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或夜星(1/2)
「俺、まだわかんないんだ」
決心して出した言葉に帰ってきたのはそれ。思っていた通りの言葉で、ショックを通り越してイライラした。ツナがそう言うとわかってた。わかった上で、はっきりして欲しかったのに。
「……もういいよ」
「あ、あの…なまえ、」
「いいってば」
ツナは悪くないのに。
早足でその場から去った。
***
つい数日前のことが夢のように思えた。きっと夢ではない。どちらかというと今の方が夢かもしれない。
「なまえ、おはよう」
「……おはよう」
…けれど、夢ではない。
背も伸びて一段とかっこよくなったツナが笑いかける。幸せそうだ。
私は、実験にかけられているらしい。
事情はよくわからないけど、10年バズーカで5分以上未来に留まらせる、という実験だということはわかった。その試験段階として私が選ばれたらしい。嫌なタイミングだなと思ったけど、ツナにとっては良いタイミングだったそうな。よくわからない。わからないことだらけだ。
そう、例えば、
「なまえ」
今のツナが、
「ずっとここにいなよ」
――私を、好きなこと。
10年後のツナは優しい。元から優しかったけど、私には特別優しかった。おかしいなと思ったくらいに。
獄寺はツナを悲しげに見て、山本は困った顔で、雲雀さんは哀れむようで、笹川先輩は気まずそうで。笑っているのはツナだけ。周りからも避けられている気がした。腫れ物に触れるように接しられている気がした。未来の私が何かしたのだろうか。ツナはなんで、私にここにいろというのか。
よくわからない。でもよくわからないことが、悲しいと思うと同時に、それで良い気がした。
「なまえ、俺のこと好きでしょ?」
「…うん」
「でも10年前の俺は、君の告白を曖昧に返した」
「……」
「今の俺は、なまえが好きだよ。だから、ここにいなよ。俺と一緒にいようよ」
手をぎゅっと握られた。切実だった。
確かに私はここに来る前にツナに告白して、わからないと返されて、自棄になった。だからこの時代に来たとき、10年後のツナの言葉に甘えてここに居座った。でも、今は違う。それじゃよくないんじゃないかって、思い始めてる。
「…いれないよ」
私を呼んだのは、実験のためじゃなかったの?
なんでか悲しくて、声が震えた。
悲しいのはきっと、ツナが悲しむからかもしれない。
私を見てツナが驚く。徐々に顔を歪めて、今にでも泣きそうな顔になった。
なんで、って。囁くような声が聞こえた。
「だって、ツナは私が好きなんでしょ?好きになってくれるんでしょ?だったら大丈夫だよ、私我慢する。未来まで頑張る」
「なまえ、」
「ツナは、この時代の私に告白すればいいんだよ」
気づいたことがある。
私はツナを好きで、ツナは私を友達だと思ってて、でも私はツナに好きになってほしくて。だから悩んで苦しんでツラくなるの。だから一層、好きになるの。ツナが私を見ないから。ツナが今を一生懸命生きてるから。私のことも、本当に真剣に考えてくれてるって知ってるから。
「ごめんなさい。私は、私の時代のツナが好きなの」
今のツナが好き。
突然私が求める答えをくれたって、意味がないの。そこに私がいなきゃ、その過程に、記憶に、一緒に居なきゃ意味がないの。
だからごめんね。
私は自分の時代に、帰るよ。
「――例え、どんな結果になっても」
そう言えば、ツナは泣き崩れた。
私はそれを、笑って受け止めた。
ごめんね、
- 15 -
決心して出した言葉に帰ってきたのはそれ。思っていた通りの言葉で、ショックを通り越してイライラした。ツナがそう言うとわかってた。わかった上で、はっきりして欲しかったのに。
「……もういいよ」
「あ、あの…なまえ、」
「いいってば」
ツナは悪くないのに。
早足でその場から去った。
***
つい数日前のことが夢のように思えた。きっと夢ではない。どちらかというと今の方が夢かもしれない。
「なまえ、おはよう」
「……おはよう」
…けれど、夢ではない。
背も伸びて一段とかっこよくなったツナが笑いかける。幸せそうだ。
私は、実験にかけられているらしい。
事情はよくわからないけど、10年バズーカで5分以上未来に留まらせる、という実験だということはわかった。その試験段階として私が選ばれたらしい。嫌なタイミングだなと思ったけど、ツナにとっては良いタイミングだったそうな。よくわからない。わからないことだらけだ。
そう、例えば、
「なまえ」
今のツナが、
「ずっとここにいなよ」
――私を、好きなこと。
10年後のツナは優しい。元から優しかったけど、私には特別優しかった。おかしいなと思ったくらいに。
獄寺はツナを悲しげに見て、山本は困った顔で、雲雀さんは哀れむようで、笹川先輩は気まずそうで。笑っているのはツナだけ。周りからも避けられている気がした。腫れ物に触れるように接しられている気がした。未来の私が何かしたのだろうか。ツナはなんで、私にここにいろというのか。
よくわからない。でもよくわからないことが、悲しいと思うと同時に、それで良い気がした。
「なまえ、俺のこと好きでしょ?」
「…うん」
「でも10年前の俺は、君の告白を曖昧に返した」
「……」
「今の俺は、なまえが好きだよ。だから、ここにいなよ。俺と一緒にいようよ」
手をぎゅっと握られた。切実だった。
確かに私はここに来る前にツナに告白して、わからないと返されて、自棄になった。だからこの時代に来たとき、10年後のツナの言葉に甘えてここに居座った。でも、今は違う。それじゃよくないんじゃないかって、思い始めてる。
「…いれないよ」
私を呼んだのは、実験のためじゃなかったの?
なんでか悲しくて、声が震えた。
悲しいのはきっと、ツナが悲しむからかもしれない。
私を見てツナが驚く。徐々に顔を歪めて、今にでも泣きそうな顔になった。
なんで、って。囁くような声が聞こえた。
「だって、ツナは私が好きなんでしょ?好きになってくれるんでしょ?だったら大丈夫だよ、私我慢する。未来まで頑張る」
「なまえ、」
「ツナは、この時代の私に告白すればいいんだよ」
気づいたことがある。
私はツナを好きで、ツナは私を友達だと思ってて、でも私はツナに好きになってほしくて。だから悩んで苦しんでツラくなるの。だから一層、好きになるの。ツナが私を見ないから。ツナが今を一生懸命生きてるから。私のことも、本当に真剣に考えてくれてるって知ってるから。
「ごめんなさい。私は、私の時代のツナが好きなの」
今のツナが好き。
突然私が求める答えをくれたって、意味がないの。そこに私がいなきゃ、その過程に、記憶に、一緒に居なきゃ意味がないの。
だからごめんね。
私は自分の時代に、帰るよ。
「――例え、どんな結果になっても」
そう言えば、ツナは泣き崩れた。
私はそれを、笑って受け止めた。
ごめんね、
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