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時雨降る夜
視界にちらりと、何かがいる気がする時がある。
それは虫だったり、飛んできたゴミだったり、そんなもの。外にいる時は視界の隅っこで何かが動いたりなんてことはしょっちゅう。いちいち気にするわけじゃないけど、ちょっと気になるものがあったらそのまま視界の中心にいれて見てしまうような、そんなもの。
たまにそれが気のせいだったりする時もあって、一人で怪談なんか見た日にはびくびくして過ごすことになる。何もないのに何か動いたりする、なんて気のせい。一人暮らしをするようになってからは、特にそういったものに敏感になるようになってしまった。
けど。
……これはたぶん、気のせいじゃないんだよなあ。
ほふ、と一度息を吐き出して、ゆっくり、浅く、なるべく静かに呼吸をした。
お風呂からあがってすぐに見えた、視界の端に写ったなにか。それは気のせいとするにははっきり見えすぎてしまって、確実に何か動くものが部屋にいることがわかってしまっている。そんなに大きいものじゃない。だけど、虫とするには大きすぎる。
(――いやだなぁ。鳥とか入ってきてたら、どうしよう。)
捕まえられないや、となんとなくの予想をつけながら、とりあえず近くにあったハエ叩きを手に持った。お風呂あがりのショーパンにキャミソール状態だと、何かあった時にどうしようもないなと思い服を探したけど、生憎近くには見当たらない。こりゃあ謎の物体が私めがけて飛んできても、直接触れるしかないな…心折れそう。と、どんどん下がり続けるテンションにため息つきながら、ある程度覚悟を決め始める。
――別に、人じゃないんだから。
不法侵入者というわけじゃない。ある程度は対処できるだろう。
大丈夫、と自分に言い聞かせてから、ゆっくりと先ほど視界に写ったなにかが向かった方向に足を進めた。
一歩、二歩…と忍びさながらの慎重さで足を進め、あと少しでその近辺、というところで、
「…あっ」
びたん!ぺしん!
………。
飛んできた何かを、うち落としてしまった。
ハエ叩きで。
わりと思い切り。
「…え、うそ!?大丈夫!?」
言葉が伝わるわけがないだろうに、思わず、反射的に声に出してしまった。勿論、返事はない。
暴れたりも、ないのだろうか。ちょっとした恐怖に心配が混ざり出して、ハエ叩きを胸の前で握りしめながら落ちた方向にじりじり進む。
畳んだまましまってなかった洗濯ものの中。
崩れた服を恐る恐る拾いあげた。
「……そんなまさか」
手に乗るくらいの大きさ。
間違っても鳥ではない。
かっこいい装備をつけた、その、小さな存在は。
…可愛らしい男の子の人形。
と、思うことにした。
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それは虫だったり、飛んできたゴミだったり、そんなもの。外にいる時は視界の隅っこで何かが動いたりなんてことはしょっちゅう。いちいち気にするわけじゃないけど、ちょっと気になるものがあったらそのまま視界の中心にいれて見てしまうような、そんなもの。
たまにそれが気のせいだったりする時もあって、一人で怪談なんか見た日にはびくびくして過ごすことになる。何もないのに何か動いたりする、なんて気のせい。一人暮らしをするようになってからは、特にそういったものに敏感になるようになってしまった。
けど。
……これはたぶん、気のせいじゃないんだよなあ。
ほふ、と一度息を吐き出して、ゆっくり、浅く、なるべく静かに呼吸をした。
お風呂からあがってすぐに見えた、視界の端に写ったなにか。それは気のせいとするにははっきり見えすぎてしまって、確実に何か動くものが部屋にいることがわかってしまっている。そんなに大きいものじゃない。だけど、虫とするには大きすぎる。
(――いやだなぁ。鳥とか入ってきてたら、どうしよう。)
捕まえられないや、となんとなくの予想をつけながら、とりあえず近くにあったハエ叩きを手に持った。お風呂あがりのショーパンにキャミソール状態だと、何かあった時にどうしようもないなと思い服を探したけど、生憎近くには見当たらない。こりゃあ謎の物体が私めがけて飛んできても、直接触れるしかないな…心折れそう。と、どんどん下がり続けるテンションにため息つきながら、ある程度覚悟を決め始める。
――別に、人じゃないんだから。
不法侵入者というわけじゃない。ある程度は対処できるだろう。
大丈夫、と自分に言い聞かせてから、ゆっくりと先ほど視界に写ったなにかが向かった方向に足を進めた。
一歩、二歩…と忍びさながらの慎重さで足を進め、あと少しでその近辺、というところで、
「…あっ」
びたん!ぺしん!
………。
飛んできた何かを、うち落としてしまった。
ハエ叩きで。
わりと思い切り。
「…え、うそ!?大丈夫!?」
言葉が伝わるわけがないだろうに、思わず、反射的に声に出してしまった。勿論、返事はない。
暴れたりも、ないのだろうか。ちょっとした恐怖に心配が混ざり出して、ハエ叩きを胸の前で握りしめながら落ちた方向にじりじり進む。
畳んだまましまってなかった洗濯ものの中。
崩れた服を恐る恐る拾いあげた。
「……そんなまさか」
手に乗るくらいの大きさ。
間違っても鳥ではない。
かっこいい装備をつけた、その、小さな存在は。
…可愛らしい男の子の人形。
と、思うことにした。
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