃあおれの能力も喜ぶかな。
ちらりと下を伺えば、ぽかんとした顔をしてた。自分の話だってのには気づいたらしい。
もっかい頭に手を置けば、おれが見てんのに気づいたらしく、困った顔で笑う。あぁ、そりゃあな。どう反応していいかわかんねぇよな。
「なぁジョズ、ちょっと全身ダイヤしてくれよ」
「あ?あぁ、構わねぇが…というかお前、相変わらず食うの早ぇな…」
「ほんとだよ!おれの料理なんだと思ってんだ!?」
「ちょううまい。サッチだいすき」
「棒読みしてんじゃねぇよ!」
「いいからジョズ、ダイヤ!」
せかしながら、自分もそわそわしてきた。考えてみれば戦闘中ならまだしも、なんもない時にまじまじ見んのも初めてだし。
ジョズがちょっとずつ、身体をダイヤに変えていく。おお!と思わずサッチと声あげてはしゃいじまった。
「すげー!これほんとに全部ダイヤか!?」
「これ欠片とか取れたら売れんじゃねぇの?歩くダイヤだな!」
「う、売るなよ!?」
座りながら後退りしたジョズに笑って、そのまま机の下まで両手を下げる。脇の下に手ぇ入れて、ずるっとフロートを引き上げれば、サッチとジョズがぎょっとして驚く。
うわあ!と驚いたのはフロートもおんなじで、それがまたおかしくて、おれも余計に笑えた。
「ほら、フロート!すげーだろ!?」
「え、え、だれ、え、ほんとにダイヤ!?ひ、ひと!?」
「おう!ジョズっつーんだ!」
「…うわーっ!!」
じたばたと、フロートが手足を揺らす。動揺からはしゃぎ声に変わって、きゃっきゃっと喜び始めた。
逆にまだ動揺してんのはジョズの方で、ダイヤ状態でおろおろと挙動不審に動いてやがる。サッチはなんとか状況を掴んだらしく、あーあと呆れ笑い。
なんだよ。話すなって言ったの、サッチだろ?
「ジョズさん、すご、すごい!触ってみたい!」
「お、おう!?…触るか!?」
「いいの!?」
うわー!とまた歓声をあげながら、フロートもジョズも恐る恐る、手を近づける。
なんとも、ばかっぽい光景だよなぁ。
「うわぁ、すごいかたい…!ほんとにダイヤだー!!」
「そりゃあ、そういう能力だからな…!」
「私、自分以外の能力者に会ったの初めてなんです…!すごい…!ジョズさんすごい…!!」
「そ、そうか!?」
……ちょっと、待て。
おれも、能力者なんだが。
おい。
お前の真後ろに、いるっての。
それどころか、マルコも能力者だし。親父もそうだし。
お前が知らないだけで、もうお前は能力者に会いまくってるし、この船には他にも能力者がいるんだからな?
なんとなく不満に思ったけど、まぁ今は、ジョズがフロートに怯えてるって話だったし。発案者もおれなわけだから。
おれの話は、また今度でいいか。なんて。
サッチと目合わせて笑いながら、目の前の、なんとなくほかってする、たじたじな会話を眺めた。
- 10 -
おおらかなわけでもないし。
喧嘩っ早いわけでもないし。
つまりは結局、人それぞれなわけなんだけど。
「でも怯えてんのは、どうかと思うぜ」
飯を口にかきこみながら、呟く。目の前でそわそわしてたジョズが苦い顔をして、水を飲み干した。
「…怯えてるわけじゃ、ねぇけど」
「いやいや、俺らから見てもわかりやすいっての」
「わ、わかりやすいか!?」
「なー」
「そんなにか…!」
サッチが追い討ちかけて、おれがそれに頷く。
ジョズはまた渋い顔をしながら、コップに水を継ぎ足した。
「…自分でも情けねぇとは思う…けど」
「まぁなー。おれ達海賊。あの子はただの一般人。しかも偉大なる航路に来たこともねぇ平和的な子供。関わりたくても不安要素はあるよな」
「そりゃあ…やっぱりな…」
「サッチが言っても説得力ねぇじゃん」
「うっせぇな、おれだって色々考えて接してるわ」
へー、初耳だ。素直にそう溢せば、お前とは違うんだよ、と返された。あぁそっか、サッチはおっさんだもんな。若くねぇもんな。それにはげんこつが返ってきた。
「いってぇ!!」
「お前は少し、黙ってろ!」
