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晩秋遅咲き
お前はふらふらしていて危ないね。
と、昔から言われてきた。家族やら、友人やら、色々な人に言われるものだから、そんなに危なっかしいのだろうか、と。危ないことは何もしていないのに、と思いながら、そんなことないよと返し続けてきた。勿論一人暮らしを始める前にはとても心配されたし、今も大丈夫かと言われる。でも私は本当に、今まで危ないことも、危なっかしいことも、した覚えはなかったのだ。
……しかしこれは、言い訳出来ないのかもなぁ。
ちら、と小さなタオルにくるまれた、小さな人を見る。動く人形に違いないと思っていたけれど、触ってみたら思いの他暖かかったのだ。しかも、もしやと思って触れてみれば、僅かながらに鼓動を感じた……気がした。
そういうわけで、真実は小説より奇なり、と自分に言い聞かせ。とりあえずこれを…と言っては失礼なので、この方を、生き物と見ることにした。
でも怖いから、かっこいい装備は外させてもらった。半ば強引に外したから、壊れてしまったかもしれないけど…。
「ん…」
「あ、あぁ!起きましたか!」
「…!?」
ばさ!とタオルから小さな人(仮)が飛び退く。どうしよう本当に生き物だった…!夏の風物詩はとっくに過ぎていると思うので、きっとひんやりする系の怖いものではない、はずだ…!
正座でドキドキしながら見つめていると、その方は辺りをキョロキョロ見回し、そして自分の足やら腰あたりに手を添えようとして、はたと気付いたように止まった。
そして、私を睨み付けてきた。
「おいテメェ。俺に何をした」
「あっ、えと、そうだった…!頭、大丈夫ですか!?」
「あ?」
「さっき思い切り叩いてしまったので…!」
眉間に皺を寄せながら、その人がゆっくり頭の後ろを撫でた。次に腕やら足やらをまたゆっくり、軽く動かして、また視線が私に戻る。
「頭どころか、全身痛ぇな。クソ野郎」
うわああ頭とかいう規模じゃなかった!申し訳ねぇ!
そういえば頭大丈夫ですかとか言ったけれど、本当に頭に当たったかどうかまでは定かじゃなかった。寧ろこの小ささだ、全身当たった線で考えるのが普通だ。
ご、ごめんなさい…としょぼくれながら謝ったけども、反応はない。それがまた一層罪悪感を強くさせた。
でもびっくりして、なんて話すと言い訳にしかならないだろうから、口を噤む。沈黙がつらい。ちらちらと相手を盗み見ると、何も表情を変えずこちらを見ていた。それもまたつらい。
もしや小人か妖精さんなんだろうか、と淡い期待をし始めていた私としては、これはきっと何か悪いことを起こされてしまうかもしれない、と半ば絶望的な気持ちだ。そんなことは、あって欲しくはないのだけど。
「…おい、」
「は、はい…」
「俺の、武器はどうした。返せ」
「えええ、あれやっぱり武器だったんですか…怖いから返したくないです…」
「……」
「お、お帰りになる時には返しますよ!」
ちょうこえー!こえー!絶叫マシンに乗って叫びたい気分だよ!
無言の圧力、と怖い視線に怯みながら断ると、元から期待はしてなかったのかもしれない。案外あっさり引き下がってくれた。
すぐに次の質問がされる。
「お前、俺を食わないのか」
「……へ?」
「巨人だろう。違うとでも言うのか?」
ちょっぴり、首傾げるのがすごく可愛らしかった。怖い顔だけど、ちっちゃいもの効果だ。
確かに、彼から見たら私は巨人に違いないだろうけど…彼らの世では食べられてしまうことになっているのだろうか。なるほど、それは確かに武器も持ちたくなる。怯えて、隠れたくもなる。
だったら、
「あなたから見たら、私は巨人だろうけど、私から見たらあなたの方が小人なわけで…えっと、」
「……」
「…小人の事情は、よくわからないけど、でも、私たち人間は…んと、巨人は、あなたたちを食べたりしませんよ」
眉間に、更に皺が寄った。訝しげだ。疑われている。
どうすればわかってもらえるのだろうか。私も困ってしまい、うまい言葉も思いつかない。そうしてまた少しにらめっこして、小人(仮)さんが口を開いた。
「言葉を話せるのは、何でだ」
「? 人間は、たいてい話せるものじゃないんですか?」
「だがお前たちは、巨人だろう」
「巨人でも小人でも、人間でしょう?」
それが、決定打だった。
小人さんは何か、疑問がいっぱいだったらしい。
顎に手を当て、少しだけ考える素振りを見せて、
「……とりあえず、一回刺させろ」
なんだかとんでもないことを言ってきた。
そんな、秋も終わる頃。
- 2 -
と、昔から言われてきた。家族やら、友人やら、色々な人に言われるものだから、そんなに危なっかしいのだろうか、と。危ないことは何もしていないのに、と思いながら、そんなことないよと返し続けてきた。勿論一人暮らしを始める前にはとても心配されたし、今も大丈夫かと言われる。でも私は本当に、今まで危ないことも、危なっかしいことも、した覚えはなかったのだ。
……しかしこれは、言い訳出来ないのかもなぁ。
ちら、と小さなタオルにくるまれた、小さな人を見る。動く人形に違いないと思っていたけれど、触ってみたら思いの他暖かかったのだ。しかも、もしやと思って触れてみれば、僅かながらに鼓動を感じた……気がした。
そういうわけで、真実は小説より奇なり、と自分に言い聞かせ。とりあえずこれを…と言っては失礼なので、この方を、生き物と見ることにした。
でも怖いから、かっこいい装備は外させてもらった。半ば強引に外したから、壊れてしまったかもしれないけど…。
「ん…」
「あ、あぁ!起きましたか!」
「…!?」
ばさ!とタオルから小さな人(仮)が飛び退く。どうしよう本当に生き物だった…!夏の風物詩はとっくに過ぎていると思うので、きっとひんやりする系の怖いものではない、はずだ…!
