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異種混合(1/2)


―――異世界から来たんだ、私。

……うん。あのね。とりあえず聞いていて欲しいんだけどね。

私は県立中学校のごくごく普通の中学生だった。学校は立海から高等部とか取って一回りくらい小さくした感じの敷地で、でも校内の作りは殆ど立海と変わらなかった。職員室の場所だって配置だって、広さと人以外は同じ。学校までの道のりも風景も家も家族も何一つ変わった所なんかなかった。それなのにやっぱり何処か違う。全部知ってる場所なのにやっぱり些細な所で違う所はたくさんあって、此処はどこか違う世界だと私に教えている気がした。若しくは今まで見てきたのは長い長い夢で本当は今起きて目覚めたんじゃないかとか、そんな事を考えた時もあった。第一私はちゃんと入学したんだから転校生でもなかったし、似ているようで違う世界なんて馬鹿げてるとも思った。仮にあったとしてもそこにどういう経緯で来たのかなんて想像もつかない。それに……正直、その時は全部どうでも良かったの。

私はね、一年生の時は普通に過ごしてたの。適度に友達もいたしクラスにも馴染んでたつもりだし、部活には入ってなかったけど十分楽しかったよ。けど残念な事に二年生のクラス替えで仲良かった子とは離れちゃってね。知ってる子すらいないしすごく不安だった。今こんなんだけど、本当に普通の子だったんだよ。誰かと一緒にいるのが好きでくだらない事で一喜一憂しちゃう子供そのもので。

私の……二年生の、不安を打ち砕いたのがね。赤也だった。

私は全然憶えてなかったんだけど、どうやら入学式の日の朝に彼とぶつかったらしくてね。あぁぶつかるっていうか、歩いててすれ違う時にちょっと当たる程度の。でも、赤也はそんな日常でよくある事を憶えてて、気晴らしに本読んでた私の前の席に突然座り込んできて言ったの。「一年前は悪かったな、苗字サン」って。何の事かわからなかったから固まったんだけど、そのぶつかった日に私のハンカチ拾ってたらしくてね。「俺、切原赤也。席離れてて気付かなかっただろうけど、俺このクラスだから。今度ハンカチ返すわ」そう言って、一年間よろしくって言ったんだ。すごく明るい笑顔で――すごく、安心した。 
そっから仲良くなるのに時間はかからなかった。好みとか物事の感性だとかが割と近くておまけに負けず嫌いだとかそんな所まで似ててさ、喧嘩もおいかけっこもしたよ。まぁ、次の日には元に戻るんだけど。
――気がついたら……好きになってた。その辺になると結構色々あったけど、丸井先輩とか赤也の……あぁ、赤也もテニス部だったんだけどね。その先輩たちまで中々素直になんない私達に色々仕掛けたり裏をかいたりしてきて、相当お世話になったかな。付き合おうって折れたのは向こうだけどさ。

………幸せ、だったよ。うん…。中学生だからさ、別に何かを求めるわけでもないし、実質あんまり生活は変わりなかったけど。それでも幸せだった。赤也と一緒にいて赤也と笑って赤也と喜んで、時には悲しんで。大好きだった。赤也が居てくれれば、傍に居てくれれば……それだけで、幸せだったんだ。良かったんだよ。好きで好きで仕方なかった。お互い束縛が強いわけでもなかったし第一お互いを信用してたから。他の誰よりも自分の相手は互いしか務まらないってわかってたから。赤也がいれば何もいらないとさえ思った。それくらい好きだった。
……ううん。今も、好きなの。


でも、人生って、見えない所に落とし穴があるみたいだね。
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