どん!と目の前に足された皿に、思わず意識が持ってかれる。
まぁいっか。しばらく食ってよう。
楽に考えて、またおれは聞き手側に戻る。
けど、そこで。
「…なぁ、サッチ」
「食ってから話せ」
「……わかった」
もぎゅ、と右手に持っていたパンを口に詰めてから、机の下で左手を動かす。
手招き、見えっかな。
多分見えてるだろう。机の下で首を傾げていたフロートが、ゆっくりとおれの帽子から顔を出していった。
またおれの帽子から出てきたってことは、またどっかの帽子に入ってきたんだろうか。誰だろう。クルーのやつかな。それとも予備でもあんのかな。
ぼやっと考えながら、おれの左足あたりに座り込んだフロートの髪を、ぐしゃっと撫でた。ちょっと、窮屈だろうがしばらくそこにいてくれ。
「でもよー、ジョズなんて能力者じゃねぇか。それ見せりゃ子供って喜ぶんじゃねぇか?」
「自分も能力者なのに、喜ぶか?」
「いやいや、海賊ならしょっちゅう能力者に会うけどよ、普段生活してたら会わねぇだろ?あとお前の能力は見てわかりやすい」
「そ、そうか…?興味持つか…?」
「持つ持つ!おれがガキだったら喜んじゃうね!!」
「おぉ…!」
え、マジで?じゃあおれの能力も喜ぶかな。
ちらりと下を伺えば、ぽかんとした顔をしてた。自分の話だってのには気づいたらしい。
もっかい頭に手を置けば、おれが見てんのに気づいたらしく、困った顔で笑う。あぁ、そりゃあな。どう反応していいかわかんねぇよな。
「なぁジョズ、ちょっと全身ダイヤしてくれよ」
「あ?あぁ、構わねぇが…というかお前、相変わらず食うの早ぇな…」
「ほんとだよ!おれの料理なんだと思ってんだ!?」
「ちょううまい。サッチだいすき」
「棒読みしてんじゃねぇよ!」
「いいからジョズ、ダイヤ!」
せかしながら、自分もそわそわしてきた。考えてみれば戦闘中ならまだしも、なんもない時にまじまじ見んのも初めてだし。
ジョズがちょっとずつ、身体をダイヤに変えていく。おお!と思わずサッチと声あげてはしゃいじまった。
「すげー!これほんとに全部ダイヤか!?」
「これ欠片とか取れたら売れんじゃねぇの?歩くダイヤだな!」
「う、売るなよ!?」
座りながら後退りしたジョズに笑って、そのまま机の下まで両手を下げる。脇の下に手ぇ入れて、ずるっとフロートを引き上げれば、サッチとジョズがぎょっとして驚く。
うわあ!と驚いたのはフロートもおんなじで、それがまたおかしくて、おれも余計に笑えた。
「ほら、フロート!すげーだろ!?」
「え、え、だれ、え、ほんとにダイヤ!?ひ、ひと!?」
「おう!ジョズっつーんだ!」
「…うわーっ!!」
じたばたと、フロートが手足を揺らす。動揺からはしゃぎ声に変わって、きゃっきゃっと喜び始めた。
逆にまだ動揺してんのはジョズの方で、ダイヤ状態でおろおろと挙動不審に動いてやがる。サッチはなんとか状況を掴んだらしく、あーあと呆れ笑い。
なんだよ。話すなって言ったの、サッチだろ?
「ジョズさん、すご、すごい!触ってみたい!」
「お、おう!?…触るか!?」
「いいの!?」
うわー!とまた歓声をあげながら、フロートもジョズも恐る恐る、手を近づける。
なんとも、ばかっぽい光景だよなぁ。
「うわぁ、すごいかたい…!ほんとにダイヤだー!!」
「そりゃあ、そういう能力だからな…!」
「私、自分以外の能力者に会ったの初めてなんです…!すごい…!ジョズさんすごい…!!」
「そ、そうか!?」
……ちょっと、待て。
おれも、能力者なんだが。
おい。
お前の真後ろに、いるっての。
それどころか、マルコも能力者だし。親父もそうだし。
お前が知らないだけで、もうお前は能力者に会いまくってるし、この船には他にも能力者がいるんだからな?
なんとなく不満に思ったけど、まぁ今は、ジョズがフロートに怯えてるって話だったし。発案者もおれなわけだから。
おれの話は、また今度でいいか。なんて。
サッチと目合わせて笑いながら、目の前の、なんとなくほかってする、たじたじな会話を眺めた。