menu
top    about    main

運命というのは(2/2)


異種混合
-今でも君を、愛してる-











ぱたぱたと、割と軽やかに走って学校に向かう。
部活開始まであと10分。コートまで、あと5分。
危ないっちゃ危ないけど、それでもまだ余裕で間に合いそうだった。

遅刻常習犯、とか丸井先輩に冷やかされる通り、俺はほぼ毎日のように遅刻してる。別にしたくてしてる訳じゃない。それは勿論ない。だって遅刻したら真田副部長に叱られるのが落ちだから。
それでもやっぱ、しちゃうもんはしちゃうわけで。心がけてはいるけど、毎日ギリギリセーフかギリギリアウトの境界線をさ迷ってる。
けど。………今日は、不思議なくらい余裕があった。そりゃやっぱ余裕あんのは良いことだし、普段から一応意識してんだからたまにはそういう日があってもいいとは思う。
それなのに―――どうにも、違和感がある。
とか、思ったら、

「ッ!」

曲がり角を曲がってすぐ、人がいた。決して壁とかの死角からじゃなくて、見える位置での曲がり角。もっと前に気づいてたら避けられただろうけど、考え事に頭を飛ばしてた俺には今から避けるのは無理っぽい。
けど、このままぶつかる訳にも行かないから、走るのだけは止めようと足に急ブレーキ。
その直後、ドン、という軽い衝撃と共に、どさりと何かが落ちる音がした。

「ってぇ……」

俺より身長が小さい奴とぶつかったのか、丁度いい感じに顎にヒット。ズキズキとする顎を撫でながら音のした方を見れば、女が尻餅ついてらしく座っていた。

うわ、やっちまった……。
思わず苦い顔になんのが自分でもわかった。走るのは止められても、やっぱりちょっとは勢いが残る。突っ込んでいった俺と違って、普通に歩いてた相手の方が衝撃も多分でかい。
しかも俺は一応男だし、ぶつかったくらい全然大丈夫だけど、ぶつかった相手は女で、しかも俺が顎が痛いって事は、逆に言えば向こうは俺の顎が頭に当たって事で………それはちょっと痛いっしょ!?

そこまで頭が回ったら、一気に焦りが来た。よくわかんないけど女って弱いらしいし、つか怪我させたら申し訳ない上にまた副部長に怒られる…!
若干勢い付いて、大丈夫っスか!?つってしゃがみ込んで見たら、彼女はゆっくりと顔をあげた。


――――どく、ん。


あ。なんていう一文字を口が描いた。それがちゃんとした声になったのかはわからない。何でそんな反応が出たかもわからない。

長い黒髪。真っ直ぐな目。
知り合いでもないはずで、見たことすらないはずだ。特に美人な訳でもないし、俺の好みってわけでもない。
なのに―――妙な気持ちが、広がってく。

まるで、デジャヴュでも見た時のように。

すみませんでした、と彼女が言ったのが耳に届いたのにはっとして、慌ててこっちこそすんませんっした!!なんて半ば叫ぶように言えば、彼女は元は手に持っていたらしい鞄を拾い上げてから、ぺこりと一礼した。それにまだ慌てた状態のままで俺も頭を下げたけど、彼女は見てたのかはわかんない。頭をあげた時には、俺が走ってきた方に歩いてってたから。
普通に歩けてるし、問題もないだろう。そんだけ確認したら、別にもう見てなくったっていいんだろうけど――――目が、離せない。

気のせいかも、しんない。
さっき感じた妙な感覚。ざわついて、デジャヴュを彷彿させる感覚。
頭の中ではやっぱり、会った事ないっていう事実を弾き出す。

けど、なんか………そう、なんとなく。なんとなく、だ。

彼女と、会った事のあるような気がして。



結局彼女が見えなくなるまで、彼女が、見えなくなっても。……俺は視線が外せなかった。
- 2 -