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お正月


「ばんとうさん、正月は三日までお休みなんだよね?」
「そうですよ〜。まあ私は三日に大掃除するので、お休みが二日しかないですけどね……」
「ばんとうさん……」

 師走も終わりが近づいてきた頃、万屋はとても繁盛していた。本来なら休まず戦い続けてる審神者のため、刀剣男士のため万屋も年中無休なのだけど、流石に勘弁して欲しいなあということでさんが日だけお休みをもらうことにした。
 結果、その前に買い物を!と詰め寄る審神者が多くなって、とんでもなく忙しい年末を送ることになってしまった。

「仕方ないですよ、接客業は」
「うん。でもばんとうさんは僕達と違うから、ちゃんと休める時には休んで欲しいな」
「そうですね〜、閉店後に訪ねてくるお客さんがいなかったら、もっと休めるかもなあ」
「それは……申し訳なく、思ってる……」
「冗談です」

 少し視線を泳がせながらお茶をちまちま飲む光忠さんに、くすりと笑みがこぼれる。困ったように笑う光忠さんは、もう、と呟くとお茶を一気に飲み干した。

「買い忘れはないですか?光忠さん」
「ないよ。ばんとうさんが居ない万屋に来る気はないからね」
「よかった。じゃあまた、来年に」
「うん。また来年に」

 そんな会話をしたのが、31日のこと。




「……え?」
「あ、おはようばんとうさん。思ったより早いね」

 ぱちぱち、目を瞬かせる。店の扉の前に座り込むのはよく見慣れた刀剣男士で、よく知っている光忠さんだった。
 え、なんで?いま朝九時だよ?夜しか来ないんじゃなかったの?というかいつからいたの?いやいや待って、それ以前に――


「……今日、一月三日です……」


 営業は四日からだと散々通達したじゃないか。
 ふふ、と笑って立ち上がった光忠さんは臙脂色のマフラーをしていて、それもまた珍しい姿だった。状況について行けず固まる私に光忠さんはとても楽しそうで、私は更に混乱する。

「大掃除、手伝いにきたんだ」

 すごくお世話になってるからね。そう続ける光忠さんに、びっくりし過ぎて座り込む。光忠さんが慌てた。

「あれ?ごめんね、怖かった?」
「いえ、あの……」
「ごめん、ばんとうさんに、僕が一番に挨拶したくて」

 常連さんからの、絶大な信頼。
 差し伸べられた手に苦笑して、それでもなんだか、嬉しくて。

「……今年もよろしくお願いします、光忠さん」
「うん、よろしくね。ばんとうさん」

 一年の始まりは最良に。
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