top about main
誰のため?
「主さん主さん、僕たち人の身を得て色々なことを学びました」
「へー」
「肉体的なもの……五感とか、痛みとか。精神的なものとか。どちらも知ることが出来ました」
「ほー」
「主さん、僕たち主さんに感謝してるんです。主さんに出会って、いっぱい色々なことを知れましたから!」
「ふーん」
「だからエアコンつけましょう」
「ふざけ」
えー!何でですかー!と正座で喚く堀川もといカネサンの犬は、行儀いいのやら悪いのやら。
パタパタと団扇で自分を扇ぎながら話を聞いていたが、結局言いたいことは最後の一言であるのは間違いない。
「もう、なんでですか主さん!このままじゃ熱中症で倒れちゃいますよっ?」
「熱中症なんてどこで知ったの」
「てれびです。あと図書館で調べました!」
「……やっぱとうらぶ勢は現代に来るべきじゃねえな」
「えへ」
「えへじゃねぇよ」
にこりと笑う堀川に若干の殺意を覚えながら、もう溶けた保冷剤を軽く投げる。難なくキャッチした堀川は懐からハンカチを取り出し、それをくるんだ。
「主さん、保冷剤に直接触るのはよくないと思いますよ。冷た過ぎませんか?」
「それもうぬくいよ」
「でもダメですよー」
兼さんもそのまま首に当てるんですよねーと困り顔の堀川に、さいですかと適当に相づち。肩をすくめられた。
「まったく、話を逸らして……知ってますよ?主さん。兄弟に布取って欲しいんでしょう」
「……さぁな」
「あと兼さんと乱ちゃんが髪結ぶのが見たい、とかですか?二人共めんどくさがって、人にやらせますもんね。連日暑かったら自力でやるかもって魂胆ですか?」
「……」
「ふふ、主さんは面倒な方だなあ」
君に言われたくないよ、という言葉は言わずに飲み込む。
現代にいた頃に世話になってしまった分、どうにもこの刀はやりづらい。彼の兄弟刀二人にも世話になったことがあるから、尚更。もちろん第四部隊としては彼より青江が苦労しているし、世話になっているけども。
「でもね」。声がワントーン下がり、少し真面目なように堀川は言う。私もちらりと目を向けた。
「……僕たちの中には、あついものがダメな刀もいるんだ」
「……いるな」
「うん。だから主さん。ちょっとだけ、考えてやってくれないかなあ」
何人かの刀が脳裏を過る。詳しくは知らないが、確かに火を苦手とする刀は複数存在する。
暑さも連想するきっかけになるのか……と思うと罪悪感は多少感じるが、しかし奴らの事情は考えないと決めている。……めんどくさいなぁ。
「……エアコンつけないのは、単にお金が勿体ないからなんだけどさあ」
「はい」
「……堀川くん、アルバイトしてみる気ない?」
「あるばいと?」
こてん。堀川は首を傾げる。ええっと……アルバイトの日本語訳がわからん……ドイツ語なのは知ってる。
「まぁなんというか……小遣い稼ぎみたいなもん」
「僕がエアコン代を稼げばいいんですか?」
「んーん、エアコンは一応買えんの。勿体ないだけで。だから、エアコンつける代わりに、私に雇われる気ない?」
「……なにするんですか?」
「ちょっと周りを気遣ってくれりゃいいよ」
僅かに疑うような目をする堀川に、私は眉間に皺を寄せる。
別になんてことはない。口実が欲しいだけだ。
押し黙る堀川に、説明しろってことかと解釈して更に自分の表情が険しくなるのがわかった。嫌々ながら、口を開く。
「……君、何で本丸にエアコンつけて欲しいの?」
「え?それはだから――」
「誰のために、つけて欲しいの?」
はた、と。堀川が固まり、意図に気づいたようで盛大にため息を吐いた。
そのあからさまな態度がなんとなく気まずくて、私はあーあと唸る。
「……ずるいですよ、主さん」
「……ずるいのはどっちだ」
若干ふてくされながら言ってやれば、堀川はくすくすと笑った。
この刀のこういうところがやっぱり苦手だなと思うけれど。それも最近慣れてきてしまっていた。
にこり。堀川が改めたように、笑う。
「いいですよ、主さん。僕は兼さんや皆のためにエアコンが欲しいので、主さんに雇われます。雇われるから、代わりにエアコン買ってください」
「わかった。じゃあ買ってやるから雇われて皆を気遣ってくれ」
「はいはーい。皆のために買ったわけじゃなくて堀川が交換条件出してきて仕方なくだよ、って言いたい素直じゃない主さんのために、堀川国広、働きまーす」
「……ふざけ」
下をちろりと出してウィンクしてくる堀川は、やっぱり食えない。ペコちゃんかよテメェと言ったところできっと何も反応もないだろう。
……ほんと、ここに長くいるほど、面倒な刀ばかり増えていく。
「ま、僕を利用して口実つけたとしても、結局みんな主さんに感謝すると思いますけどね」
主さん、頑張ってね?