正座でドキドキしながら見つめていると、その方は辺りをキョロキョロ見回し、そして自分の足やら腰あたりに手を添えようとして、はたと気付いたように止まった。
そして、私を睨み付けてきた。
「おいテメェ。俺に何をした」
「あっ、えと、そうだった…!頭、大丈夫ですか!?」
「あ?」
「さっき思い切り叩いてしまったので…!」
眉間に皺を寄せながら、その人がゆっくり頭の後ろを撫でた。次に腕やら足やらをまたゆっくり、軽く動かして、また視線が私に戻る。
「頭どころか、全身痛ぇな。クソ野郎」
うわああ頭とかいう規模じゃなかった!申し訳ねぇ!
そういえば頭大丈夫ですかとか言ったけれど、本当に頭に当たったかどうかまでは定かじゃなかった。寧ろこの小ささだ、全身当たった線で考えるのが普通だ。
ご、ごめんなさい…としょぼくれながら謝ったけども、反応はない。それがまた一層罪悪感を強くさせた。
でもびっくりして、なんて話すと言い訳にしかならないだろうから、口を噤む。沈黙がつらい。ちらちらと相手を盗み見ると、何も表情を変えずこちらを見ていた。それもまたつらい。
もしや小人か妖精さんなんだろうか、と淡い期待をし始めていた私としては、これはきっと何か悪いことを起こされてしまうかもしれない、と半ば絶望的な気持ちだ。そんなことは、あって欲しくはないのだけど。
「…おい、」
「は、はい…」
「俺の、武器はどうした。返せ」
「えええ、あれやっぱり武器だったんですか…怖いから返したくないです…」
「……」
「お、お帰りになる時には返しますよ!」
ちょうこえー!こえー!絶叫マシンに乗って叫びたい気分だよ!
無言の圧力、と怖い視線に怯みながら断ると、元から期待はしてなかったのかもしれない。案外あっさり引き下がってくれた。
すぐに次の質問がされる。
「お前、俺を食わないのか」
「……へ?」
「巨人だろう。違うとでも言うのか?」
ちょっぴり、首傾げるのがすごく可愛らしかった。怖い顔だけど、ちっちゃいもの効果だ。
確かに、彼から見たら私は巨人に違いないだろうけど…彼らの世では食べられてしまうことになっているのだろうか。なるほど、それは確かに武器も持ちたくなる。怯えて、隠れたくもなる。
だったら、
「あなたから見たら、私は巨人だろうけど、私から見たらあなたの方が小人なわけで…えっと、」
「……」
「…小人の事情は、よくわからないけど、でも、私たち人間は…んと、巨人は、あなたたちを食べたりしませんよ」
眉間に、更に皺が寄った。訝しげだ。疑われている。
どうすればわかってもらえるのだろうか。私も困ってしまい、うまい言葉も思いつかない。そうしてまた少しにらめっこして、小人(仮)さんが口を開いた。
「言葉を話せるのは、何でだ」
「? 人間は、たいてい話せるものじゃないんですか?」
「だがお前たちは、巨人だろう」
「巨人でも小人でも、人間でしょう?」
それが、決定打だった。
小人さんは何か、疑問がいっぱいだったらしい。
顎に手を当て、少しだけ考える素振りを見せて、
「……とりあえず、一回刺させろ」
なんだかとんでもないことを言ってきた。
そんな、秋も終わる頃。