気遣うように言う堀川は良いやつに思えたけど、後日エアコンつけた際にホントにみんなから感謝され堀川が爆笑した時はマジでイラっとした。もうホントこいつめんどくさい。
- 16 -
「へー」
「肉体的なもの……五感とか、痛みとか。精神的なものとか。どちらも知ることが出来ました」
「ほー」
「主さん、僕たち主さんに感謝してるんです。主さんに出会って、いっぱい色々なことを知れましたから!」
「ふーん」
「だからエアコンつけましょう」
「ふざけ」
えー!何でですかー!と正座で喚く堀川もといカネサンの犬は、行儀いいのやら悪いのやら。
パタパタと団扇で自分を扇ぎながら話を聞いていたが、結局言いたいことは最後の一言であるのは間違いない。
「もう、なんでですか主さん!このままじゃ熱中症で倒れちゃいますよっ?」
「熱中症なんてどこで知ったの」
「てれびです。あと図書館で調べました!」
「……やっぱとうらぶ勢は現代に来るべきじゃねえな」
「えへ」
「えへじゃねぇよ」
にこりと笑う堀川に若干の殺意を覚えながら、もう溶けた保冷剤を軽く投げる。難なくキャッチした堀川は懐からハンカチを取り出し、それをくるんだ。
「主さん、保冷剤に直接触るのはよくないと思いますよ。冷た過ぎませんか?」
「それもうぬくいよ」
「でもダメですよー」
兼さんもそのまま首に当てるんですよねーと困り顔の堀川に、さいですかと適当に相づち。肩をすくめられた。
「まったく、話を逸らして……知ってますよ?主さん。兄弟に布取って欲しいんでしょう」
「……さぁな」
「あと兼さんと乱ちゃんが髪結ぶのが見たい、とかですか?二人共めんどくさがって、人にやらせますもんね。連日暑かったら自力でやるかもって魂胆ですか?」
「……」
「ふふ、主さんは面倒な方だなあ」
君に言われたくないよ、という言葉は言わずに飲み込む。
現代にいた頃に世話になってしまった分、どうにもこの刀はやりづらい。彼の兄弟刀二人にも世話になったことがあるから、尚更。もちろん第四部隊としては彼より青江が苦労しているし、世話になっているけども。
「でもね」。声がワントーン下がり、少し真面目なように堀川は言う。私もちらりと目を向けた。
「……僕たちの中には、あついものがダメな刀もいるんだ」
「……いるな」
「うん。だから主さん。ちょっとだけ、考えてやってくれないかなあ」
何人かの刀が脳裏を過る。詳しくは知らないが、確かに火を苦手とする刀は複数存在する。
暑さも連想するきっかけになるのか……と思うと罪悪感は多少感じるが、しかし奴らの事情は考えないと決めている。……めんどくさいなぁ。
「……エアコンつけないのは、単にお金が勿体ないからなんだけどさあ」
「はい」
「……堀川くん、アルバイトしてみる気ない?」
「あるばいと?」
こてん。堀川は首を傾げる。ええっと……アルバイトの日本語訳がわからん……ドイツ語なのは知ってる。
「まぁなんというか……小遣い稼ぎみたいなもん」
「僕がエアコン代を稼げばいいんですか?」
「んーん、エアコンは一応買えんの。勿体ないだけで。だから、エアコンつける代わりに、私に雇われる気ない?」
「……なにするんですか?」
「ちょっと周りを気遣ってくれりゃいいよ」
僅かに疑うような目をする堀川に、私は眉間に皺を寄せる。
別になんてことはない。口実が欲しいだけだ。
押し黙る堀川に、説明しろってことかと解釈して更に自分の表情が険しくなるのがわかった。嫌々ながら、口を開く。
「……君、何で本丸にエアコンつけて欲しいの?」
「え?それはだから――」
「誰のために、つけて欲しいの?」
はた、と。堀川が固まり、意図に気づいたようで盛大にため息を吐いた。
そのあからさまな態度がなんとなく気まずくて、私はあーあと唸る。
「……ずるいですよ、主さん」
「……ずるいのはどっちだ」
若干ふてくされながら言ってやれば、堀川はくすくすと笑った。
この刀のこういうところがやっぱり苦手だなと思うけれど。それも最近慣れてきてしまっていた。
にこり。堀川が改めたように、笑う。
「いいですよ、主さん。僕は兼さんや皆のためにエアコンが欲しいので、主さんに雇われます。雇われるから、代わりにエアコン買ってください」
「わかった。じゃあ買ってやるから雇われて皆を気遣ってくれ」
「はいはーい。皆のために買ったわけじゃなくて堀川が交換条件出してきて仕方なくだよ、って言いたい素直じゃない主さんのために、堀川国広、働きまーす」
「……ふざけ」
下をちろりと出してウィンクしてくる堀川は、やっぱり食えない。ペコちゃんかよテメェと言ったところできっと何も反応もないだろう。
……ほんと、ここに長くいるほど、面倒な刀ばかり増えていく。
「ま、僕を利用して口実つけたとしても、結局みんな主さんに感謝すると思いますけどね」
主さん、頑張ってね?
気遣うように言う堀川は良いやつに思えたけど、後日エアコンつけた際にホントにみんなから感謝され堀川が爆笑した時はマジでイラっとした。もうホントこいつめんどくさい。